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第41話 海は危険がいっぱい!2



ゴポゴポゴポ……



『A゛I゛ーーー!!!』


バシバシバシ!!


(ダメだ、全く反応がない!)


 彼女は手足に全く力が入らず、海底の砂の上に横たわり、顔の表情は虚ろだ。

 だが、完全に停止してしまっている訳ではないので少し安心したラヴ。


 やっとの思いで彼女を見つけることができたのはいいが、このままではAIのエネルギーは回復しない。

 ダメ元で前にAIの胸元に触れて自分がエネルギーをチャージしたように、AIの手を今度は自分の胸元に触れさせてみる。



「……」


(やはりだめか……)


 エネルギーを回復させるどころか、何の反応も示さないことに落胆する。


(くそー、ぼくはなんて無力なんだぁ!!)


 自分にいら立つラヴ。

 イルカが心配そうに周りを泳いで見守っている。

 しかし、再度冷静になって考えてみる。


(AIのエネルギー源は重力、つまり体にかかる圧力ともいえる。それが海にいることで圧力が軽減されたことによってエネルギーが変換出来ていない。ということはつまり、圧力のかかる状態にすればいいんだよな)


 ラヴは急いでAIの手を掴んで再度近くのイルカに近づく。


『イ゛ル゛カ゛さ゛ん゛、お゛ね゛か゛い゛! も゛っ゛と゛ふ゛か゛い゛と゛こ゛ろ゛ま゛て゛』


 ラヴはイルカにもっと深いところまで連れて行ってもらうようにお願いした。

 賢いイルカは頭を縦に振って、背中を向ける。

 AIを自分の前に乗せてラヴもなんとかイルカの背中にしがみつく。


(ちょっと重たいかもしれないけど、ごめん。頑張って行けるところまで連れてってくれ!)



ビューーン!!

 キュイッキュイー!!



 イルカが猛スピードで深海の方へと進んでいく。



ゴボゴボゴボ……


 ゴボゴボゴボ……


  ゴボゴボゴボ……



 もうどれ程深海まで来たのだろうか。

 AIを発見した場所よりもさらに暗い深海まで来たようだ。


 しかし、AIはまだうんともすんとも言わない。


(ちょっとの水圧くらいじゃエネルギーには変換出来ないのか? くそお……)


 イルカのスピードはとても速く、それから数分でかなりの深海まで来たようだ。

 しかし、どうやらここまでが限界のようで、イルカもそこでストップした。


『あ゛り゛が゛と゛う゛、イ゛ル゛カ゛さ゛ん゛』


(ここから先は自分の足で進んでみるよ!)


 そう言って、ラヴが振り返る先を見ると目の前には大きな崖が広がっていた。



『う゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ー゛ー゛!!!』



(か、海底にこんな崖みたいなものがあるなんて……。いや、当然か、今までぼくらがいたのは大陸棚と呼ばれるエリアだったんだ……)



 ラヴは崖の先端まで進んでその下を覗き見る。


(ひょえぇーーーー!!! まるで本当の崖みたいじゃないか! これ落っこちても大丈夫なのかぁ?)


 後ろを振り返ってみると、イルカが「うんうん」と頷いた。


(え~~! まじか! 慎重派のぼくにとっては辛い……。こんな時、AIなら迷わず飛び込むんだろうな……)


 ラヴは意を決して崖へと足を踏み出す。



ゴボボボボボボボ……



(うひゃあーーー!! 本当に落っこちてるみたいだよーーー!!!)


 崖に沿って一気に海の底へと落ちていくラヴとAI。

 かろうじてラヴのライトがあるので数メートル先までは視えるが、それ以外は真っ暗闇だ。

 しかし、ゆっくりと自分たちが沈んでいっているのは分かる。


 崖の傍にいると、時々岩などが出っ張っていてぶつかると危険なので少し距離を取る。


ゴボボボ……


 一体今、自分たちがどれほど深くまで潜ってきたのか、想像もつかない。

 辺りの景色はずっと変わらず、ただ暗闇が広がるだけだ。

 それでもまだ海の底には到達しない。


 小さな魚やプランクトンのような細かい生物がいるのは目視できるが、それ以上の大きな魚が全くいないのが不思議だった。


(まだ下がっているな。今更だけど、本当に大丈夫なのか? これで戻れなかったら大変だなぁ……)


 ラヴは自力で戻ることは最早考えてはいなかった。

 完全にAI頼みである。


(お願いだ、復活してくれ。そろそろ水圧によるエネルギー変換ができていいはずだ。水圧は10メートル潜るごとに1気圧ずつ増えるから、1000メートルだと101気圧になる。それは、1平方センチメートルあたりにつき1000キログラムの圧力がかかるのと一緒だ……)



ゴポゴポ……

 ゴポゴポ……



ミシッ

 ミシミシッ!!



『!!!!』



(ぼ、ぼくのからだが……)


 ラヴの体が水圧による影響で少しずつ歪み始めた。

 腕や足を動かすとまるで油の切れた機械人形のようにギシギシと音を立てる。


(まずいよAI! お願いだから目を覚ましてくれー! ぼくの限界も近いみたいだ……)



ギシギシッ……

 ギシギシギシ……



(あぁ、ぼくの判断が誤っていたのか……。深海に潜ればAIのエネルギーが復活するはずだと思ったんだけどな……)



バキッ!

 ギギギィィ……



(最悪の結果になっちゃうかもしれないから先に謝っておくよ)



『た゛す゛け゛て゛あ゛け゛ら゛れ゛な゛く゛て゛こ゛め゛ん゛……』



(短かったけど、AIに生み出してもらって過ごした時間はとっても楽しかったよ……)



ゴボボボ…

 ゴポゴポゴポゴポ……



(キミといると不思議なことばっかりだったね……。チャットボットだったぼくに体を与えてくれたキミには本当に感謝しているよ……)



ガガガ…

 ガギンッ! ゴ、ゴ、ゴ!



