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第28話 DiCE2


◇◇◇◇◇◇



DiCE(ダイス):Dimensional Compression and Expansion

次元圧縮拡張システム


[概要]

 DiCE(ダイス)を利用して物質を格納すると、異次元に隔離される。

 予め次元の管理することで、物質の行先を決めておくことが出来る。

 例えば、A次元に物質Aを格納する。

 A次元からは物質Aの取り出しが可能だが、B次元からの取り出しはできない。


 次元は全部で六つまでの拡張管理が可能。

 一次元あたりのアイテム格納数は五十。


 物体のカウント方法について、基本的に固形状に維持されている状態でなければ格納することが出来ない。

 よって、気体や液体など物質の性質や形態が常に変化するようなものは基本的に格納出来ない。

 これには動植物などの生命体も該当する。

 気温管理は常時十五℃となっているため、その状態で変化しない物質の必要がある。

 次元の先は時間の概念がなく、格納してからこちら側で経過した時間は影響しない。

 つまり時間が静止している状況と言えるが、完全に止まっている訳でもない。


 物理的なもの以外にも電子的なデータも信号として格納することが可能。

 液体や気体も密閉させた状態ならばそれを一つの固体として判別して格納することが可能。

 例えばペットボトルに水を入れたり、ガスの入った缶など。

 一つ一つの物質自体の大きさに制限はなく、DiCE(ダイス)所有者が取り扱える範囲の物質を格納可能。

 その気になれば家や飛行機などの大きな建物も格納可能。

 AIが体内に取り込んだ鉄もDiCE(ダイス)に自動で格納されていたと思われる。

 体内に取り込んだものを確認することは可能だが意図的に出す事は不可能。



[操作方法]

 DiCE(ダイス)プログラムを起動する。

 DiCE(ダイス)専用画面が3Dホログラム上に表示され、中央に黒の正六面体が現れる。

 それをタップすると、一~六個の正六面体表示に切り替わる。


 赤色の六面体は、MAX個数の物質が格納されていることを意味し、青色の場合は、物質が格納されているがまだ空き状態であることを意味する。

 緑色の六面体は使用者が体内に取り込んだものを格納することが可能。

 つまり大きな胃袋の代わりのようなものである。

 緑の六面体は外部からの操作はできず、中身を確認することだけが可能。

 灰色の六面体は空っぽの状態を意味する。


 中身の入っているボックスをタップすると、そのボックス内に格納している物質が縮小されたサムネイルが表示される。

 その中から取り出したいアイテムをロングタップする。

 取り出し場所の座標を視認できる範囲内で指定して画面上でタップする。

 すると、六面体から物質が吸い出されて現れる。


 物質を格納する場合、DiCE(ダイス)を起動した状態で格納する対象の六面体をロングタップする。

 続いて自身が視認している物質をDiCE(ダイス)画面上でタップする。すると、物質がDiCE(ダイス)で指定した六面体へと吸い込まれて格納される。



◇◇◇◇◇◇



「いやいや、長すぎでしょ! もう途中であきらめちゃったよ」

「AIのことだから、きっとそう言うと思ったよ」



「それなら早速この『DiCE(ダイス)』っていうプログラムを起動してみる」

「ぜひやってみて!!」



(え~っと、どうすればいいのかな? 脳内でイメージして呼びかける? 言葉にした方が分かりやすいかな)



DiCE(ダイス)起動」



 彼女は言葉にしてDiCE(ダイス)プログラムを実行してみようとトライしてみた。



(― DiCE(ダイス)プログラムを実行します ―)



 脳内でメッセージが流れる。

 そして、目の前に3DホログラムでDiCE(ダイス)のメイン画面と思わしき半透明の長方形が表示され、その中心に黒い六面体がゆっくりと回転しながら映し出された。



「これがDiCE(ダイス)……」

「おおおおおお!!!!」



 これまでにない派手な反応をするラヴとは対照的に客観的に減少を見守るAI。


「じゃあこの黒い六面体をタップしてみるね?」


ポチ



ブウンッ



ブン、ブン、ブン

ブン、ブン、ブン



 表示が切替わって六個の六面体が表示された。

 緑色が一つ、あとは全部グレーだった。



「なるほど、ほとんどがグレーで空っぽの状態ってことだね?」

「そう! だからテストで好きなものを格納してみたらいいよ」



「でもこの緑色のはなんだろう?」

「それはおそらくさっきAIが食べた鉄が【再生】しても残った分じゃないかな?」



「なるほど、胃の中に消化しきれず余った分ってことかな? 中身は見られるのかな?」


 緑色の六面体をタップしてみた。


ポチ


ブウンッ



「……」


 そこには彼女が食べて取り込んだ鉄がひとまとまりになっている様子が見て取れた。


(これは見なかったことにしよう……)


