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青き炎の魔竜騎士(ドラグーン)  作者: シベリウスP
8/18

8 回天の端緒

ウラル帝国皇太子アゼルスタンと再び会ったホルン。

彼女は、皇太子の依頼を受けて、帝国の刷新に力を貸すことになる。

皇太子の理想を実現するため、ホルンたちが動き出した。

 テーランに所在する『モーリェ商会』に、数人の旅人が立ち寄った。


 一人は、銀髪を長く伸ばし翠の瞳をした戦士で、60センチはある穂先の手槍を持っている。女性ではあるがボロボロになった碧のフード付きマントや革の胸当、蒼い戦袍とその下に見えるチェインメイル、そして膝当がついた底の厚いブーツ……そのどれを見ても幾つもの死線をくぐって来た風格に満ちていた。


 もう一人は180センチの長身を持つ中年の男だった。右目は潰れていたが鋭い光を放つ碧い左目、使い込まれた胸当やブーツ、背中に負った両手剣と楯を見る限り、彼もまた歴戦の士と見て間違いはなかった。


 その二人に挟まれるように、金髪碧眼でおっとりとした雰囲気の、けれど意志の強そうな目の光を持つ美少女が立っている。厚手の生地に黒と赤、そして青で幾何学的な文様が刺繍してある服を着て、浅葱色の裾の詰まったズボンを穿いていた。身なりはどこにでもいる少女のようだが、その雰囲気はどことなく高貴さを感じさせている。


 そして、三人の後ろに、黒いバラを付け緑のボンネットを被った黒髪の女性が、影のように立っていた。深い緑色のワンピースを着て、同色の裾の詰まったズボンを穿いている。白い顔、黒曜石のような瞳と赤い唇が、彼女の印象を際立たせるとともに、なぜか記憶に残りづらくしていた。


「ここに、アリョーシャ・バグラチオン将軍がいるはずだと聞いたけれど、彼とそのご主人にお目通りしたいね」


 ホルンはつかつかと店に入ると、奥にいたひときわ恰幅のいい男に、小声でそう言った。


 その男はホルンからそう訊かれても、最初はとぼけてみせる。


「はて……ぶしつけですがお客様は? 私は『モーリェ商会』テーラン地区本店の支配人、マンフレート・フォン・ルシルフルと申しますが」


 ホルンは気を悪くした様子もなく、ニコリとして一つうなずくと、


「私はホルン・ファランドール、槍遣いの用心棒さ。こっちはガルム・イェーガー、『餓狼のガルム』の方が通りがいいかな? こちらのお嬢さんから、ここまでの護衛を承ったのでお邪魔させていただいたよ。何でもここに、お嬢さんの大事なお方がいるらしくてね?」


 そう言うと、さらに声を低めて続けた。


「……『オプリーチニキ』は片付けて来たよ。この店に入るのは誰にも見られていないはずさ。安心しな」


 マンフレートは、そこまで聞いて初めて笑顔を見せ


「噂に違わぬお方ですね? ソフィア姫様、よくお越しくださいました」


 そう答える。ソフィアは頬を染めると小さな声で訊いた。


「あの、アゼルスタン殿下は?」


「皆様のお着きをお待ちかねでございました。すぐにご案内いたします」



 四人が通されたのは、店の中で最も奥まった位置にある部屋だった。


 アゼルスタンは、バグラチオンと募兵状況について話をしていたが、


「殿下、お待ちのお方がお着きです」


 マンフレートの声を聴いて、慌ててドアを開けた。その目にホルンとガルムに護衛されたソフィアの顔が映る。ソフィアはもう涙目だった。


「ソフィア殿……」


 一瞬言葉を探したアゼルスタンだったが、すぐにホルンたちが見ていることに気付き、


「よく来てくれました。大変だったろう?」


 そう優しく声をかけると、ホルンたちにも


「ソフィア殿の護衛、お礼を申し上げます。それにこのようにしてまた出会えるということにも、何か運命を感じます。中にお入りください」


 そう笑って言った。


「私はここで見張りをしております。外のことはご心配なく」


 マルガリータは薄く笑ってそう言うと、影のように姿を消した。


 ホルンは、席を勧められると遠慮なく座り、左隣に座ったアゼルスタンに開口一番訊いた。


「話を聞く前に、殿下は私の協力が必要かどうかをお聞きするよ。協力か必要なのか、差し当ってのアドバイスが必要なのか、それとも以前言われたようにご自分の帝国のことはご自分たちで解決するのか……それを聞きたいね。もちろん、殿下のご意思は尊重するよ」


 アゼルスタンの後ろに立っているバグラチオンは、心配そうな顔をしていた。アゼルスタンの顔をのぞき込むわけにはいかないのでもどかしそうだった。


 それを見て、ホルンは


(ふん、バグラチオン将軍は現実派だね。受けられる助力は受けたいって考えのようだね。あとは殿下がどう言うか……アニラ殿の気持ちが伝わっていればいいけれどね)


 そう考えて、黙考するアゼルスタンの顔を眺めていた。


 アゼルスタンは、あくまでも自分たちの力で情勢を打破したいと願っていた。


 願ってはいたが、肝心の兵力が集まらない。


 最初、テーランに来れば、4・5千の軍は編成できるものと踏んでいた。どれだけイヴァン・フョードルが権勢を持っていたとしても、国内にはイヴデリ公への反感を持つ貴族はある程度いると思われたからだ。現にバグラチオンが集めた情報では、その考えは間違っていなかった。


(イヴデリ公は大貴族たちの特権は守りつつ、庶民のご機嫌取りのために小貴族たちには圧迫を強めている。彼らとて人数では大貴族に勝る。立つ者も多いはずだ)


 それがアゼルスタンとバグラチオンの読みだった。


 しかし、いざテーランに来てみると、集まった貴族たちはわずかに百人程度で、しかも彼らの中からもこの先の展開に不安を抱いて領地へと帰りたそうにしている者がかなり見受けられた。彼らに領地に戻られ、


『殿下の企みは失敗した。誰も殿下に味方する者はいない』


 などと吹聴されたら、自分は二度と帝国の土は踏めないであろう。


(もしそんなことになったら、ソフィアとも二度と会えなくなるだろう。僕はどうすればいいんだ……)


 アゼルスタンは長いこと黙っていた。その沈黙の長さが、彼の懊悩の深さを表している。


 アゼルスタンの左隣に座っていたソフィアが、静かな声で彼に話しかけた。


「殿下、殿下は陛下と同様、帝国を刷新されようとしています。それは正しいことだと思います。私はそう感じたからこそ、殿下のもとに戻って参りました」


 そしてアゼルスタンの握りしめた拳にそっと触れて、


「殿下、勝敗は時の運。敗れても生きてさえいれば何とかなりますし、私はその時はずっと殿下のお側にいるつもりです。

 けれど、アニラ様が『運命の女神は祈る者の前から素早く幸運を奪い取る』とおっしゃったことがあります。殿下の正義を打ち建てるには、それなりの準備と努力と、そして仲間が必要です。『蒼炎の魔竜騎士ドラグーン』、ホルン様のお力をお借りしましょう」


 そう、心を込めて説いた。


 その時、アゼルスタンの脳裏に、希代の魔女アニラ・シリヴェストルの言葉が思い出された。


『この戦いに勝ちたいのであれば、そなたはいかなる犠牲も甘受せねばならん……それが最愛の人だとしてもだ。

 けれどホルン殿がいれば、あるいはその運命を変えることができるかもしれぬ。力を貸してくれるなら借りた方が、そなたにもソフィアにとっても幸いだろう』


(『蒼炎の魔竜騎士』……このお方との出会いは運命だと?)


