確保
『一緒に遊ぼ』
無邪気なメッセージ。発信者は『クロスエイド』
有名なプレイヤーだ。表世界の総合ランキング一位。ゲームが始まった時からずっと、不動のトップ。
物理攻撃特化。有名トップクランの団長。クラン人数は上限300人の常に満員。
上位ランカーがほとんど彼のフレンドらしい。
あと、超重課金者。
羅列される情報だけでも、近寄り難い。絶対、関わりたくない。
一応、相手プレイヤーからの接触を拒否できる、ブロック指定、もできる。
メッセージも、姿すらも見えなくなり、しつこいプレイヤーから逃げられる機能だが、ブロックされた事は相手にも伝わる。
そこまでは、できない。
ゲームのメッセージ画面に、悩むこと二日目。
「……ムリ」
シドのマイホームにお邪魔して、ダラダラとお茶をしていた。
遊ぼう、はゲーム内で、だろうし。一緒にと言っても、装備から熟練度から違い過ぎて、クエストひとつ、ついて行けないだろう予測がつく。
リユキを通してレイを確保したいのだろうが、人身御供にする訳にも。
そもそも、人見知りなのだ。野良パーティは本当にどうしようもない時しか、組みたくない。
「何がムリって?」
新たに手に入れた黒装備を眺めて満喫中のシドは、独り言をしっかり拾っていた。
メッセージやら、リアル遭遇やらは、話せていない。このまま何もなければ……何もなく、縁は切れるはず。
「今日は、どうする? とりあえず、装備は揃ったよな」
「うん」
シドの新しい装備は、拳闘士用の道着だ。身軽さと丈夫さが、格段に上がった。
リユキの装備も新調した。ちょっとデザインが……大人っぽい。
「ところで、レイさんは?」
「採取?」
珍しく、ひとりで行動中だ。リユキが今日は、シドのマイホームから出ないと分かると、出掛けて行った。
何もする気が起きない。クエストも採取も、必要最低限は終わっていたから、リユキとしては現状で充分だった。
うっかり街を歩いて、見つかりたくないのもある。
幸い、アイテム売買や、情報閲覧はどこでもできる。
引きこもり万歳だ。
(ホテルに、いれば良かったかも)
ダラダラと時間を潰していたら、ワールドメッセージが流れた。
『突発イベントを開始します。オンしているプレイヤーは戦闘準備をしてください。繰り返します──』
「……は?」
「え」
『緊急イベントだよーっ? 首都にレイドボスが襲来! クリスタルを守ってねー! 10、9、』
「いきなりかよっ!」
「……」
パーティを組もうとしたが、出来ない。シドと顔を見合わせる。
「ランダム飛ばしだ! こりゃマジだな」
「……クリスタルで集合?」
『……3、2、1、ゼロ〜!』
「後でな!」
マイホームから強制的に、表世界のどこかへ飛ばされる。
完全にランダムなため、職業もレベルも無関係。未踏地に飛ばされたら、戻れないだろう。その場合はイベントは諦めて、アウトするしかない。
フレンドチャットも、グループチャットも使えない。
「──」
ただ、救済措置は一応ある。ランダムに、別職業で組まされるのだ。
吹雪が舞う寒冷地エリア。知らない上級者エリアだった。
雪男のような、見上げる程のモンスターがいた。
そのモンスターを挟んで、輝く剣を振るうプレイヤーの姿が見えた。
白髪の、長身の、六枚翼の、美女プレイヤー。
邪魔といわんばかりにモンスターを一撃で斬り捨て、にこにこ笑う。
「ラッキー、さすが俺!」
キャラ名が燦然と頭上に輝く。
クロスエイド。
(え? いや……ありえない。いくらなんでも)
ゲームプレイヤーが、一体何万人いると。
「頑張って、帰ろっか? 回復さん?」
こんな偶然は──仕組みでも、しない限りは──。




