”予告編”
……その町では、坂道を登ると、どこからでも海が見えた。
「ミナミ?」
「そう、美しい波で、美波。もっとも、私は本物を見たことないんだけどね」
―――歌を愛する盲目の少女、美波
「俺にはもう無理なんだよっ!」
「……お前にはがっかりだ、じゃあな」
―――歌う事に怯えるミュージシャン、悠一
―――二人が出会ったのは、寂れた港町
「地元の人?」
「そう、帰ってきたばっかの。えへへ、都落ちってヤツ」
「…随分楽しそうに歌うな」
「……まあ、これが私の世界だからね」
―――歌によって惹かれあう二人
「あなたの事知ってる、綺麗な声で歌ってた」
「もう、違う、俺は……歌えない」
「…そんな事無いよ」
「……」
「…うん、そんな事無い」
「もうあいつには会うな」
「どうして?!」
「居なくなっちまうからだよっ!」
「もう、ここには来ないで」
「なんで?」
「……あなたがここの人じゃないから、私の目が見えないから、あなたが私の前から居なくなるから……そしたら、私はあなたを見つけることが出来ないから…」
「………居るよ」
「……」
「…ずっと、ここに居る」
「うそ…うそっ!」
「ホントだっ!」
「なんでっっ!!」
「好きだからだよっっ!!!」
「………ッ…」
「………好きだ」
―――やがて二つの想いは一つの旋律に
「よせて……かえして……よせて……かえして。色は見えないけど、音色ならずっと見てきた」
「……見てみたいって思った事…無い?」
「…無いよ。だってこんなに綺麗な青なんだもん」
「…歌えた…俺、歌えたよっ!」
「…うん、知ってる」
―――そして……別れの時
「戻って来いよ、悠一」
「…だめだ、俺は戻らない」
「なんでだよっ!」
「約束したんだよっ!」
「……じゃあ、お前、こんなトコで一生暮らすのかよっ!せっかくまた歌えるようになったてのにっ!」
「……悪い…」
「戻れば?」
「っ…けど」
「いいって、私のことなら」
「ミナミ…」
「元々、一人でやってたわけだし?今更ユーイチが居なくなったからって」
「……」
「…だから、戻んなよ」
「………わりぃ…っ…」
「……………………………………………………………………………………うそつき」
―――歌によって結ばれた二人の出会いと別れ……そして、
「ユーイチィーーーーーー」
「っ…ミナミィーー」
「さ、探すから!絶対見つけるからっ!あなたの声!あなたの音色忘れないからっ!!」
「ユーーーーーーーーイチィーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
〜うみのみえるまち〜
―――あなたの町から見える海は、どんな音色をしていますか?