 心の中で問いかけるアゼルスタンに、アニラの面影は笑って答えた。


『純粋な心は時として世界を狭くする。ホルン殿があの『終末預言戦争』を仲間と共に生き抜けたのは、彼女には清濁を気にしない優しさがあったからだと思っている。そういう意味でも、彼女は殿下にとってはいい師表だ』


 アゼルスタンは、ソフィアの目を見た。ソフィアの碧眼は強い意思で輝いている。


(この女性ひとを守りたい……)


 アゼルスタンは心底そう思った。ソフィアはゆっくりとうなずき、ホルンに言った。


「ご協力をお願いできませんか? 『蒼炎の魔竜騎士』、ホルン・ファランドール様」


 ホルンは今まで腕を組み、目を閉じていたが、ソフィアの言葉で目を開ける。その瞳に決意の眼差しをしたソフィアが映った。ホルンは薄く笑うと、アゼルスタンに再度問いかけた。


「……殿下、あなたの決心を聞きたい。私もアニラ様からあなたを助けてくれと依頼されてはいるが、肝心のあなたにそのつもりがなけりゃ、私としても動けないからね」


「……僕は……」


 アゼルスタンはそう言いながらゆっくりとホルンに顔を向ける。


「……帝国の人たちのために、あなたの力をお借りしたい。『蒼炎の魔竜騎士』、力を貸してくれないだろうか?」


 するとホルンは、可笑しそうに笑って答えた。


「はっはっはっ、本当に運命ってのは不思議なもんだね。いつの間にか私は『蒼炎の魔竜騎士』になっちまった。

 いいよ、最初から手を貸すって言っていたんだから、殿下のお気持ちさえ変わらなければ私はいつだって力を貸すさ」


 そして後ろに佇立しているガルムを向き直り、


「けれどそれは私だけのこと。ガルムさん、あなたはここでこの仕事から降りてもいいよ。勝算は薄いし、相手にどんなバケモノが待ち構えているかも知れないからね。もう『終末竜アンティマトル』みたいな奴との死闘はこりごりだろう?」


 そう、歯に衣着せずに真剣な顔で聞いた。


 ガルムは肩をすくめて答えた。


「おいおい、ホルンさん、この仕事のそもそもを思い出してくれ。ホルンさんがそっちの坊やを、俺の意思なんか関係なくうちに担ぎ込んだことが発端だろう?

 それに俺は言ったよな? 生きているうちに体験できることなら体験しなきゃ損な気になるとね」


 そして続けて言った。


「まあ、妖魔相手ならホルンさんに一日の長があるだろうが、相手が人間なら俺だって負けてはいない。それに久しぶりに軍団を指揮してみたいとも思っていたんだ。俺のことは何も気にせず、ホルンさんの好きに使ってくれ」


 それを聞いて、ホルンは莞爾とした笑みを浮かべ、アゼルスタンに言った。


「話は決まったよ。殿下の話をお聞きしようじゃないか」


   ★ ★ ★ ★ ★


 ファールス王国の首都イスファハーンにある王宮の中で、この国の中枢ともいえる5人が一堂に会することはめったにない。


 それは別に不思議なことではなく、家臣筆頭であるジュチは大宰相として帝国の運営に邁進しており、ザールとは頻繁に顔を会わせるが、大将軍リディア、驃騎将軍ガイとは、軍事的緊張が起こらない限りあまり顔を会わせる機会がない。


 それにザールは、周辺国との堂々たる戦争……宣戦布告に基づいたものや大規模な反乱、あるいは境界上の重要な紛争以外のものは、ジュチと大司馬イリオン・マムルーク将軍に任せていたこともある。


 もちろんロザリアは王妃となったことで、基本的には王宮の奥にいることになっているが、彼女はかなり頻繁に宰相府や総司令部、参謀本部に顔を出す。彼女が最も臣下の動向を把握していると言って良いかもしれない。


 この国を立て直した伝説の『6英傑』のうち、5人が今もファールス王国の中枢にいて活躍しているのだが、ホルンを含めて全員の状況をある程度までつかんでいるのもまた、ロザリア一人といえた。


 そのロザリアが、王の執務室に入って来た。


「ロザリア、また城下を回っていたのか?」


 ザールは、ロザリアが12・3歳の少女の姿でいるのを見て、苦笑と共に言う。ロザリアはドラゴニュート氏族の血も混じった魔族だ。その血が動き始めると少女の姿になる。


 ロザリアは笑って元の姿……白髪に紫紺の瞳を持つ女性へと戻りながら答えた。


「ふふっ、王宮の奥は退屈じゃからの。それにマルガリータとも連絡を取らねばならないから、しばらくは寂しくても我慢してくれ、ザール様」


「まあ、君のことだからたいていの戦士や魔導士には負けないとは思うが、注意だけは怠らないようにしてくれよ? ところでマルガリータからはどんな連絡があったんだい?」


 苦笑して訊くザールに、ロザリアは不意に真剣な顔をして言った。


「ザール様、これはジュチやリディア、そしてガイとも話し合いたいと思うのじゃが、ホルン様はウラル帝国の皇太子に本格的に肩入れするおつもりじゃ」


 それを聞いて、ザールはロザリアへと向き直り、腕を組んでため息と共に言う。


「……そうか……ホルンのことだからそう言う流れになるだろうとは思っていたが、実際にそうなると、こちらとしてもいろいろと考えなければならないことが出てくるな」


 ロザリアはうなずいて言う。


「そうじゃな。その点はジュチの意見も叩いてみるとよい。ヤツはこの国に入り込んだウラル帝国の間諜たちを一網打尽にしたばかりじゃから、帝国の状況を最も分かっているじゃろうからな」


 ザールは真剣な顔でしばらく何かを考えていたが、やがて顔を上げてロザリアに緋色の瞳を当てて言った。


「分かった、可及的速やかに、かつ隠密裏にジュチたちと話がしたい。ロザリア、その調整をしてくれるか?」


 ロザリアは、ザールの真剣な顔に見とれていたが、そう言われてハッとした顔をして、ちょっと頬を染めてうなずいた。


「うむ、承ったぞ陛下」



 その夜、ザールの私室にホルンを除く『6英傑』が集まった。


 ザールは、全員が着席すると、まずロザリアの顔を見てうなずく。ザールのうなずきを見て、ロザリアが最初に口を開いた。


「今日、みんなに集まってもらったのは、おおよそ予想はついとるじゃろうが、ホルン様とウラル帝国皇太子殿下のことじゃ」


「ふむ、やはり姫様はウラル帝国の継嗣に協力することにされたんだね?」


 ジュチが、金の前髪に形のいい指を絡ませながら言う。ロザリアはうなずいてジュチに話を振った。


「そう言うことじゃ。ジュチ、そなたは我らの中で最もウラル帝国に詳しいじゃろう? かの国で何が起こっているのかを、現在判っているだけでいいから話してもらえんかのう?」


