第9話 再生と生成1
12月25日
第9話を投稿します。
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
今日はクリスマスですね。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
もう年末休みに入られた方もいるかもしれませんね。
今日(12/25)から年始(1/5)まで休まず投稿を続けようと思います。ぜひ、この機会にたくさんの人に読んでいただければとても嬉しいです。
また、先日は初めてブックマーク頂き2pt入りました!!
ありがとうございます!!
今後もブックマーク、評価、コメント、感想などお待ちしておりますので
よろしくお願いいたします。
時田 香洋
「ねえ、実はAIってものすごくセンス無いんじゃない?」
AIが必殺技に対して付けたネーミングについて言及するラヴ。
二人はソルティラビットたちを撃破した後、下水道跡地から地上部分まで歩いて戻ってきていた。
「しつこいわね、あなたも。私が『それ』で良いって言ってるんだから良いの。あなただって『私が自分で決めたらいいよ!』なんて言ったじゃない」
「それは、確かにそうだけどさぁ……」
「“私”が技を出すときに一番イメージがしやすくて、何より“威力”がありそうな名前だと思ってるんだから別に良いじゃない!」
反論を続けるラヴに対して、説得をするAI。
「ダサい」と言われた事と、ラヴが引き下がらない事に少しイライラし始めている様子だ。
「え~、絶対【熱拳】なんて、“威力”がなさそうだし、弱そうなんだけどなぁ……」
まるで子供のような言い訳を展開するラヴ。
見た目は確かに子供っぽいので違和感はないが、君はAIチャットボットだ。
「なら、そのイメージを私が覆してあげるんだから、黙ってなさい! いくよぉ!」
AIはそう言い放つとラブに対して「ニヤッ」としながら、熱エネルギーを左こぶしに溜め始めた。
キュイーー……ン
「……えっ? ちょっと、待って、それどうするつもり……? まさか、僕にぶつけたりしないよね?」
「その、まさかよ!」
「うわわわぁ、ちょっとま――」
バッシューーーン!!!
「ひいいいいいい!!!」
スバゴーーーーン!!!
ラヴが話している途中だったにもかかわらず、AIは【熱拳】を繰り出した。
その拳による凄まじい熱量と熱風がラヴの顔の真横を通り過ぎる。
その勢いによってラヴの左頬のホログラムがチリチリと消失した。
そして、【熱拳】から繰り出された波動エネルギーがラヴの後ろにあった瓦礫をさらに粉々に破壊した。
「どう? これが【熱拳】!! 何か文句ある?」
(やはり大事なのはイメージのし易さ、そしてシンプルさなの。長ったらしい名前なんて私には向いてない)
「……た、大変失礼しました! も、文句などありません!! お姉さま!!」
鼻水を垂らして半泣きの勢いで猛省するラヴ。
そして、消失した頬をもとに戻しながらAIに対する考えを改めた。
「分かればいいの」
満足気に澄ました顔でそう言うと、真っすぐに伸びきった左腕を静かに戻すAI。
このAndroidは怒らせると本当にまずいなと思うラヴだった。
AIが先ほどまでは闘いの素人だったとはとても思えない。
必殺技一つだけで明らかな自信を身に着けたようだ。
■■■■■■
それからいったん、昨日のキャンプ地である新宿御苑まで戻った二人。時刻はすでに午後を回っていた。
「ふー、ちょっと休憩ね」
ベンチに腰掛けて、疲れた様子のAIがさらにベンチに手をつこうと思った瞬間、ふと思い出した。
「そう言えば、さっきの戦闘で服や体がボロボロね、それにこの腕」
傷ついた体を見回しながら、最後は右腕を上げてソルティラビットのボスに噛みつかれて破壊された箇所をラヴに見せる。
「人間だったら重症だよね、それ? AIも早く治した方が良さそうだね」
「うん、普通の生活は出来そうだけど、またさっきみたいなモンスターに襲われたらやばいかも……」
(それにしてもどうやって治せばいいのかしら。これもエネルギーの変換で治るの?)
「だったら、早く治したらいいんじゃない?」
治せることがさも当たり前かのようにラヴが言う。
「それを今考えてるんだってば。簡単そうに言うけど、これでもまだAndroidになって三日目!」
「ごめん、ごめん。AIの超人的な能力を色々と目の当たりにしていると、何でも出来てしまう気がしてさぁ」
(本当にこの子は調子がいいんだから。でもラヴが言ったことはこれまで実際に実現出来たのも事実よね)
「いつも通りだけど、まずはイメージからよ。再生、再生……」
AIは目をつむってポツリポツリと独り言をしゃべりながら、意識を集中し始めた。
(人間には自己治癒力ってのがあるんだから、それをイメージすれば勝手に再生出来るんじゃない?)
「……」
(でも「自己治癒力」って一体、何がどうなっているのか忘れちゃった)
「……」
(んー、難しくて分からないし、あんまり複雑なことは考えたくないんだよねー。……これって私の悪い癖?)
「……」
(要は代謝みたいなもんじゃないの? 生命力が高ければ、きっと体を元に戻そうと体の細胞たちが勝手に働いてくれるはず)
「……」
(人間の体って思ったよりも便利に出来ているみたい。私の体も勝手に治ってくれたらいいのに)
「……」
(私だってダメージの判定は出来るんだから、損傷の割合に対して、物理的に修復するプログラムがあればいいのかも。人間の場合は細胞一つ一つだけど、私の場合は最小の鉄が一つ一つって感じかな)
……すると、ダメージを負った右腕が「パァッ」と光輝きだした。
カチカチカチカチカチ……
……と微細な音を放ちながら少しずつ腕が元の形に戻っていく。
……と思われたが、腕や体の損傷はほとんど再生されずにその輝きは光を失ってしまった。
「……」
「えー!! 何で! どうして!? 今、治りかけてたじゃん!!」
あと一歩のところで思いが実現しなかったAIは大きく落胆する。
「うーん、惜しかったねぇ、AI。でも何となく原因は分かったよ」
先ほどまで見守っていたラヴがようやく口を開いた。
「えっ!! 何々?? 原因って?」
間髪を容れずにAIが原因について確認する。
「おそらくAIの体の成分は鉄とか鋼だと思うんだけど、そこまではいい?」
「うん、私もそこは理解しているつもり。それで人間だったら、一つ一つの細胞が自然治癒するって考えて、それを私に置き換えて見たんだけど……」
「そこまで考えられたならあと一歩じゃないか!」
「も~! 勿体ぶらないで教えてよ~!!」
「仕方ないな~」
(何よ! あんた私に何でも教えてくれるAIチャットボットじゃなかったの? 本当に面倒くさいわねぇ)
「つまり、再生には失った分の鉄が必要ってことだと思う」
「えっ!? それってつまり……」
「そう、鉄を体に取り込むんだ! 方法は任せるけど……」
―――――
第9話 完
第9話、再生と生成のパート1でした。
最後まで読んでいただき有難うございます。
傷ついた体を回復させるために試行錯誤していますね。
パート2でもAIが初めての生成にチャレンジしていきますので
ぜひお楽しみに!!




