遭遇
検索機能、というものがある。
キャラクター名だったり、条件をつけたり、または自分がいるエリア内を指定して、プレイヤーを探す機能。
簡単な方法は、目の前にいるプレイヤーに視点を当てて、対象の公開情報を見たり、メッセージを送ったりできる。
装備を参考にしたいとか、フレンドが欲しいとか。公開情報しか見れないので、もちろんプライベートは守られているが。
何度かメッセージを読み直した。宛先間違いかと。
『金の翼の回復さんへ──』
……間違いではないようだ。
「そろそろ、自宅に戻るんだけど……」
夏休みは、まだ日にちが残っている。
快適なホテル暮らしも、終わりが近付いていると思うと、残念だ。
荷物といっても着替えくらいなので、支度はすぐ終わる。
「明日帰るのと、ギリギリ帰るのと、どっちがいい?」
「リュウキの好きに」
「……」
とりあえず、ホテルの売店で、自分達用と家族用にお土産を買いに行く。お菓子多数。
(どーしよ)
うんうん悩んだ。
ずっとゲームに付き合わせるのもアレなので、普通に遊びに行くかとも考える。涼しい場所──一日いられる所……あった。
「明日帰って、出かけよ」
「わかった」
シドにも、しばらくゲームは休むとメールして、荷物をまとめ、お土産と一緒に宅配便で送った。
知らない相手からのメッセージは、見なかった事にした。
関わりたくなければ、無視が最善。
贅沢ホテル、最後の一晩を満喫して、翌日お昼前に、無事に藤家に帰ってこれた。
少し休憩してから、エアタクシーで二人で出かける。
リュウキが選んだのは、地元から少し離れた、大型ショッピングモールだ。
広いし涼しいし、お店は何でもある。普通のゲームセンターも。
夏休み中な事もあって、ほどほどに混んでいた。家族連れやカップルや、友人同士と様々だ。
適度に休憩スペースもあるし、映画館や屋上プールまである。
物珍しく見てはいても、少し緊張してついてくる友人を、本屋や服などを見て連れ回す。
比較的空いている喫茶店に腰を下ろし、遅めのお昼をとる頃には、かなり疲れたようだった。
「……平気?」
レテューは周りを見回し、近くに他人がいないのを確かめ、肩をすくめる。
「人が多い」
「都会に行くともっと多い」
「……」
信じ難いと言う目をされた。
人がいっぱいな場所はまずかったかと、考え直す。
「山とか海の方がいい?」
食事の手を止めて、意見を訊いてくるリュウキを、レテューは懸念して見返した。
「……家で、じっとしてるように、言われてなかったか?」
「そうだっけ」
すっかり忘れているリュウキ。
ここまでついてきてしまってから、はたと思い出した。思わず、頭を抱える。
「こんなにひとが多いと」
不測の事態が起きたら困る──と続けようとした時だ。
喫茶店のすぐ横、広い中央の道の先で、ざわめきが起きたのは。
喫茶店に腰高の柵はあるが、そこより上は仕切りはない。通行人も、何事かと視線をやっている。
ひょいと覗き見ると、客同士のトラブルのようだ。すぐに警備員が駆け付け、騒いだ客は連れて行かれた。
「……」
「……」
楽しんでいた空気が一変。食べかけのお昼を口に詰め込み、喫茶店を出た。
「一度、帰った方が」
「もう少しだけ」
普通? のゲームも見せたかったのだ。
子供でごった返すゲーム広場に着くと、奥の壁側に目的のゲーム機が並んでいた。他の人が遊んでいる様子を見せていく。
「シューティングとか対戦ゲームとか、なんとなく分かる?」
「……」
戦闘機がバリバリ敵機を撃ち落とす画面を見せても、楽しくなさそうだ。
「戦争用、なんだよな?」
「……戦闘機は、うん」
よく良く考えれば、まずいと気付く。
戦争を、ゲームにしているのだ。
「……ごめん、帰ろ」
出口に向かって歩いて行く時、数人とすれ違う。最後尾の青年が、すいっとこっちを見て口を開き。
「……あ、回復さん」
うっかり、見返してしまった。
知らない相手。でもどこかで見た事があるような?
「……?」
分からないまま、スルーして、ゲーム広場を後にする。
エアタクシー乗り場を目指し、歩く二人の後ろから、何故か……着いてくる足音が聞こえて、ぎくりとした。
「なー、ちょっと待って」
しかも、気軽に話しかけてくるし。
リュウキは焦った。
「? 知り合いか?」
「まさか」
きちんと身なりのいい格好をした、見た目もいい青年だ。大学生くらいか。もちろん他人だ。
「ねー、待って。金の回復さん……くん?」
建物の広いエントランスホールにて、とうとう追いつかれた。
(ついてない──)
顔をはっきり見られているし、何よりレテューが一緒だ。
周りには大勢の客がいて、騒ぎは起こせない。
自分の運の悪さを後悔しながら、足を止めた。