 するとジュチは、肩をすくめて


「一から十まで話すとかなり長い話になるから、要点だけお知らせするよ。質問がある場合はその都度言ってくれたまえ」


 そう前置きすると、自分がつかんでいる『ウラル帝国の現状と今後の見込み』を話しだした。



「まず、かの国で何が起こっているのか、だ。


 あの国はボクたちの国と違い、頂点に皇帝はいるが政治の実権は各地の大貴族が持っていた。今の皇帝ディミトリー2世は、その慣習に反して皇帝権の確立のために動いていた。


 最初の頃は、官吏の登用や地方官の任命、軍指揮官の採用方法の改革などで少しずつ大貴族の力を削ぐ政策を推進していたようだが、二つの大きな改革をしようとして大貴族たちからの反発を買った」


「反発? 何をしようとしたのさ?」


 リディアが訊くと、ジュチはニコリとして


「徴兵権を皇帝直属の権利にしようとしたことと、土地課税を全国一律なものに統一しようとしたことさ」


 そう言う。リディアは不思議そうに訊いた。


「いいことじゃん。何が反発を食らったんだろう?」


 それに対しては、ガイが海の色をした瞳を彼女に向けて静かに言った。


「あの国では、皇帝は大貴族が管轄する土地には勝手に課税・徴収できない慣習がある。


 大貴族たちの土地へは、大貴族たちが言った税率しか課税できず、さらにはその徴収についても実行するすべはない。


 そしてそれは人に対しても同じだ。強い軍隊を創るために徴兵しようとしても、大貴族たちの了解がなければその領地からは人を集められない」


「それでよく国が成り立って行くもんだね? それにウラル帝国には西にロムルス帝国、東にはダイシン帝国があるじゃん? どっちもマジ強い国だから、戦になったらそんな体たらくじゃ心配だと思うけど」


 リディアが言うと、ガイは肩をすくめて答えた。


「その時は大貴族たちは結束して自分たちの立場を守っている。他国に支配されるより、お飾りの皇帝の下で自分たちの権利を守った方がいいからな」


「ふーん、キトクケンってやつか」


 リディアが言うと、ジュチが笑ってうなずいた。


「今、リディアが既得権と言ったが、その既得権を大貴族たちに保証して、皇帝位を奪おうという輩が現れた。現皇帝の弟でイヴデリ公のイヴァン・フョードルだ。


 彼は大貴族たちを手懐けて、皇帝の政治的実権をほとんど奪うことに成功している。ただ、玉璽尚書のアレクセイ・アダーシェフ、軍司令官のウラジミール・オスラビア将軍がまだ皇帝に忠誠を誓っているため、帝位を奪うまでには至っていないのさ」


「……その形勢を変えるため、ディミトリーは皇太子を国外に出したということだね。彼は確か、ウラル帝国の神剣も持っていたんじゃないか?」


 ザールが訊くと、ジュチはうなずいた。


「おお、よく覚えていたね? こちらで調べてみたところ、皇太子アゼルスタン殿は小貴族には人気があるらしい。大貴族の中でも、イヴデリ公と彼を比べてみて、ゆくゆくはアゼルスタン側にと考えている者も多少はいるようだ。ただ……」


「……アゼルスタンにはまだ天下を納得させるに足る実績がない、そうだろう?」


 ザールが薄い笑いと共に言う。ジュチも同じ笑いを浮かべて答えた。


「そうだ。ザール、キミもまだ26歳と各国の君主の中では若い部類だが、キミには『終末竜アンティマトル』を倒したという確固たる実績がある。

 それに比べると彼はまだ15歳、そして国内外にも一部の人にしか知られていない。


 内偵したところ、テーランで4・5千の軍勢を集め、ルーン公国とも協力して帝国南側に拠点を作り、兵力を4・5万まで増やしたところで首都エリンスブルクへと進軍する……そんな目論見だったようだが、まだ5・6百しか兵は集まっていないらしいからね、アゼルスタンとその仲間としては『詰んだ』状態さ」


 それまで黙っていたロザリアが、不意に口を挟んだ。


「そうじゃの、皇太子としては『詰み』から逃れねばならぬ。姫様を仲間にしたのもそのためじゃろう。ジュチ、そなたなら今の『詰み』の状態を脱するために、何をどうする?」


 するとジュチは、片方の眉を上げて答えた。


「まず皇太子の存在をみんなに知らしめないといけない。それと強力な味方の存在もね?

 姫様はそのどちらの条件にも当てはまる。元ファールス国女王にして『終末預言戦争』を勝ち抜き、王国を繁栄に導いた女神様だからね?

 ホルン・ファランドールが味方に付いたと知れば、皇太子に影から手を添える者たちも増えるだろう。イヴデリ公は小貴族たちにはかなり厳しいみたいだからね」


「そこじゃ! そこが問題なのじゃ!」


 ジュチの言葉が終わらないうちに、ロザリアが声を上げる。


「えっ? 何が問題? 確かに姫様が味方に付いたら形勢が変わる可能性が高いじゃん? アタシだって皇太子に味方したいくらいだよ」


 リディアが言うと、ジュチが苦笑しながら、


「リディア、キミがそう言うように、ウラル帝国の奴らもボクたち『6英傑』のつながりは知っている。

 たとえ今、姫様がこの国に関係がなかろうと、キミみたいに姫様の味方をしてファールス王国の軍が出ないかと心配もするだろう。

 いや、ザールが指示して、あるいは黙認して姫様に皇太子の味方をさせたと考える者もいるはずだ」


 そう言うと、ロザリアも渋い顔をして言う。


「姫様の気持ちは理解できる。あの戦いを共に生き抜いた戦友じゃからな。

 けれど、私たちにはこの国の人々の暮らしを守る義務がある。姫様の行動次第では、国として難しいかじ取りが必要になってくるのじゃ」


 リディアは二人が言った言葉をじっと考えていたが、


「分かったよ、アタシは大将軍としては、特にローマニアとマウルヤの動向を注視しているように見えるよう努力するよ」


 そうニコリとして言った。


 ザールもまた笑って、


「そうしてくれたら助かるよリディア。君もずいぶんと周囲の状況に合わせて行動することに慣れてきたようだね? 頼もしいよ」


 そう言うと、リディアは照れて恥ずかしそうに言う。


「や、ヤダなザールったら。昔からアタシがザールの誉め言葉に弱いの知ってるくせに」


 その時、ガイが言った。


「しかし、臨機応変の対応には適時の情報がいる。そのためのマルガリータ殿だろうが、彼女だけでは敵の軍に対しては心もとなかろう。大宰相殿、そこはどう考える?」


 するとジュチは、ニコリと笑って言った。


「ふふ、皇太子が姫様の名を使って宣伝を始めたならば、ボクに考えがある。あくまで『ホルン・ファランドール』という個人を際立たせ、この国の関与がないことを印象付けるようなね?

