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第37話 オーバーキル


ガサガサ……

ガサガサ……



ダァン!! ダァン!!

バスッバスッ!



「うりゃ!」


ザシュッ!


ギイィーーー……


 見事な二人の連携攻撃によって森にいる昆虫モンスターが次々と倒されていく。

 AIとラヴは再びロックの森へ来ていた。






□□□□□□






「え? あの猿たちで実践する?」


 AIがラヴの凄腕を見込んで、ロックの森にいるオイリーモンキー達を相手にしないかと提案してきた。


「そう、きっと今の私たちなら倒せるんじゃないかと思ってさ……」

「いやいや、過信は禁物だよ? 基本的に近距離での戦闘ではまだやつらの方が上だと思うよ……」


「そうかなぁ? ラヴが遠距離から銃で援護してくれれば、十分に通用すると思うんだけど……」

「たしかにうまくいけばね……。だけど100パーセントじゃないでしょ? ぼくはもっと決定的な戦力差にならないと挑戦するリスクが大きすぎると思うんだ……」


(決定的な戦力差ねぇ……)



「ちょっと見てて……」


 AIはDiCE(ダイス)からショートソードを取り出した。

 そして両手持ちになると、彼女の両手からマイナスエネルギーが溢れ出していく。



キイィーーーン……


「そ、それは冷気のエネルギー! 昨日見せてくれたやつだ!」


「はぁぁぁぁ……」


 AIはさらにマイナスエネルギーをショートソードにまとわせるように冷気を操作していく。



ジャキジャキジャキジャキ……


シャキーン!!


「おぉー! それはまさにアイスソード!!」

「これは【冷斬(れいざん)】、そして……」


ジャキン!


 AIが両手でアイスソードを後方に構える。


「はぁぁぁぁ! 【冷刃斬(れいばざん)】!!」


シュバンッ!!

ビギビギビギビギ、ズバッシューーン!!!!!



 AIが後方から斜め上に目掛けてアイスソードを振り上げると、その勢いでショートソードから沢山の小さな氷の刃が前方に噴出される。

 それには冷気の波動エネルギーも加わってよりスピードと攻撃力が増しているようであった。


「すごい……。なるほど、熱だと鉄が耐えられなかったけど、冷気なら耐えられる? というかむしろ強度が増す?」

「さすがラヴ。その通り。冷気、つまりマイナスのエネルギーなら鉄自体にダメージは無くて、むしろより硬くなるみたい」


 ブン! ブン! とアイスソードを振り回しながらAIが説明する。

 熱エネルギーに固執していたが、冷気が扱えるなら、そのエネルギーをまとえれば強化できるのでは? とAIは考えたのだ。


「ぼくが思いつかないことをキミはどんどんやってのけるね。うん、これがあるならオイリーモンキーも余裕を持って倒せるかな」


(やったー!!)



◇◇◇◇◇◇


 本来は鉄も極度に冷されると(もろ)くなり力を加えると簡単に割れてしまう。AIが【冷斬(れいざん)】を発動させたときも、空気が凍る温度なのでマイナス200℃には到達しており、鉄など簡単に砕けるはずだった。

 しかし、マイナスエネルギーを発生させた際に生じる波動エネルギーが内部からマイナス温度を中和させる働きをして、鉄そのものが強固になったように感じられたのである。

 

◇◇◇◇◇◇






□□□□□□






 そうしてラヴの納得を得たAIは二人でロックの森へ来ていた。


「それにしてもまた、この森にやってくるとはね……」


 一か月ほど前、猿のモンスター“オイリーモンキー”から荒野まで逃れてきたことはまだ記憶に新しい。

 だが、この森に出現する昆虫モンスターたちはすでにAIたちにとって大した脅威(きょうい)にはならなかった。



ダァン!! バスン!


ザッシュ!!


「いいね、ザクザクモンスターが狩れるって!」


 ラヴが敵を発見すると、迷わず銃で弱点やそれに近い場所を撃ち抜く。

 ダメージを受けたモンスターはAIの手によって止めを刺される。


「それもそうだよ! ぼくたちってここへ来たときは武器なんてAIのダガーくらいだったでしょ?」

「うん、実はこの森に来た理由はそのダガーの回収も一つの目的なんだ……」


 一か月前、オイリーモンキーたちを発見した際に、AIが投げたダガーはオイリーモンキーに刺さって、その後の行方は不明だった。


「なるほど、あのダガーはAIが初めてまともに生成できた武器だもんね……」

「それもそうだけど、あのダガーがなければ鹿たちはあの時救うことができなかったからね……」


(いずれにせよ私にとって大事なものに変わりはない……)




ガサガサ……

 ガサガサ……




 しばらく二人はそのまま森の奥深くへと進んでいく。



「!!!」



(見つけた!! この気色悪い緑色の物体!!)



「ラヴ! ここら辺からどうやらオイリーモンキーたちのテリトリーらしいね。木の上にも注意しないと……」

「そのようだね、できればこちらが先にやつらを見つけたいけど……」



(そう、上手くいけばいいんだけどなぁ……)


 日中にもかかわらず、森の中は日光が入りづらく薄暗い。


(おそらくオイリーモンキーたちは私たちが近づいているのに感づいているはず)



ガサガサ……



 そのまま森の中を進むと、緑色の粘着物がさらに増えていく。

 一か月前にオイリーモンキーたちとエンカウントした時と状況がよく似ていることに二人は気付く。


「これはまるでデジャヴだな……」


 数メートル先の視界から白い霧が立ち込める。

 嫌な予感がするのはAIだけではなかった。


「ラヴ、急ごう、霧があるって事は、やつらが火を焚いてるって事だ!」

「おそらくね、これが奴らの罠でないことを祈るよ……」


 霧のエリアに侵入してからさらに慎重に進むこと数分。

 聞き覚えのある音が耳に入る。


バチバチ……

 バチバチ……


「この音……。ラヴ」

「分かってる、もうすぐそこだ、静かに近づこう」



 そのあと二人は足音を立てずに目配せだけで森の中を進んでいく。

 やがて数メートル先に霧の発生原因と思われる煙が立ち上っているのが見えた。



モクモク……



「!!!」


(いた!!)



