専用武器
ダンジョン。
タイプが色々あるが、上級者エリアにあるのは四箇所。
吸血鬼城のさらに奥、沼地を進んだ先には、不気味な塔がそびえている。
1階ごとに強力なボスモンスターが待機していて、最上階まで止まらず行ければ、黒宝箱ゲット。
5階までクリアした所で、ようやく黒魔道士が落ち着いてきた。
「壊れるたびに、また取り出してたのか! よーやく見えた!」
「専用武器は、何度壊れても元に戻るからな。しかも、壊れるたびに、強度上がってる?」
「なぬっ」
じっと見物してられる黒騎士が先に気付いていたらしい。魔道士は忙しいから仕方ない。
「限界は、あると思うけど」
武器や装備を設定しておくと、アイテムボックスから一瞬で取り出せて、装備できる。
専用武器は耐久性が低かった。だが壊れると一度アイテムボックスに戻り、元に戻るのだ。
気にせずにすぐ装備して続けて使っていたら、いつの間にか耐久性が上がっていたらしい。
他の武器を使う時もあるが、ほとんど草苅り鎌で狩っている。強度だけなら、青装備を越えてきているだろう。
武器が改めて必要になった時には、リユキの虹宝箱を使う予定なので、今の所問題はない。
「誰もそんな実験、してないんじゃないか?」
「レアモンスターから、頑張ればいい武器作れるしなー」
やたらと感心した二人は、あっさりボスを倒して戻ってくるレイに、慣れてきたようだ。
「盾があるけど……こんなボスエリアは怖くて無理だな、初心者エリアで試してみる」
「オレは、分解しちゃったわー。専用武器って、初回しかゲットできないよな?」
「うん」
「はぁ〜……」
6階、7階と来て、8階でちょっと休憩した。トータル4時間だ。さすがに長いため、テントを出していったんログアウトする事になった。
「おやつ」
今日はあんみつ。
窓の外は眩しいほど晴れている。暑そうだ。
あんみつは、気にいったらしい。
「……砂糖と、蜂蜜か」
「ん。餡は豆」
「豆……」
まったりおやつで休憩してから、再度ログイン。
連携もだいぶ取れるように。
魔法でしか対抗できない場面は黒魔道士の出番。レベルが高いだけあって、上手い。
黒騎士も、バリアが解けた時だけ気をつければ良いし、実質守るのは二人だけだから、楽なようだ。後衛はほとんど、安全地帯から動かず見てるだけ。
危なくなっても、レイが戻ってくる。間に合わない時は武器だけ投げる。あまりにも鮮やかで、隙がない。
あっという間に最上階にきた。
「フェルメってさあ、ゲームというより、アトラクションぽいよな」
「それな。まぁ、他も似たよーな感じだろ?」
黒魔道士と黒騎士は、余裕でお喋りだ。
「他は知らない」
リユキも杖を下ろした。
最上階だけ、さすがに削るのに時間かかった。シドが特攻しすぎて冷や冷やしたが、レイが上手くフォローしていた。
最後のボスが消えていく。
「勝ったぜー!」
「……」
黒い宝箱が全員のアイテムボックスに送られる。
最後、塔の壁が透明になり、暗かった荒野に明かりが差した。
見晴らしの良い景色を眺め、一瞬後に1階に戻った。
「お」
「う?」
ポーン、と音が鳴り、文字が走る。
「おめでとうございます! 悪魔の塔を、最速討伐更新しましたー!」
塔の情報欄に、かかった時間とパーティーの名前が上書きされた。
全員、職業名だが。
「おー、ここにも薬師の足跡が……」
「……」
トップクランのキャラ名を、上書きしてしまった事に気付いて、ちょっと冷や汗が出た黒魔道士と黒騎士。
黒魔道士がリターンを使えたので、レインパレスまで一気に戻って来れた。
「お疲れ様でした〜」
「ありがとうございました、助かりました」
クリスタルの前で、グループは解散。
疲れた風もなく去って行く三人を見送り、黒魔道士と黒騎士は顔を見合わせた。
「……なんか、今日、半日だけでやたら疲れたわー」
「そうですね。話しても、信じてもらえなさそうなくらい……」
「だよなっ!?」
気が引けて、フレンド申し込みが出来なかった二人だった。
一方で、シド達は。
「えーと、なんだっけ、ドラキュラ伯爵?」
「若い女性の血を吸う、光を浴びると溶けて……十字架とニンニクが嫌いな……十字架わからなかったな。えーと、」
「?」
吸血鬼の説明に苦戦し、結局諦めた。
「説明難しかった、ごめん」
「いや」
「どーする、落ちるよな? 明日は来るか?」
リユキは考え込む。
「明日は……ちょっと無理かな」
「わかった、じゃあまたな!」
シドがログアウトするのを見送ってから、二人も落ちた。
落ちる時、視界に天使族集団が見えたのは偶然。
(……?)
こっちを、見ていた? ような。
ゲームから戻って、レストランへ向かう。
今夜はバイキング。
席について、食べてる時にメールが入った。
何気なく確認して、リュウキは固まった。
知らないけど知ってる相手──ゲーム内では有名人からの、ゲームキャラ宛のメールだった。