 しかしそれとは別に、正規の軍でウラル帝国に対して適時に圧力をかける必要もある。その指揮官には状況を見て素早く、適切な判断をすることが求められる……ガイ、君にその指揮官役を任せたいけれど?」


 それを聞いて、ガイはうなずいて言った。


「いつでもそなたの指示に従えるようにしておこう、大宰相殿」


 ザールは、そこにいるみんなの顔を見ながら言った。


「前回の話し合いでも出てきたように、この騒乱はひとりウラル帝国だけでなく、周辺諸国の存立に関わって来る恐れがある。ここにいるみんなは情報を共有し、いいと思ったことはいつでも僕に告げてくれ。仮に騒乱が起こったとしても、この国を守り抜き、みんなでそれを乗り越えて行こう」


   ★ ★ ★ ★ ★


「コルネフ様、聞きましたか?」


 ルーン公国の首府アストラハンの一角に指揮所を構えたウラル帝国皇帝親衛隊『オプリーチニキ』の魔剣士隊を統べるイヴァン・コルネフのもとに、パーヴェル・レンネンカンプ魔剣士長が訪れて訊く。


「魔導士隊のロシチェンコのことか? 彼は将来を嘱望された魔導士だったが、惜しいことをしたな。ジュルコフもさぞ残念がっていることだろうな」


 コルネフはそう言うと、左目を輝かせてこちらを見つめているレンネンカンプに、静かに諭した。


「レンネンカンプ、魔剣士隊も魔導士隊も同じ『オプリーチニキ』だ。他の部隊の失敗を喜び、快哉を叫ぶような文化は『オプリーチニキ』にはなかった。今後もそんなことはないと信じているぞ」


 それを聞いたレンネンカンプは、居住まいを正して


「はっ、失礼しました……ところで『標的』のことですが」


 そう言うと、コルネフの眼が自分に向けられたのを見て、微笑と共に言う。


「わが魔剣士隊もそれから魔導士隊も『標的』の行方はつかんでいませんが、テーランでそれらしい動きはあります」


「それらしい動き?」


 コルネフが訊くと、レンネンカンプはうなずいて、


「はい、どうやら『標的』につながる誰かの仕業でしょうが、人を集めているようです。ファールス王国の遊民はもちろん、ウラル帝国の人間まで集まって来ています。人数的には数百人とたいしたことはありませんが、中には小貴族の関係者と思われる者もいるようです」


 そう言う。


 コルネフは何かを考えていたが、


「誰の情報だ?」


 そう訊く。今まで魔剣士隊で一人、魔導士隊で二人の指揮官職にある人物が、罠と思われる情報に踊らされて失われているので、情報の出どころを確認して大事を取りたいのだろう。


「カツコフ先任魔剣士の部隊がつかんだ情報です。カツコフも自身でその情報を確かめに行ったようです」


 レンネンカンプの答えに、


(あの慎重なカツコフらしいな。彼のつかんだ情報なら信用が置ける。その線を手繰ってみるべきだな)


 そう思ったコルネフは、レンネンカンプに命令した。


「レンネンカンプ、君が指揮を執ってテーランに乗り込んでくれ。その線を探ってみよう。ロシチェンコとアンドロポフを向かわせるので、カツコフはここに戻してくれ」


「分かりました」


 レンネンカンプは左目を細めて喜びを表すと、サッと身を翻して部屋から出て行った。


「……わが『オプリーチニキ』が『標的』を見失って久しい。副司令官殿からの圧力もあるが、それよりも我らをこれほどてこずらせているヤツの存在が鬱陶しいな。銀髪の女槍遣いか……ヤツはいったい何者なんだ?」


 コルネフは、壁にかけてある帝国の地図を見ながらつぶやいた。



 同じころ、テーランにいた筆頭魔導士コンスタンチン・クラブチェンコも、大魔導士ジュルコフから増援を受けて、


「必ずやあの女槍遣いたちを捕まえて、ブルカーエフやコスイギンの仇を取ってやる」


 そう、固く心に誓っていた。


 新たに彼の指揮下に加わったのは、ゲオルグ・ティモシェンコとヴァシーリー・ヘイの二人だった。


 ティモシェンコは隻腕の魔導士として治安部隊で辣腕を揮った人物、ヘイはまだ18歳と若いが、同じく治安部隊では『クルミアの悪魔』と呼ばれた魔導士集団2百人を相手に10人を率いてわずか1日で全滅させた功績を誇る、『魔術の貴公子』と呼ばれている若手のホープだった。


「わが魔導士隊はこの作戦で二人も指揮官職を失った。一つのミッションでこれだけの被害を出したのは結成以来初めてだし、それが戦士とはいえ用心棒ずれから受けたというのも恥辱だ。二人にはぜひとも、わが光輝ある魔導士部隊の雪辱のために、銀髪の女槍遣いを討ち取ってほしい」


 クラブチェンコがそう言うと、先任であるティモシェンコが低い声で訊いた。


「……その用心棒たちはどこに?」


 クラブチェンコは首を振って答える。


「残念だが、見失っている。テーランから出ていないことは確かだが、姿を隠しているようだな。私の部下には連日、交易会館を見張らせている。用心棒ならばそこに立ち寄るのは習慣と言って良いからな」


「その用心棒と『標的』との関係は分かっていますか? ひょっとしたら『標的』の護衛に雇われた奴らかもしれません。そうであるなら、交易会館には顔を出しませんよ?」


 ヘイがはきはきとした声で言う。大手柄を立てての実施部隊への抜擢だった彼は、今は怖いものなしと言った風情だった。


「ふむ……確かに奴との最初の出会いは、『標的』を捉えたリュスコフ隊を壊滅させたことだからな。そのまま『標的』に雇われていてもおかしくはない。ただ、そうだとするとその用心棒たちがここ数週間、『標的』と一緒にいるところを確認されていないことが気にはなるが……」


 そう言うクラブチェンコに、ヘイは首を振って言う。


「筆頭魔導士殿、それより僕はここに来る際におかしな噂を聞きました。誰かは知りませんが、テーランの北側に拠点を作って人を集めているようです。

 傭兵隊の結成だとか、山賊連中の仲間集めだとか言われていますが、山賊なら白昼堂々と仲間を集めたりはしないでしょうし、傭兵隊なら誰に雇われたかが気になるところです。調べてみるわけにはいかないでしょうか?」


「その噂、私も聞いた。ウラル帝国の小貴族もいるらしい」


 ティモシェンコもそうつぶやいた。


「ふむ、小貴族が……それならば『標的』と関係があるものの手が回っているのかもしれないな。よかろう、ヘイ、その調査は君に任せよう」


 クラブチェンコがそう言うと、ヘイはニコリと笑って、


「承知いたしました」


 そう言うと、影のように姿を消した。


「……ヘイとはここに来る途中で落ち合いました。魔力の強さと術式の精緻さは認めますが、経験が不足しています。自分の腕に自信があるため、損害を顧みないところもあると感じました。ご注意を」