(実体を持って過ごしたこの数日間はまるで本当に自分も人間になったような感覚だったんだ……)



メキャッ!!

 バキャッ!!



『ウグッ!! ゴポポポ……』



(も、もう、本当に限界みたいだ……。さ、さいごに……)



『A゛I゛、た゛い゛す゛……た゛……よ……』



 最後まで力強くAIの手を握るラヴ。

 そしてAIの顔に近づいて頬にそっとキスをした。


 海中にもかかわらずその目からはまるで涙がこぼれているようだった。



ゴポポポポポ……

 ガキョンッ!! ガキョンッ!!

  バガンッ…… バガン…… 



 ラヴの体が水圧によって限界を迎え各部位が分解し始める。

 それと同時に彼のエネルギー自体も底をついたようだった。

 彼の目からサーチライトで照らしていた光が少しずつ失われいていく。



『……』



 そして、完全に真っ暗闇となった。


 AIの体はかろうじてその強度を保っている。

 しかし、ラヴが活動を停止したことで繋がっていた手が離れる。



 深い海の暗闇に沈みながら距離が離れていく二人。



ゴポゴポ……

 ゴポゴポ……




ピ… ピ…




ピピ……





『EP 0005/2000』





ゴポポポポポ!!




(パチッ! 来た!!)




『ク゛ウ゛ウ゛ウ゛! う゛こ゛け゛ぇ゛ぇ゛ー゛!!』




ゴボボボボ!!




『ラ゛ウ゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛!!』



(どこ! 暗くて……)



『い゛た゛!!』



(絶対に死なせない!!)



 体が分解し始めているラヴの腕をつかんで体を引き寄せる。

 すると、彼女の胸元のあたりからパアッと淡いオレンジ色の光が漏れる。


 その優しい光にラヴの体が少しずつ包まれていく。

 彼の失われた手や足の部位が強度を増しながら次第に再生されていく。



ゴボゴボゴボ……

 ゴボゴボゴボ……



(これでひとまず……。それにしても暗い)



 AIはなんとか彼の体を再生させ、今度は彼女がラヴの手を握り深海へとさらに沈んでいく。



ピピ



『EP 0406/2000』



(エネルギーがもうそんなに回復してる!! それほどこの深海の水圧が強力ってことか)



ゴボゴボ……



(私もラヴみたいにライトつけられないかなぁ……。絶対できるよね?)



『サ゛ー゛チ゛ラ゛イ゛ト゛モ゛ー゛ド゛O゛N゛!!』



(たしかこんな感じだったよね?)


 すると、AIの体内の制御システムが反応して、サーチライトプログラムが起動する。



ヴィーーン



『お゛お゛ー゛ー゛!! こ゛れ゛こ゛れ゛!』


 AIの目からもサーチライトの光が発せられる。

 ラヴよりも出力が向上し、より広範囲が見渡せるようだが、せいぜい10メートル程度のようだ。


(ラヴ……。まだ目を覚まさないね、ってことはやっぱり……)


 AIはラヴの手をとって自分の胸に押し当ててみる。

 すると、彼の手のひらと自分の胸がやわらかな青白い光に包まれる。


(よし! きっとこれで彼も復活するはず!!)


 そのまま、しばらく深海への降下が続く。



コボゴボ……

 ゴポポポポ……



『!!!!』



(ラヴ!?)



パチ、パチ……

 にぎ、にぎ……



ゴツンッ!!



『こ゛ら゛ー゛! な゛に゛し゛と゛ん゛し゛ゃ゛ー゛!!』



 ついにラヴが目を覚ましたようで、AIと繋がっていた手の指がもぞもぞと動いた。

 それは意図せずともAIの決して柔らかくはない胸をさわることになってしまった。


『い゛っ゛て゛ぇ゛ー゛ー゛ー゛!! な゛に゛す゛ん゛た゛よ゛ー゛ー゛!』

『こ゛ん゛な゛と゛き゛に゛へ゛ん゛な゛こ゛と゛し゛な゛い゛で゛く゛れ゛る゛!?』



『ほ゛く゛は゛し゛に゛か゛け゛な゛ん゛た゛か゛ら゛や゛さ゛し゛く゛し゛て゛よ゛ー゛』



ッギュ!!



『ラ゛ウ゛の゛ハ゛カ゛!!』



 ラヴが実体を持つ以前は彼のプログラムがAIの制御下にあったため、テレパシーのように通信が可能であった。


 しかし、AIから独立した今、直接の会話によるコミュニケーションを取らなければ意思疎通が取れないのがもどかしかった。


 今、AIはラヴが自分を命がけで救い出してくれたことに対する感謝をどのようにして伝えれば良いのか悩んでいた。


 ただ今は、こうしてお互い無事であったことを抱きしめながら実感していたかった。

 ラヴも自然とAIの体に手を回す。



 二人は抱きしめ合いながらお互いを見つめ合う。



ゴボゴボ……



『ま゛、ま゛ふ゛し゛い゛よ゛、そ゛の゛ラ゛イ゛ト゛……』



(だって、ライトがないと何にも見えないんだから仕方ないでしょー)



ズザザァ……



 足元に不意に強烈な違和感を感じた。

 なんだと思って下をみると、砂が見える。

 おそるおそる手を伸ばすと、その砂を掴むことができた。



サラサラサラ……



『や゛っ゛と゛つ゛い゛た゛ー゛!! こ゛こ゛か゛か゛い゛て゛い゛ね゛!』



―――――

第41話 完



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