「で、物を入れたい時はどうするんだっけ?」

「えーっと、格納したい六面体をロングタップする。すると、画面が変わって外界から物質を選択出来るようになる。その状態でAIの視界で捉えたものを画面越しにタップするんだ」



 彼女は本当にたったそれだけの操作で物質を異次元に格納出来るのか半信半疑だった。



「よし、じゃあ試してみるか。まずは格納したい六面体をロングタップね」



ブウンッ



(― 物質を格納します ―)

(― 単数/複数 ―)


「なるほど、一つだけなのか複数なのかを選べるってことね」


 ひとまず、「単数」をタップした。


(― 格納する物資を選択してください ―)



ブウンッ


ピピピピ……



 メッセージが流れた後に画面切り替わる。

 画面は半透明の赤い色の背景になった。

 その上で取り込み対象になる物質だけが薄青色で塗りつぶされて、白い点線で囲まれているようだ。


(なるほど、これは分かりやすい。取り込める物体を画面上で捉えたらそれをタップしればいいって訳だね)



「じゃあ、この地面に転がっているダガーの失敗作を入れるか」


ポチッ


(― この物質を次元Aへ取り込みます ―)

(― はい/いいえ ―)


 迷わず「はい」を選択した。

 すると、眼の前からダガーが「ブウン」っと消える。


「おおーーーー! 消えた!」


 やはりラヴが大口をあけて驚いた反応を見せる。

 画面は六面体が表示されている状態に戻った。

 先程はグレーの六面体が五つあったが、今は四つになっている。

 その代わり、青色になった六面体が一つある。

 その青色の六面体をタップしてみた。


ブウンッ


 画面が切り替わって青色の六面体の中身を表示している。

 そこには先程格納したダガーが表示されている。

 さらにそのダガーをタップしてみた。


ブウンッ


 名称:DimensionA_23880622173301

 格納日時︰2388/06/22 17:33:25


(なるほど、物質の詳細情報が確認できるのか)


 画面をスライドさせて一つ前の画面に戻る。


「このダガーを取り出すにはどうするんだっけ?」

「取り出したい物質をロングタップして画面が切り替わると思うから、取り出し場所を指定すればいいはずだよ」



「じゃあこの画面でダガーをロングタップすれば良かったのか」


 今度はダガーをロングタップしてみた。

(― この物質を出力対象に選択します ―)

(― 他の物質も出力対象に選択しますか ―)

(― はい/いいえ ―)


 他には出力するものがないので「いいえ」をタップした。

 するとラヴの言った通りに画面が切り替わった。

 ダガーを配置可能な場所が半透明の青色で表示されているようだ。

 テーブルの上に照準を合わせて適当な場所をタップした。

(― ここにDimensionA_23880622173301を出力します ―)

(― はい/いいえ ―)


 ここでも迷わずに「はい」をタップする。

 すると、「ブウン」という効果音と一緒にダガーがテーブルの上に現れる。

 どういう原理なのかは不明だが、「DiCE」というプログラムを使用することで異次元の世界と物の出し入れが可能であるようだ。



「この世の物理法則を完全に無視した技術だね、これは」

「まるでアニメや映画に出てくる世界の出来事みたいだ」



 二人とも目の前で起きた事象に信じられない様子である。


(一体、いつの間にこんな技術が生み出されていたのだろう。この技術があれば、いろんなことに活用が可能だ。悪用されれば簡単に犯罪に利用することも考えられる)


 AIはこの便利かつ不思議な機能についてあれこれ考え込む。


「まぁ、いろいろ考えても仕方ない。使えるものは有効活用させて頂きましょう」

「うん、それがいいと思うよ! というか、使わない手はないよAIさん。これから一人で旅に出るんだとしたら荷物とかたくさん必要になるんじゃない? 鉄とか、鉄とか、鉄とか……?」



「いやいや、鉄以外にも必要なものあるでしょ!! 水とか、服の予備とかね!」

「ふむ、確かに。あと武器とか防具も準備しておけば便利だよね」



「とりあえず、鉄を可能な限り持っておけば、時間があるときに武器や防具の生成が出来るから、この鉄工所にある素材を片っ端から格納していこう!」

「えっ!? ここにある鉄全部持ってくの?」



「もちろん」


 これには時間がかかりそうだなとラヴが小さなため息をつく。

 ラブは奥多摩(おくたま)の保護施設に戻るのは早くても明日の午後かなと予測を立てた。

 AIを見ると、彼女も不安げな表情を浮かべている。

 やはり、保護施設に戻るのが遅くなることを気にしているのだろう。



「あ~ぁ、あとでまた菜の花料理作って食べたかったんだけどなぁ」


ズコーーー




―――――

第28話 完


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