 ヘイが消えた後、ティモシェンコはつぶやくようにそう言って、部屋を辞した。


   ★ ★ ★ ★ ★


 テーランの『モーリェ商会』では、連日いろいろな話し合いがなされていた。

 今までバグラチオンしか相談相手がいなかったアゼルスタンは、若いとはいえ知識が豊富なソフィアや、歴戦の士であるガルム、そして元女王として広い視野を持つホルンを得たことで、皆目見当がつかなかったことや目算が立てられなかったことについても、一つ一つ問題を解決していっていた。


「バグラチオン将軍、故国に参加を呼び掛けた義勇兵たちはどこに集めているんだい?」


 ホルンが訊くと、バグラチオンは地図を指し示し、


「テーラン北東のラシュガラクという集落です。

 元はアルボルズ山脈越えの街道が通っていて、それなりに大きな村だったと聞きましたが、今は別の街道が主に使われているので寂れてしまったようですね。

 空家が結構残っていましたので、同志たちの宿舎としてそのまま使わせてもらっています」


 そう答える。


「誰の名義で借りているんだい? この店の支配人かい?」


 さらに訊くと、バグラチオンは首を振って答えた。


「いえ、ルーン公国の国策貿易商である『ルーン交易公社』の名で借りていただいています。

 表向きの理由は、ファールス王国内での物流拠点の確保で、集まって来た同志たちはその作業員ということになっています」


 ホルンは、彼やアゼルスタンがちょっとほろ苦い表情をしているのを見逃さなかった。


「この店の代表者は、殿下たちに手を貸していないみたいだね?」


 ホルンが言うと、アゼルスタンはうなずいて答える。苦々し気な顔だった。


「はい、エカテリーナ殿とは意見が食い違う部分がありまして。彼女に言わせれば、天下の権を握るには経緯は関係ないと……」


 ホルンはそれを聞いて笑いだした。


「はっはっはっ、いや失礼。そう言われては、大国の継嗣としては黙っちゃいられないだろうね。

 殿下の気持ちは私もよく分かるよ。天下の権は正しい目的と正当な手段で手に入れるべきもの……私もそう考えているし、そうでない者の末路は最近ではザッハークが示しているからね」


 ホルンが言うと、アゼルスタンは目を輝かせてうなずく。そんな彼に、ホルンは優しく笑って続けた。


「けれどね、殿下。そうじゃない者の末路が全部ザッハークみたいになるとは限らないんだよ。

 ザッハークにしたって、私が存在せず、いい政治をやっていれば、簒奪者と言われつつもそれなりの功績は遺しただろう。

 私がいても、私が辺境の用心棒で満足して、そんな私に手を出さなければ、あのままザッハークの治世は続いたかもしれない」


「でも、ホルン様は兵を挙げられました。邪なものの繁栄は天が許さないという証拠ではないですか?」


 アゼルスタンが訊くと、ホルンはきっぱりとそれを否定する。


「それは違うね、天はただ天としてそこにあるだけさ。私が挙兵したのは、運命の流れに従っただけ。

 その運命はサーム様をはじめとした国士と呼ばれる人たちの気持ちや、何より王国の人たちの心が動かしたんだと思っている」


 それを聞き、アゼルスタンは青い顔をして突っかかるように聞いてきた。


「しかし、それでは私たちの努力というものは無駄なんでしょうか? 天は誰にも味方はしないと言われるのでしょうか?」


 ホルンは、微笑を含んだ顔で答える。


「間違えちゃいけないよ、私は努力が無駄だとは言っていない。

 王国の人たちの心を動かしたのは何だと思う? 私は、サーム様のもとで私が考える未来像というものを、まずトルクスタン侯国の人たちに具体的に行動として見せた。それがいつの間にか天下の人たちの言の葉にのぼり、挙兵への大きな流れになった。

 天は自らを助ける者を助けるのさ。努力もなしに幸運はやって来ないし、幸運を目の前にして動けないなら、それでは天下を争う資格があるとは言えないね」


「……」


 アゼルスタンは顔を赤くして黙り込んでいる。自分の現状を情けなく思っているのかもしれない。ホルンはニコリと笑うと、優しくアゼルスタンに言った。


「殿下、あなたには運命の流れを見る目はあると思うよ。そうでないなら、私はここにはいないからね」


 その言葉を捉えて、話を聞いていたソフィアが言う。


「ホルン様のおっしゃるとおりです。殿下にその資格がないのなら、私も今、ここにこうして座ってはいないでしょう。殿下は道をお示しください。私たちはその実現に力を尽くしますから」


「……ソフィア殿……」


 アゼルスタンが顔を上げた時を見計らって、ホルンは尋ねた。


「殿下は、今後何が必要だと思われますか? 自分自身のことと、周りのことを見て」


「……僕は、ウラル帝国が敷くべき正義を、みなに分かるように示したい。そしてそれを助けてくれる同志を一人でも多く集めたい」


 アゼルスタンの答えに、ホルンは肩をすくめて笑う。


「なんだい、やればできる子じゃないか。その答え、簡にして要……ジュチならさしずめそう言うところだね。で、謀将ロザリアの一番弟子、あなたは今の言葉からどう今後の方針を立てる?」


 ホルンが言うと、彼女の後ろに控えていたマルガリータが、静かな声で口を切った。


「敷くべき正義は殿下がご自分でお考えになるもの。私は後者についてお答えします」


 そう言うと一息おいて、


「バグラチオン将軍、いまラシュガラクにはどれくらいの同志が集まっていますか?」


 そう訊く。バグラチオンは言下に答えた。


「人数としては8百くらいです。ただ、小貴族の次男坊や農奴として大貴族の荘園で働かされていた者がほとんどで、訓練もなっちゃいません。

 すぐに戦えるのはこの国から応募してきた用心棒や山賊上がりの者たちで、数としては2百いるかいないかってところです」


 マルガリータはうなずいてさらに訊く。


「なるほど……では、帝国において小貴族たちにとって最も邪魔な存在、忌み嫌われている存在はございますか?」


「それは、『オプリーチニキ』の国内治安部隊でしょうね。奴らはイヴデリ公の命で小貴族たちを監視しているし、中には命令もなしに小貴族たちの財産を没収している部隊もいるようですからね」


 バグラチオンの答えに、マルガリータは鋭く切り込む。


「命令なしの没収……その情報に裏付けはございますか?」


「ええ、同志の中にヴァルター・トラヤスキーとカーヤという双子の兄妹がいます。小貴族の跡取りでしたが、父が『オプリーチニキ』から殺されて領地を失ったという話でした。調べてみると話は本当だと判明しています」


