黒装備初獲得
「水着、完成したよーっ」
元気いっぱいなメッセージと共に、プレゼントが届いたのは二日後。
フレンド同士はメッセージに、プレゼントを添付できる。
「おおっ、すげー、黒装備じゃん!」
大喜びで早速、試着するシド。
「……」
げんなりと、プレゼントにかたまるリユキ。
リユキに気遣いの眼差しを向けてから、自分用のプレゼントを開けてみるレイ。
黒地に小さな銀の水玉模様が光り、装備名は水玉水着。男子用のは膝近くまで長いハーフパンツタイプ。
女子用のは、きっちりビキニタイプ。きっちり。
「おおっ、似合うオレ!」
抜群のスタイルを惜しげも無くさらし、鏡の前でポーズをとるシド。はっきり言って目に毒だろう。
その格好で人前に出るのかと、レイは内心信じられないが口には出さない。
だが、とっても嬉しそうなため、適切な言葉をかける。
「良かったな」
「おう! ヤル気出てきたーっ」
シドは、これで良かったが。リユキは苦い顔つきで、プレゼント欄を親の仇のごとく睨んだままだ。取り出すのも嫌なもよう。
「……」
二人は、シドのマイホームにお邪魔していた。イベントの相談のためだ。
料理や調合の機能は使えないが、遊びにくる事は可能。あとは、お茶のみ。
「イベント準備は、これでおっけーかな」
「……ふむ」
必要なアイテム類は、新しく買い足す事なく、ボックスに揃っていた。
ひとり暗雲を背負っている一名をのぞき、アイテムの確認を行う。ついでに、イベント内容も。
「今回は狩り数競いかー。場所とりがキモだな」
「場所とり?」
イベントに用意される予定地は、ある島だ。
イベント二日間で、どれだけモンスターを倒せるかを競う。
ただ、強いボスタイプも出るので、協力も必要。ボスはポイントが高い。
裏世界でも、同じイベントが行われ、やはり全体のポイント数を競う。
「やっぱり、殲滅魔法が有利だよなー」
「魔法、か」
薬師には当然、攻撃魔法はない。薬を作る職業だ。有効な薬が作れないか、色々模索中だった。
可能性をさぐる行為は、それなりに楽しんでいる。
「白魔道士にも、魔法あるけど……」
ようやく復活したリユキが会話に加わる。
イベント開始の10分前に、シドのマイホームに集合を決めて、解散となった。
「ちゃんと水着着て来いよーっ」
「……ッ」
現実のホテルのプールサイドで、黄昏る。
まだ復活しなさそうなので、レテューはひとりで泳ぐ。
最初にプールに入った時、うっかり目を開けて、痛い思いをした記憶がまだ新しい。
運動して、満足してプールから上がると、見計らっていたように歩み寄る女性がいた。
「こんにちは」
二十代後半くらいの、スタイルのいい美女だ。レオパード柄のビキニを着ている。
「……?」
「日本語分からない? あら残念……」
女性はじっくりとレテューを眺めてから、笑みを浮かべて去って行く。
灰色の髪に、アイスブルーの瞳は、確かに外国人に見えるだろう。
じとりと、リュウキが何か言いたげにその様子を見ていた。
数日前から、妙に視線を感じていた。危険は感じなかったので、無視していたのだが。
「人妻はビキニか……」
まだ駄目らしいリュウキに、ため息をつく。
朝食のレストランに向かう。
ため息ばかりつくリュウキに、レテューは苦笑いしかできない。
「あー、要するに、本当に女になった訳じゃなく、見た目だけって事だよな」
ようやく、ゲームに慣れてきたから、分かった事。
思うように体が動かないのは、諦めた。修行でもしていると考えれば、切り替えやすい。
「見た目だけ、なんだけどさ……」
結局、イベントギリギリまで、リュウキはご機嫌がよろしくなかった。




