イベント準備
ゲームの公式サイトにて、大規模参加イベントの概要が発表され、騒がしくなる中──。
「夏だし、海だし、予想はついてたけど……」
「……」
イベント参加条件の一文に、ショックを受けるプレイヤーは多数。イベントチャットがまた荒れている。
「水着か! まぁ、仕方ないなっ」
「逆に、男子になってる女子が……不参加しそう」
キャラは男子でも、上半身裸で人前に出るのは、女子にはきついだろう。
「防具は、どうなるんだ?」
ほとんど下着にしか見えない水着映像には敢えて感想は述べず、レイは疑問を呟く。
「水着も、一応防具扱いだな。あちゃー、これもガチャかよー。ノーマルは……地味だな」
シドが唸る。リユキも眉を寄せて、イベント画像を見ていた。
武器や防具やアクセサリーにはランクがあり、無料で手に入るものと、お金をかけて手に入る物がある。
下から順に、木製、鋼製、青製、白製、黒製、金製、虹製。
課金しないと、金以上は出ない、らしい。
当然、価値の高い物の方が、性能もデザインも素晴らしい。ちなみに、先日裏ボスが着ていたのは、昨年の水着装備とのこと。
あとは、レアモンスターを倒して、レア部位をゲットし、加工するという手段もある。
高校生の二人はもちろん無料で遊んでいる。
「レアモンスター狙うか? 水着用だと……」
「海辺かな」
急遽、海岸エリアに向かった。だが、同じような事を考えるプレイヤーは多く、あちこちで浜辺モンスターが乱獲されていた。
海にもモンスターはいるが、浜辺より敵が強く、潜る用の装備必須のため、結局水着を着ないといけないのだ。
ノーマルで出た地味な、紺色の水着装備に着替えて、海に入った。
砂地よりさらに身動きしづらく、運が悪いとサメの群れに襲われる。だが、その群れの中に、たまにレアボスが紛れている。
2時間くらい粘り、ようやく三匹倒せた。
「疲れた……」
水のまとわりつくような感覚はない。ただ、ひたすら体が重くなる。
そんな海中で長い時間戦闘していれば、疲れるのは当然だった。
三人で砂浜に座り込んでいると、背後から声を掛けられた。
「お疲れ様ー、もしかして水玉シャーク狩ってた?」
若い男子……初心者はここには来れない……つまり、元女子プレイヤーだ。
一瞬きょとりとしたものの、シドが真っ先に答えた
「ああ、水着用にな……そっちも?」
黒髪の少年と、ピンクの髪の少年はうなずきながら近付いて来た。二人とも、耳がちょっと尖っている。エルフ族だった。
「ちょっと商談があるんだけど、話だけでもいい?」
二人の頭上に、ポンと文字が出た。装備職人と、アクセサリー職人だ。
「いいぜ、生産職かー。あ、グループチャットで」
「おっけー」
ポンポンとグループに入りますか? という表示が流れ、言われるままに入ると、目の前に文字が流れ始めた。
お礼を言いながら、少年二人は近くに座り込む。
無表情ながら警戒しているレイの腕を軽く叩き、大丈夫と視線で伝える。
「まずは、話を聞いてくれてありがとう! 私はアニー、でこっちがメメ」
黒髪少年が溌剌と話し出す。
「おう、オレはシド。天使がリユキで、薬師がレイ」
「よろしくね! 私達見ての通り生産職だから、かわりに水玉シャーク狩ってきて欲しいんだ! お礼は三人分の装備とアクセサリー作るよ、どう?」
商談と言われた意味がわかり、警戒を解く。リユキがシドにうなずき、彼もニカッと笑った。
「いいぜ! オレらもどうせ、生産職に頼むつもりだったし……ちなみに、技術レベルは?」
「二人とも、180よ」
「! 凄いなっ? え……逆にオレらの方が得じゃあ……」
技術レベルはマックスが現在200だ。相当、上級者だろう。リユキも目を丸くさせている。
「レア探して倒す手間考えれば、こっちも助かるから、お願いします」
頭まで下げられ、断りにくくなったようだ。
その場でフレンド登録し、もう一度海に潜る事になった。
グループチャットは、グループに入ったプレイヤーにしか会話が聞こえない。一旦そちらを解除して、再びサメの群れに向かいながら、三人で会話する。
「女子から声を掛けられたぜー!」
はりきるシド。
「いま男子だけど」
苦笑気味のリユキ。
「ややこしいな……」
海中での戦闘に慣れてきたレイ。
技術レベルを上げるのは、キャラレベルの三倍かかり、成功すれば黒か金装備ができる。材料費だけで作ってもらえるなら、破格の取引だった。
ちなみに、現在の技術レベル。リユキの白魔道士はレベル190。シドの拳闘士は200。レイの薬師は16。
一時間半ほどで、レアモンスターを三匹狩れた。
二人の生産職プレイヤーは大いに喜び、素材を五人分渡し、出来上がったら連絡する事を約束した。
余ったひとつは予備として、倉庫行き。
やりきった感でログアウトした。
「……結局、水着は着るんだな」
「あ」
着るかどうか、悩んでいた事をすっかり忘れていたリュウキだった。