 バグラチオンが言うと、マルガリータはふむといった顔で何か考えていたが、


「……とりあえずはそれでよいでしょうね。ではまずその8百を、精鋭無比の部隊に仕上げねばなりません。その指導はガルム様にお願いできますか?」


 そう言う。


「おい、俺は殿下の宿将だぞ。俺を差し置いて殿下の軍隊を他に任せろというのか?」


 思わず鼻白んだバグラチオンだったが、マルガリータはニコと笑って言った。バグラチオンが言葉を飲み込むくらい妖艶で、そして不気味さも感じる笑いだった。


「ふふ、将軍が統率されるのは当然と考えていましたから、省略しただけです。他意はございませんよ?」


「しかし、ガルム殿が大っぴらに行動すると、テーランに紛れ込んでいる『オプリーチニキ』に嗅ぎつけられはしませんか?」


 ソフィアが心配そうに言うと、マルガリータはうなずいて答えた。


「それが狙いです」


   ★ ★ ★ ★ ★


 マルガリータの案は、アゼルスタン側の仲間たちが心配する中、実行に移された。


 そのことが話し合われている間、アゼルスタンもホルンも何も訊かなかったし、何も意見は述べなかった。


 結局のところ、ソフィアがマルガリータの知力を信じてバグラチオンの説得に回ったことで決定された形である。今後、戦いが進む中で何度も繰り返されるパターンの、これが最初だった。


 ガルムは決定を受け、すぐさまラシュガラクに向かった。バグラチオンとソフィアがそれに同行した。


「俺は天下の用心棒、『餓狼のガルム』だ。バグラチオン将軍から諸君の指導を任された。諸君はいろいろな理由でここに集った同志だと聞いたが、まずは各々が持つしがらみを捨てろ!」


 ラシュガラクに赴き、8百の人々を前にしてガルムが最初に言った言葉がこれだった。


 8百の群衆に、戸惑いのざわめきが流れる。ガルムはそのざわめきが収まり、自分の言葉の意味を一人一人が考え始めた頃、こう続けた。


「俺が諸君にまず言いたいのは、『死ぬな』ということだ。諸君にはそれぞれ人生があり、いい思い出や悪い思い出もあるだろう。けれど死んじまったら思い出すら消えてなくなる。生きているからこそ未来へと進める、そうだろう?」


 8百の群衆は、ガルムの言葉に耳を疑った。今までバグラチオンからは耳にタコができるくらいに、


『帝国の現状を変えるため、殿下への忠節を尽くせ。そのためには一身を顧みるな』


 そう聞かされていたからである。


(なんか、あのおっさん、変わったことを言う奴だな。どういう奴なんだ?)


 そう思った者もいるだろう。群衆のざわめきは最初の当惑の色から、興味と理解のそれに変わりつつあった。


 ガルムはその変化を敏感に感じ取った。そして微笑を浮かべて言う。


「死なないためにはどうしたらいいか? 簡単だ、俺の戦に対する理念を理解し、訓練について来ればいい。諸君にその気があれば、ひと月で『オプリーチニキ』や治安部隊の奴らと差しで戦える技量がつくだろう。やる気がある奴は、俺の二つ名『餓狼』にかけて、立派な狼に仕立ててやる」


 聞いていた皆は驚いた。『オプリーチニキ』の名は知らなくても、治安部隊の名を知っているものは多かった。奴らはまるでハイエナのようだ……そう恐怖していた者も多い。


 しかし、ガルムはそんな彼らでもハイエナと戦えるようになれるという。


(なるほど、『餓狼』は『ハイエナ』に勝てるからな)


 そう思い至った時、みなが明るい表情となった。ガルムはそれを見て、真剣な顔に戻り、こう言い渡した。


「力が付いたら、諸君の夢は叶うと思う。あるいは現状を打破できるだろう。その力の一端を、諸君の故国ウラルのために揮ってくれないか。

 これは強制じゃない。諸君はここに来た段階ですでに憂国の士であると信じる。その志に問いかけたいのだ」


 それを聞いて、8百の人々もまた真剣な顔をして静まり返った。ガルムは左目に鋭い光を宿して、黙って彼らを見ている。その身体から噴出する気迫は、最後尾にいたものにもビンビンと伝わった。


「同志よ、いかに⁉」


 ガルムがそう鋭く叫ぶと、全員が一斉に鬨の声を挙げた。8百の烏合の衆が、『同志』になった瞬間であった。


 その熱狂を傍らで見ていたバグラチオンは、茫然としながらも、


「……さすがホルン殿のもとで鳴らした古豪だ。私はまだまだ将として未熟だった」


 隣にいるソフィアにそうつぶやいて唇をかんだという。



 ガルムは、8百の同志をその出身や境遇によって四つに分けた。


 一つは、既にある程度の力量を持ち、戦場の経験もある者たちである。彼ら約150人は、バグラチオン直率とした。彼らに足りないのは指揮統率だけであり、将軍直率として彼らの優越感をくすぐるという目的もあったのだ。


 そしてガルムは、バグラチオンから聞いていたトラヤスキー兄妹と面接し、彼らの力量が所望の域に達していることを確かめると、同じ小貴族出身の若者たち約150人のリーダーとして据えた。兄のヴァルターは武勇に優れ、妹のカーヤは智謀に長けていたため、二人にその指揮統率を任せた形である。


 ガルム自身は、約2百人の農奴出身の若者たちを鍛えることにした。彼らの境遇は、他のグループからバカにされることが多かったし、それゆえに今のままでは他の集団と連携するのも難しいと感じていたからである。

 彼らに自尊心を取り戻させ、しかも他の部隊との軋轢を生じないようにするのは、かなりの難事でもあった。だからこそガルムは自身でその教育を担当し、万全を期したという部分もある。


 そして最後に、ソフィアの要望で彼女が見込んだ2百人を後方要員として選抜した。

 軍隊とは単に戦う組織ではない、食べて移動する自己完結した組織で、時々戦う集団だ……そう思っていたガルムは、ソフィアの要望をすぐに聞き入れ、ただでさえ少ない戦闘要員から、ものの役に立ちそうな若者を『抜擢』したのである。

 この部隊で育った若者たちは、後に軍が大きくなって行くに従って、補給、庶務、法務、衛生などの軍隊としてなくてはならない組織の中心的存在となっていく。


 とにもかくにも、ガルムという異色の戦士によって、アゼルスタンの牙は少しずつではあるが鋭く、たくましく育っていくことになった。



 しかし当然、このような動きはすぐに『オプリーチニキ』側に伝わった。というかガルムには隠すつもりがさらさらなかったから、伝わるのは必然だった。


「ラシュガクにいる集団は、あの女槍遣いと一緒にいた男が訓練しています。バグラチオンが顔を出しているとの情報もつかみましたので、『標的』と関係があることは確実です」


 テーランで現地指揮を執っている魔導士部隊の指揮官クラブチェンコのもとに、ヴァシーリー・ヘイから報告が届いたのは、彼が調査を開始してから1週間ほど過ぎた日だった。


「ふむ、ついに『標的』への手がかりをつかんだな」


 クラブチェンコはそう破顔一笑すると、ヘイからの使者にこう告げた。


「その集団を常時監視せよ。私は魔導士部隊すべてを終結した攻勢を開始するためにサムソーノフ様やジュルコフ様と協議してくる。少なくとも2週間は集団を監視するだけにとどめ、何か事態の変化があったらヘイ自ら遅滞なく指揮所に報告せよ」


