表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 中路太郎
2/7

”予告編”

……その町では、坂道を登ると、どこからでも海が見えた。



「ミナミ?」

「そう、美しい波で、美波。もっとも、私は本物を見たことないんだけどね」


―――歌を愛する盲目の少女、美波



「俺にはもう無理なんだよっ!」

「……お前にはがっかりだ、じゃあな」


―――歌う事に怯えるミュージシャン、悠一



―――二人が出会ったのは、寂れた港町


「地元の人?」

「そう、帰ってきたばっかの。えへへ、都落ちってヤツ」

「…随分楽しそうに歌うな」

「……まあ、これが私の世界だからね」



―――歌によって惹かれあう二人


「あなたの事知ってる、綺麗な声で歌ってた」

「もう、違う、俺は……歌えない」

「…そんな事無いよ」

「……」

「…うん、そんな事無い」


「もうあいつには会うな」

「どうして?!」

「居なくなっちまうからだよっ!」


「もう、ここには来ないで」

「なんで?」

「……あなたがここの人じゃないから、私の目が見えないから、あなたが私の前から居なくなるから……そしたら、私はあなたを見つけることが出来ないから…」

「………居るよ」

「……」

「…ずっと、ここに居る」

「うそ…うそっ!」

「ホントだっ!」

「なんでっっ!!」

「好きだからだよっっ!!!」

「………ッ…」


「………好きだ」



―――やがて二つの想いは一つの旋律メロディー


「よせて……かえして……よせて……かえして。色は見えないけど、音色ならずっと見てきた」

「……見てみたいって思った事…無い?」

「…無いよ。だってこんなに綺麗な青なんだもん」


「…歌えた…俺、歌えたよっ!」

「…うん、知ってる」



―――そして……別れの時


「戻って来いよ、悠一」

「…だめだ、俺は戻らない」

「なんでだよっ!」

「約束したんだよっ!」

「……じゃあ、お前、こんなトコで一生暮らすのかよっ!せっかくまた歌えるようになったてのにっ!」

「……悪い…」


「戻れば?」

「っ…けど」

「いいって、私のことなら」

「ミナミ…」

「元々、一人でやってたわけだし?今更ユーイチが居なくなったからって」

「……」

「…だから、戻んなよ」

「………わりぃ…っ…」


「……………………………………………………………………………………うそつき」



―――歌によって結ばれた二人の出会いと別れ……そして、



「ユーイチィーーーーーー」

「っ…ミナミィーー」

「さ、探すから!絶対見つけるからっ!あなたの声!あなたの音色忘れないからっ!!」



「ユーーーーーーーーイチィーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



  〜うみのみえるまち〜



―――あなたの町から見える海は、どんな音色をしていますか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