クエスト消化
クエスト一つ目。
『トロールが石切場をうろついているので、退治してください』
石切場で働く住民が困っています。助けますか?
『はい』
石切場は周囲を林に囲まれている。入り口の岩場の陰で、確認。
髪モジャの青い体の巨人が、30体くらいうろつき、あとは頭部が二つあるボスが二体、奥に座っていた。
「雑魚は復活するから、先にボス倒して」
「分かった」
「黒騎士さんは、後衛の守り、お願いしまっす」
「りょ」
「最初に範囲魔法だよな?」
「そうそう、足止め」
不安そうな黒魔道士さんと、不安を顔に出さない黒騎士さん。
「ふふふっ、行くぜっ!」
ヤル気満々のシドが、まず飛び出した。トロール達が反応し、襲ってきたり、岩を投げてきたり。
新しいガントレットはシドにピッタリだったようで、飛んできた岩を破壊したり、トロールの拳を打ち返したり。
遅れてレイが後を追う。
シドが最初に引き付けて、その間にレイがボスを倒す。最近はずっとそのパターン。
「範囲打つ!」
黒魔道士が杖を構え、土魔法の範囲攻撃を放つ。二人は同時にジャンプした。
普通のトロールが泥沼に足を取られた隙に、最奥のボスまでたどり着く。
シドは拳を、レイは鎌を、二つの頭部に叩き込む。シドの打撃は頭にヒビを入れ、レイの鎌は眼をえぐった。
暴れるボスから離れたシドとは逆に、レイは攻撃する。ちゃんと攻撃は通っている。
「はあっ!? それ武器かっ? 色々おかしいだろっ?」
黒魔道士は再び混乱。
「……まさか、専用武器か」
黒騎士は、驚いてはいてもバカにしないで、感心している。
騎士の後ろで、リユキはじっと全員のゲージを見張る。
「赤くなったら、範囲攻撃くるので、ガードお願いします」
「任せろ」
バリアにも限度があって、上級ボスの攻撃では解ける。盾職が一人でもいれば、安心してバリアを張り直せる。
黒魔道士は、さすが上級者なだけあって、表情とは別にきちんと魔法を放っていた。定期的に泥沼を産み、雑魚が二人の方に行かないようにしている。
シドがもう一体のボスの注意を引いている間に、レイが一体目を仕留めた。
範囲攻撃が来る。
赤いエリア内は、避けようと関係なく、一定のダメージは受ける。すかさず回復魔法を全員に飛ばし、騎士の後ろで待機。
残ったボスも倒して、雑魚を片付けて、クエストは終了した。
かかった時間は20分くらい。
「お疲れ様〜! じゃあ次〜」
シドは元気だ。サクサク歩き出す。
「吸血鬼城は、あっちか」
やはり盾職がいると安全だ。無事終わりホッとしつつ、リユキも後に続く。
「吸血鬼、というのは?」
全然、疲れてなさそうなレイは、疑問を口にした。
「後で」
三人の後に、黒騎士と黒魔道士が続く。まるで、何かに化かされたような気分で。
「専用武器か、盲点だった……」
「ウソだろ……普通、二時間かかるクエストだぞ? なんだあの薬師」
トロールの石場の先に荒野が拡がり、その先にいかにも怪しい森がある。
道なりに歩いて行けば、美しいお姉さんが夜道に倒れていた。
エリアが変わり、夜になったためと。
「娘が! 娘が吸血鬼に噛まれて……どうかお助けを……っ」
すがりつく家族が、いきなりクエスト依頼をしてくる。
クエスト二つめ。
『吸血鬼に噛まれた娘を助けよう』吸血鬼城の掃討を頼まれました。
受けますか?
シドが全員を振り返り、皆が頷くのを待つ。
『はい』
森の中もちょっと厄介なモンスターが出る。吸血犬の群れだ。
サクサク倒して森を抜ければ、いかにもな怪しい西洋風のお城が。
コウモリが飛び交い、襲ってくる中、急いで城に走り込む。
赤や青の照明が点滅し、椅子やロウソクが独りでに動き、壁に飾られた絵画の肖像画が、生きているかのように笑う。
「どっちかってゆーと、お化け屋敷だよなー」
「肝試しコースらしいぞ」
シドのつぶやきに答えたのは黒魔道士。とりあえず、クエストに集中してくれるようだ。いつの間にか、先頭を歩いていた。
「あ、ここは」
「迷路だろ? 何回も来たから覚えてる。任せろ」
「おー」
拍手。
シドもリユキも攻略済みだし、一度クリアすると、マイ地図にルートが表示されるのだが──空気を読んだ。
城のモンスターもサクサク倒して、到着したのは天井の高い謁見の間。
置かれているのは玉座でなく、巨大な棺桶。
『何者だ……我の眠りを邪魔するのは……』
すうっと、黒魔道士が息を吸い込む。
「正体はバレているぞ! 吸血鬼の王よ! 邪悪な存在は俺達が退治する! 覚悟しろ!」
『なっ、なにぃ!!』
本人はノリノリだが、このセリフは城内に隠された宝箱に書いてあり、その通りに言わないと入り口に戻される仕様だ。
ちょっとした嫌がらせだろうか。
とにかく、黒魔道士のお陰でスムーズにボス戦が開始。
配下の吸血鬼達と、多数のコウモリ、吸血鬼犬が襲い掛かる。
謁見の間は隠れる場所がないため、リユキは黒騎士の背後で守られつつ、攻撃組みのゲージを維持。
黒魔道士も騎士の真横で雑魚に攻撃魔法を放ちつつ、危なくなったらバリア内に。
「……回復特化便利だなー」
「壊れやすいけど」
「いやいや」
ボスの断末魔が響くのをチラリと見て、飽きれたように笑う。
「マジで火力だな。見てても信じられん」
「火力あると、楽だ。盾としてはすごい楽」
「あ、最後に火の魔法」
「おっけー」
吸血鬼王が倒れ、バラバラになる。すかさず黒魔道士が、範囲攻撃の火魔法を放つ。
今度こそ、吸血鬼王を退治。
最後に火の魔法で焼かないと駄目なのだ。復活して、増える厄介さ。
『クエストをクリアしました!』
さすがにちょっと時間はかかった。1時間と少し。それでもだいぶ早い。
「おっし! 次々〜! ダンジョン!」
「や、ちょっと休憩しません?」
「休憩しよーぜ、さすがに!」
騎士と魔道士がシドを止める。
キャンプセットを買えたので、テントでいったん休憩となった。