「2週間、ですね?」


 使いの者が訊くと、クラブチェンコはうなずいて念を押す。


「そうだ。それ以上になるかもしれないが、別命あるまでは勝手な攻撃は禁じる。そして仮に何か動きがあったら、ヘイ自ら報告に来るようにとくれぐれも伝えるのだ」


「了解いたしました」


 使者が指揮所から出て行くと、クラブチェンコはゲオルグ・ティモシェンコを呼び、


「ヴァシーリーが『標的』の尻尾をつかんだ。私は司令部に言って攻勢作戦の許可をいただいて来る。それまでは君にここの指揮を任せたい。頼むぞ、ティモシェンコ」


 そう告げた。ティモシェンコは頭を下げて命令を受けたが、


「ヴァシーリーへの監督には万全を期しますが、彼が不羈の行動をした場合、私の独断でことを処しても構いませんか?」


 そう訊いた。クラブチェンコはうなずくと、


「何があるか分からないのが我々の常だ。その時には各自の判断で動かねばならない……それが『オプリーチニキ』の精神だ」


 そう言って笑った。



「この宿泊所の周りに、ヘンな奴らが増えましたぜ」


 ガルムは、訓練状況の確認のためにラシュガラクを訪れたホルンに、そう言って笑う。


「ふん、ガルムさんがこれだけ派手に動いているんだ。ウラル帝国ご自慢の特殊部隊ともあろうものがその情報をつかんでいなかったら、かえって驚くよ」


 ホルンも皮肉な笑いを見せて言う。そして傍らに控えたマルガリータ・ルージュを振り返って訊いた。


「マルガリータ、あなたの思うつぼにはまってきた感じだけれど?」


 するとマルガリータは、漆黒の髪に白い手を伸ばして、


「……いつから、どのくらいの人数を見かけられましたか?」


 そうガルムに訊く。ガルムは同じく詰所にいたトラヤスキー兄妹に訊いた。


「ヴァルター、君が最初に奴らを見かけたんだったな?」


 すると、亜麻色の髪をしたヴァルター・トラヤスキーは、紺碧の瞳をマルガリータに向けて答えた。


「2日ほど前です。最初は2人だけでしたが、次の日からは4人ずつ見かけるようになっています」


 双子の妹であるカーヤも、うなずいて補足した。


「二人ずつ交代しているようで、都合10人を確認しています。今日の正午に一巡したようですから、この場所を監視しているのはとりあえず10人程度でしょう」


 それを聞いて、マルガリータは黒曜石のような瞳をホルンに向けて言った。


「敵は攻勢を準備しているのでしょう。ここからエリンスブルクまでは普通ひと月はかかりますが、彼らなら1週間かそこらで行きつくでしょう。

 司令部の意思決定にどれだけの時間がかかるかは未知数ですが、早ければ2週間後に敵の攻勢がここに向けられるものと思います」


「おいおい、ここはファールス王国の領土内だぜ? いくら何でも他国の領土内で軍事行動はとらないだろう」


 ガルムが言うと、ホルンは首を振って、


「ガルムさん、相手は特殊部隊だよ? この国の『王の牙』と同じで、通常の軍事作戦が取れない地域に投入することを前提にした部隊だよ。

 ましてや摂政が実権を握っているのなら、国際的な批判なんて関係ないからね。責任は全部、皇帝陛下に押し付けちまえばいいんだから。私はマルガリータの観測は正しいと思う」


 そう言うと、マルガリータに訊く。


「で、あなたの対策は?」


 マルガリータは漆黒の瞳に不思議な光を宿して答えた。


「現地の指揮官がどれだけの兵力を持っているかは分かりませんが、監視に10人程度なのを見るとこの地域には多くて50人程度でしょう。それらの部隊は攻勢発起までは動けない可能性が高いので、まずはここを監視している10人を始末し、そのまま部隊を北上させましょう」


「どこまで行けばいいのかな?」


 ガルムが訊くと、マルガリータは目を閉じて何か呪文らしきものを唱えていたが、それが終わると目を開けて答えた。


「ペイノイ……『蒼の海』の東側で、カブランカー地域のすぐ北です」


「おいおい、そこはファールス王国の版図からギリギリ外れているぞ」


 ガルムが言うと、ホルンは真剣な顔でうなずいて


「ああ、それにすぐ隣のルーン公国の版図でもない。つまりは緩衝地帯で、どの国の主権も及ばない地域だ。そこに決戦の場を求めるんだね、マルガリータ?」


 そう訊くと、マルガリータはうなずいてこう言った。


「ひとり『オプリーチニキ』だけでなく、国内治安部隊の兵も蹴散らせば、殿下の存在はウラル帝国内で確固たるものになるでしょう。そしてその帷幕に姫様がいらっしゃることが伝われば、今の劣勢を一気にひっくり返せます」


「ふーん、イチかバチかの大博打だな」


 ガルムが言うと、ホルンはマルガリータを見て訊く。


「マルガリータ、この間の手紙に、ザールは私を……その、見捨てはしないって殊勝なことを書いていたけれど、そのことについてロザリアから何か指示はなかったかい?」


 するとマルガリータは、薄く笑って言う。


「姫様、お顔が赤いですよ?」


「う、うるさいわね。こんな時に茶化してどうするんだい? それで、どうなんだい?」


 照れ隠しなのかいつもに輪をかけてぶっきらぼうに訊くホルンに、マルガリータは


「姫様、陛下は姫様のことをまだ愛していらっしゃるのでしょうか? どう思われます?」


 そんなことを聞いて来る。


「ばっ! ざ、ザールにはもうロザリアがいるじゃないか! それに私は前から自分はザールには似合わないって思っていたんだ。今の暮らしが気楽だよ」


 さすがのホルンも慌てて、顔を赤らめながら言う。


「そうですか? 私は以前から陛下と姫様はお似合いだと思っていましたが。それに姫様が女王でいらっしゃったとき、陛下と()()()になられていたとお聞きしたことがありますけれど?」


 マルガリータの追撃が止まらない。ホルンは閉口して、


「ゔ~っ! 私の質問には答えないってことだね? 分かったよマルガリータ。あなたの策を信じてやってみようじゃないか」


 遂に降参してそう言うと、


「で、いつかかるんだい?」


 そう訊く。マルガリータは不思議な笑いを浮かべて、驚くべきことを言った。


「今です」

「「は?」」


 これはホルンとガルムがハモった。二人とも毒気を抜かれた表情をしている。


 マルガリータは、二人の顔をうっすらと笑いを浮かべた顔で見てうなずき、


「今です。先ほどカーヤは正午に敵の監視部隊が一巡したと言いました。今はまだ8点過ぎ2刻(午後0時30分)。

 つまり今は監視部隊の指揮官がここを見張っている可能性が高く、その目の前で部隊を動かせば、指揮官その人が部下を糾合しながら我々を追って来るでしょう。

 そうすれば他の部隊への連絡を取らずに急追して来る可能性もあります」


 そう言うと、何も言えないでいるホルンに笑いかけて言った。


「今から準備して、ガルム様の部隊だけでも動かせば、敵は引っかかってくるでしょう。10人を始末する場所は、街道の北、シュミランの村辺りになると思います。私はここで陽動をかけますので、姫様はガルム様と一緒に出撃を」