「あいつら……!! ラヴ援護して!」


シュババババッ!!!


 持っていたショートソードに【冷斬(れいざん)】を発動させながら、一気に駆けて近寄るAI。

 目の前には数匹のオイリーモンキーが円を囲んでいる。

 前と同じように動物を寄ってたかって攻撃しているようだ。


 ラヴはAIの動きに合わせてライフルを構え、一匹のオイリーモンキーに照準を合わせる。

 オイリーモンキーはラヴがいることに気づいていない様子だ。


キキー! ギギッ! ギギッ!


「ここ!!」


 AIの接近に一匹のオイリーモンキーが気付く、それと同時にラヴの銃の発砲音が響く。



ダァン!! バスッ!!



ギギィーッ!!


「硬いな……」


 弾丸はオイリーモンキーのこめかみに命中はしたようだが、致命には至っていない。

 素の防御力が高く、銃弾では大きな傷をつけることができないようだった。

 だが、すかさずそこへAIが【冷斬(れいざん)】で襲い掛かる。



「はぁぁぁぁー!!」


ズバッシューーン!


ビキビキビキビキ……


 オイリーモンキーが頭のてっぺんから真っ二つにされる。

 冷気の波動によって、切断面は凍てつき、噴き出る血は即座に凍り付く。

 切られたオイリーモンキーは表情を変えることも出来ずにその場に倒れこむ。



ズシン……


ギーーーー! ギギーー!!


 その場に居合わせたオイリーモンキーたちは戦慄(せんりつ)した。

 つい先ほどまでは自分たちが蹂躙(じゅうりん)する側だったにもかかわらず、突然現れた謎の人間によってそれが覆された。

 自分たちが惨殺されるのを容易に想像したオイリーモンキーたち。

 警戒よりも恐怖が勝ってその場に立ちすくむ。


 そして、それはAIとラヴの格好の的となった。


「隙だらけだよ!」


 ラヴが静寂を破るライフルの引き金を引く。


ダァン!! バスッ!


ズバッ !!



ダァン!! ダァン!! ダァン!!

バシュッ! ザンッ! ズバァンッ!!



ズズズズシャァァ……



 一匹目と同じようにラヴは標的のオイリーモンキーのこめかみに弾丸を当てる。

 それが合図となって、AIが即座に【冷斬(れいざん)】で両断する。


 そのコンビネーション攻撃はスムーズかつ迅速に行われ、全部で五匹もいたオイリーモンキーはあと一匹だけとなった。

 そのオイリーモンキーの顔をよく見ると、顔に傷あとがあるのを発見する。

 さらにその猿の手にはAIが無くしたダガーが握られていた。


 ダガーの刃先からは生々しい血がポタポタと滴っている。


 AIが強烈な殺気を放ってにらみを利かす。

 オイリーモンキーは叫び声すら上げずにブルブルと震えている。

 人間ほどのサイズ感のあるはずのオイリーモンキーが急に縮こまってニホンザル程度のサイズに見える。


「き、きさまがあの時の……!!!」



ワナワナ……



 激しい怒りがこみあげてくる。

 自分のダガーを使って、目の前の動物を甚振(いたぶ)っていたのかと思うと吐き気がする。



ポスッ……



 完全に戦意を喪失したのか、オイリーモンキーは手に持っていたダガーをその場に落とした。

 だが、それでもAIは視線を逸らさずに殺気を放っている。

 オイリーモンキーは少しずつだが、後ずさりを始めた。


 その時、目の前で倒れていた動物がブルブルと足を動かした。

 AIは一瞬だけ視線をそちらに向ける。


 よく見れば、保護施設にいたはずの最後の小鹿だった。



ギギ―――!!



 だがその瞬間、オイリーモンキーは背中を向けて森の奥へと駆け出した。



(逃がさない!)



「てぁぁぁぁぁ!!【冷刃斬(れいばざん)】!!」



 AIはその場から動かず予備動作もなしに必殺技を放つ。



シュバーーーン!!


ビギビギギギギギギ!!!



 AIが放った【冷刃斬(れいばざん)】の氷の刃が波動エネルギーとともに高速でオイリーモンキーの背後を襲う。



ガシュ、ガガガガガガズバッシューーン!!



 放たれた氷の刃が立て続けにオイリーモンキーの背中に突き刺さる。

 まるで釘の上から寸分たがわずに釘が打たれるように、一本目、二本目、三本目と次から次へと刺さっていく。


 刺さった氷の刃が背中はおろか胸まで突き破って次々と外へ押し出される。

 胸に大きな氷の穴が開いたオイリーモンキーは痛みを感じる間もなくその場に倒れる。


ズシーーンン……


 その頭上をパラパラと季節外れの粉雪が舞った。

 そしてAIはまた一つ大きな決心をする。


(もっとこの世界のこと、世界で起きている異変を知りたい……)



「そのためには……」



―――――

第37話 完




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