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06|学生捜査員〜昼埜の超能力〜

 先ほど事件があった公園内は現場の保全に慌ただしい。学生捜査員と刑事はロータリー端まで歩き話を進めた。

 まずは昼埜が超能力を見せるということで話し始める。


【昼埜遊人】

「超能力っても、目からビーム出したり緑色の大男になったりするわけじゃないけどな。まぁ俺の能力は一番それっぽい」


【石住大】

「それっぽい?」


【昼埜遊人】

「そ、見てな」


 昼埜は広場の左端まで歩くと、周囲を見渡し一点を見つめる。一度呼吸をし、息を大きく吐き出す。集中しているようだった。


 そして────


 フッと、昼埜が姿を消すと、いつの間にか広場の右端へ移動していた。距離にして12m前後。始点と終点のみで昼埜が現れ、刑事二人は驚愕する。


【石住大】

「お、おお!? さっきの暴行犯に対してやったやつか。消えて現れた……」


【昼埜遊人】

「姿を消したまま移動できる、俺の超能力『消失顕現』ってんだ。すげーだろ」


 イヒヒ、と快活な笑顔で笑いかける。


 事件現場でも消えて近づき暴行犯を驚かせていたことに気づく。当時は見間違いかと思ってたがまさか透明人間のようになっていたとは。


 驚いている刑事二人に、暁は捕捉とばかりに話しかけた。


【暁増結留】

「人体を構成している生体元素を分解し、目的の場所で再構築しているのだと思われます」


「人体は水素、酸素、炭素、窒素、リン……記号でいえばH、O、C、N、P、Ca、S、Na、k、Cl、Mgの集合体です。途方もない計算になりますが構成物質を組み立てれば原理として可能……」


 つらつらと言いさす暁を昼埜は手を振りながら制止した。


【昼埜遊人】

「あーあー、まーた難しいことを。可能性ってだけだろ。わけわかんなくなるから、説明しなくていいんだよ」


【暁増結留】

「あぅ……」


 残念とばかりに暁は肩を落とす。

 まだ言い足りない様子なのだが、話すと長いからと昼埜は気にせず続けた。


【昼埜遊人】

「でもま、すごく見えて実際はそんな便利なもんじゃねーんだけどな」


【石住大】

「え? だって瞬間移動なんて便利の代表格じゃないか。アニメで目的地まで移動! とかできるし」


【昼埜遊人】

「瞬間移動……ん〜、そこまで能力がありゃいんだけど。残念ながら消えた後に人間の速度で移動してるからちょっと違うんだ。透明人間になってるのに近い」


【石住大】

「あぁ、瞬間ではないのか」


【昼埜遊人】

「そう。それに制約がハンパないんだわ」


【石住大】

「制約?」


【昼埜遊人】

「俺の場合、調子がすっげーいいときで最長でも数十メートルぐらい、目で目視できる範囲のみ移動できる。途中に障害物があって目的地を視認できなきゃ通り越していけないんだ」


「この公園の広場なら移動はできるんだけど、植えられた木々の先は見えないだろ。だから、ここから木々の向こうには行けない。行きたきゃ一度実体化して先を視認しなきゃならないんだ」


【石住大】

「なるほど……それが制約ってことか」


【昼埜遊人】

「でもまぁ、建物内の内観や障害物の先は事前に情報がわかれば特定の条件で移動できるんだけどな。いずれ機会があれば捜査中にでもまた説明するよ」


 そして、ここから本題だという風に、大きく息を吸い込んで話を続ける。


【昼埜遊人】

「そんでさらに、この能力を使うには……めっちゃゲームをする必要がある」


【石住大】

「ゲーム……?」


 突然場に似つかわしくない単語に訝しんだが、昼埜は大真面目にうん、とうなづく。


【昼埜遊人】

「めっちゃ、ゲームする。スマホのバッテリー充電みたいなもん。詳しくはわかんねーけど遊んだ時間と消失移動の距離が比例してるみたいで、暁が言うにはゲーム一時間につき移動1mらしい」


【石住大】

「じゃあ今、十二時間分消費したのか!?」


【昼埜遊人】

「燃費悪くて愕然とするだろ〜。面白い新作ゲームなら辛くないけどよー。普段は死んだ目で狩りをずっとやってんだぜ。おっさん、一人で延々作業するのも辛いから後で蓄積に付き合ってくれよな」


 苦々しげに口を歪める昼埜。その辛さを他人と共有したいという何ともはた迷惑な誘いであった。


【暁増結留】

「体調によって能力に多少の差は出るみたいです。ですが仕事として能力を使用する最低限のラインを定めて決定してます」


【昼埜遊人】

「だもんでさー、すっげーやらされんの。ゲームならボードやカードでもいいんだけど、手軽なのがスマホだから基本それ鬼周回前提。プレイ時間も細かにチェックされるし、国公認ゲーム廃人かよって感じだぜ」


【暁増結留】

「能力自体が特殊で前例がありませんから、先達として好事例となれるよう頑張ってください」


【昼埜遊人】

「これだ。へーへー、頑張りますよ。ってなわけで、微妙に使えて不便極まりない、これが超能力の実態なわけだ。ま、捜査では役に立つけどな。条件揃えりゃ、建物の内外からワープできるわけだし。さっきみたいに、姿を消して間合い詰めて制圧するのにすっげー使えるし」


【石住大】

「……驚いた。でも実際に目で見てしまうと信じるしかない……」


【鍋島吾郎】

「なるほど、いや便利だな。令状を取る前に侵入させられるってのはでかい」


【石住大】

「いやいや鍋島さん、それは犯罪じゃ……」

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