 そして、事態の急展開に目を白黒させているヴァルターはガン無視し、この展開にもちゃんとついて来ているカーヤを見て言った。


「カーヤ、お兄様と協力して、あなたの部隊をガルム様の部隊に続いて出発させるフリをしてくださいませんか? 本当の出発は殿下やソフィア様、将軍が来てからのことにはなりますが」


「分かりました。ついでにわが部隊から将軍に連絡者を出しましょうか?」


 カーヤが言うと、マルガリータは首を振って答えた。


「連絡は私が直接、ソフィア姫と取ります。でも、そこに気が付くのは素晴らしいわ。作戦の方も抜かりなくお願いしますね?」



「動いた!」


 ラシュガクの『敵部隊』を監視していたヴァシーリー・ヘイは、眼下の村から都合2百人ほどの部隊が進発するのを見て、そう叫んだ。ここで見張りを続けて3日目、初めて敵が見せた大掛かりな動きに、ヴァシーリーは気が逸った。


「アルボルズ山脈を越えるようだな。訓練か、それとも移動か?」


 ヴァシーリーはまずそのことが知りたかった。


 訓練ならばこのまま監視を続けていればいい。敵は勝手に帰ってくるからだ。まあ訓練状況を監視するための班員を出す必要はあるが、それでも移動を監視するよりは数倍気が楽である。


 しかし、移動となれば話は違う。行き先を見届ける必要があるし、事によれば予定されている攻勢作戦に支障が出る恐れもある。


「班員を全員呼称しろ。それから、そちらの二人は敵に見つからないように接近し、その装備を確認するんだ。兵糧を持ち歩いているようなら移動の可能性が高い。すぐに僕に知らせてくれ」


 ヴァシーリーはそう言ってその場にいる3人の班員すべてを送り出した。これで実際上、彼が他の部隊や指揮所に連絡を取る手段は断たれたも同然だった。


 やがて、ガルム隊を偵察した班員が戻って来て、驚くべきことを告げた。


「班長殿、敵は全員が背嚢や雑嚢を担ぎ、兵糧も持ち歩いているようです」


 ヴァシーリーは頭を回転させる。背嚢には都合3日分の、雑嚢には1日分の兵糧が入れられる。とすると、予備を考慮してあの敵部隊は3日間の行軍を予定していると考えていい。


(ゴルガーン地峡を目指しているのかもしれない。そこまで行くのであれば、もうここには戻るつもりはないと思える。指揮官殿がいない時に厄介なことになったものだ)


 ヴァシーリーは舌打ちしたい気分であったが、次に彼の頭に浮かんだのは、今まで監視していて気付いたこと……敵兵の練度が低いということだった。


(あの程度の練度では、まだ野戦は無理だ。うまくすればバグラチオンを討ち取ることができるかもしれない。彼さえ討ち取れば殿下は翼をもがれたハトだ)


 ヴァシーリーの心には、むずむずと功績への欲求が頭をもたげてきた。治安部隊では2百人の敵をやっつけた僕だ。今の敵もその程度しかおらず、練度は相当に下だ。


「あの敵を追尾しよう。移動先を知らねばならない」


 彼はそうつぶやくと、ちょうど戻って来た班員に命令して、自分は追撃を開始した。


「敵は移動を開始したと判決する。よって我が班はそれを追尾する。君は後続が進発するかどうかを確認して、後続がありそうならすぐに僕の後を追って来てくれ」



 宿泊地から2百の部下を率いて出発したガルムは、隣を歩くホルンにのんびりとした声で訊いた。


「ホルンさん、奴らは引っかかってくれるかね?」


 ホルンは『死の槍』を肩に担いで、


「それは敵の指揮官次第さ。マルガリータの言うとおり攻勢が近いのなら、普通の指揮官だったらついて来るだけ。それも密かにね」


 そう言うと、後に続く兵士たちの顔を見て、ニコリと笑って言う。


「ガルムさん、たった1週間足らずでよくここまで鍛えたもんだね。みんな目の光が違って来ているよ。あと1週間も訓練すれば、一通りのことはできるようになるだろうね」


 それを聞いた兵士たちの顔に、思わず笑みが漏れる。


 ホルンはそれを見てうなずくと、小声でガルムに言う。


「敵の指揮官が功に逸った奴ならば、いつ何時攻撃を仕掛けてくるか分からないよ」


「ふん、それは剣呑だな。けれどマルガリータさんは何故、シェミランの村で戦いが起こると言ったんですかね? ロザリアさんの弟子とはいえ、予言者みたいで背中がむずむずしたぜ」


 ガルムが訊くと、ホルンは少し考えてから答えた。


「敵は10人程度だ。こちらの部隊は急ごしらえとはいえ2百人からいる。殲滅なんてできないだろうし、敵もそれは狙っちゃいないだろうね。

 私なら指揮官一人を狙うよ。だったら後続が追い付く前に小休止中を狙った方がいい。それなら部隊にも油断が出ているだろうし……それがマルガリータの読みだろうね」


「なるほど。でもまあ、行軍中に突っ込んでくる猪武者かもしれないから警戒は厳にしておくよ。ティムールさんも言っていたからな、『戦はしょせん化かし合い』ってな」


 ガルムはそう言うと笑った。


 ホルンはそんなガルムを頼もしげに眺め、


「頼んだよ。こっちは寡兵だから、先手先手と攻めていかないと、殿下の夢も始まる前に終わっちまうからね」


 そう言ってホルンも笑うのだった。


(マルガリータは私を茶化すことができるほど気が大きい子じゃない。それが敢えて私を茶化したというのなら、私の問いに間接的に答えたことになる……ザールからの増援がある、と……)


 笑いながらホルンはそう思い、


「……この作戦、私が思うほどの大博打じゃないかもしれないね」


 そうつぶやいた。



「……そろそろいいですね」


 根拠地では、マルガリータが辺りを見回しながらそう言った。ガルム隊が進発して四半時(30分)、マルガリータは部隊を整列し終えたヴァルターとカーヤに合図を送る。


 その合図を見たヴァルター・トラヤスキーは、自分の部隊に、


「よし、出発だ!」


 そう号令すると、彼の部隊はゆっくりと前進を始める。


「お兄さま、あまり急がないでください」


 ヴァルターの隣で、カーヤが小声で言う。この部隊の役割は、居残って見張っているに違いない敵の監視兵に対して、『バグラチオンの部隊はどこかに移動しようとしている』と信じ込ませることなのだ。


「動き始めた!」


 近くの丘で見張りを継続していたヴァシーリー・ヘイの部下は、トラヤスキー隊の進発を見てそう叫んだ。先に2百の部隊がここを離れ、今また150ほどの部隊が進発している。敵がこの根拠地を捨て、新たな場所に移動しようとしているのは確実と思われた。


「これは、班長殿に知らせないと」


 その班員は取るものも取りあえず、行軍するトラヤスキー隊を追い越してヴァシーリーのもとへと急いだ。


 ガルムとホルンの部隊が、運命のシェミラン村に到着するまで、あと1時間半だった。


   (『9 破邪の聖槍』に続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

回り道しましたが、いよいよホルンとアゼルスタンが連携して本格的にウラル帝国の内紛に加わることになります。

寡兵のホルンたちは、どう形勢をひっくり返すのか? 次回もお楽しみに。

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