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下克上ボーナス


「……うっそー」


頭が真っ白になる。


ロストしたあと、裏世界の都市──スターパレスにて、赤水晶を見つめながら、彼女は呟いた。


満天の星空。赤く明滅する世界地図。


コウモリの羽が力なく閉じられ、ふらついた彼女をさっと支える腕。


「螺鈿……」


「大丈夫?」


「だっ……大丈夫くない……っ!」


裏ボスと呼ばれる女性プレイヤー、甘味が叫ぶ。


甘いモノが好きで、つけた単純なキャラネームだ。ツインテールにしたピンクの髪が揺れる。


「信じらんない……レベル差が250! 有り得ないっ! なによあれーっ!?」


「……と、言う事は、まさか初心者か……?」


「えっ、マジ!?」


開戦時のみ、特別な経験値がある。倒した側に、相手とのレベル差の10倍の経験値が入るのだ。


倒された側にも、その経験値が伝わる。甘味はレベルマックスの300なので、つまり相手のレベルはわずか50。


今回の相手の経験値は2500……。ちなみに、ちょっと強いモンスターでもらえる経験値は10くらいだ。


下克上でしかメリットがない、システムだった。


「ひぇー……」


同じく、負けて街に戻された仲間達が、話を聞いて驚愕する。


阿鼻叫喚。ほとんど勝っていたのに、ボスが討伐されて全部おじゃんになった。


「もう、今日は落ちるわ……」


「オレも、ちょっと動画確認してくる」


「私もー」


次々に仲間がアウトしてゆく。みんな甘味から視線を外して。


気まずいのもあるが、本心は分からない。トッププレイヤーは孤高の存在になりやすい。


「うう……螺鈿……」


「私達も落ちようか。録画、確認しよう」


「ふぁい……」


促されるまま、ログアウトした。






目覚めたのは、普通のアパート、普通の部屋。


使い古したヘッドギアを外して、彼女はずるりとベッドから降りる。


「はぁ……疲れた」


冷蔵庫からパックの野菜ジュースを取り出し、ストローで吸う。


ごく普通の、ちょっとゲームにハマっている、普通の女子だ。


携帯端末がメールを受診する。さっきの開門戦の録画先を、ラデンが送ってくれたのだろう。


見たくない気持ちでいっぱいだったが、無視する訳にもいかず、端末を操作する。


よりにも寄って、運営の公式サイトに早速アップされており、好き勝手にコメントされ、解説されていた。


茶色いローブで、キャラの顔は口元しか見えない。というか、大剣を投擲する全体像と、ガチ勢に囲まれ困っている場面のみ。


甘味が大剣で、首元にダメージを受け、消えていく場面がしっかり映っていた。


いやもっと、信じられない事実が映っていた。


「はあ……? 職業、薬師ぃ……!?」


キャラネームを公開しない限り、録画などに出るのは、職業だ。


茶色ローブの頭上には、しっかりと薬師の文字が……。


「こんな薬師がいてたまるかー!!」


近所迷惑も頭から吹っ飛び、甘味は叫んで野菜パックを握り潰した。











ホテル内には、コンビニや店舗も常備されている。


プールで程よく運動した後、お菓子やらジュースやらを買い込み、部屋に戻った。


ちょっと仮眠し、端末で確認。


「経験値がすご」


「?」


「裏ボス倒したから、レベル上がってる。スキル増えて、選べる」


50だったレベルが、80近い。他にも高プレイヤーを倒したから、技能レベルも軒並み。


レベルは二種類ある。キャラレベルと、各技能レベルだ。高ければ高いほど、強くなる。


今回は大剣を使ったため、大剣レベルが異様に上がっていた。つられて筋力とか、反射速度とか、細かい数値も。


他にも、レベルが上がり解放された機能もいくつか。


リュウキはあまり詳しくはないから、複雑な説明は途中で諦めた。


本来なら攻撃特化とか、素早さ特化とか、クリティカル率とかあるのだ。レテューは素早さを上げているようだった。


「薬師のスキルは?」


「採取、詳細鑑定、変遷、合成……」


レテューは順調に、漢字を覚えているようだ。


「薬、作れる」


「薬、以外もあるな」


「毒薬……」


それから、職業専用の装備も、増えていた。リストを真面目に眺めるレテューと、段々まぶたが重くなってくるリュウキ。


眠くなってきて、あくびをする。


ホテルの環境が、快適すぎるのだ。ゴソゴソとベッドに潜り込む。


「寝よ」


「おやすみ」


平和に夜がふけていく……。




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