イベント二日目
「けっきょく、武器にしたぜ! ガントレット出た!」
「私は装備にしたよー」
「私も……」
朝から、シドのマイホームにお邪魔すると、すでにアニーとメメも集まっていた。
お互いに、宝箱から出た虹武器と、装備の話で盛り上がっている。楽しそうでなにより。
「二人は、何を選んだの?」
「……えっと。まだ開けてない」
普通に話しかけてくるアニーに、リユキが答える。
考えている事があり、自分では使わずに、レイかシドに譲るつもりなのだ。
「……イベントは、どうする?」
皆、ポイント数は確認したはずだ。もう十分なため、途中で止めても問題がない。
というか、これ以上稼いでも……地道にやっているプレイヤーに悪い気がしてくる。
シドに情報公開を頼んだが、あまり検証はできていないようだった。
まず、薬師の職業のプレイヤーがほとんどいない。
回復は白魔法があるし、薬関連はショップで安く買える。わざわざ作る暇人はいないようだ。
インできるキャラは、いちプレイヤーに対しいちキャラクターのみで、初期で作り直すかしかない。
錬金術士の職業もあり、一応調合はできるらしいが、どちらかというと金属専門で、すり鉢ではなく錬金布を使う。
一晩では何も分からなかったらしく、チャット欄はひとまず、落ち着きを取り戻した。
「イベントはお昼までやりたいかなー? ポイントを、色々交換できるみたい」
「うんうん」
「アイテムか」
取得ポイントは、それぞれ職業ごとに、アイテムやスキルと交換できるようになっていた。
それなら確かに、無駄にはならない。
「じゃあ、引き続き……やるか!」
全員うなずいたので、イベント島に移動した。
昨日の浜辺だ。バリアをすぐに張り、シドとレイ以外は安全圏にこもったが。
「……トンボ、いない?」
「あっ、ぜんぶ、倒しちゃったから?」
「……という事は」
海を見る。
ワラワラと魚が寄ってくるが、さすがに陸地には来れないらしい。波打ち際でピチピチ跳ねている。
「……潜るか」
昨日作ってもらったばかりのバックルを装備して、海に進んだ。
なお、パーティーは全員が100メートル内にいないと、グループ機能が外される事がある。
なので、全員で海に向かう。
動きずらいかと懸念したが、新しい装備と、アクセサリーのお陰でわりと動けるようだ。
深海に近い魚の方がポイントが高く、浅い場所の魚はポイントが低いらしい。
なお、海ボスは移動タイプらしく、なかなか補足できないらしい。
「クジラらしいよー」
「近付くと、ぱっくんされる」
海の中では、魔法攻撃の威力が落ちるらしく、物理推奨。
バリアは海中でも張れる。ただ、波に流されやすいので、泳ぐかまたは──。
「……重い」
やっと天使族の翼の出番。杖で片手が塞がれているため、手の代わりだ。
泳ぎながら待機になるため、アニーとメメは生産不可。
雑談しながら、のんびりと、シドとレイの狩りを見物。
「専用武器かー、今まで使ってる人、見たことないんだよね」
アニーは、針を出して考え込む。
「……うん」
メメも、つられてカナヅチを取り出す。
白魔道士の専用武器は、そのまま杖なため、悩む事はなかった。
専用武器が使えなくとも、基本武器は使えるのだ。一番利用されるのは、やはり剣か、杖か。
悩んだり、波に流されそうになったり、ボスの魚影を遠くに見かけて慌てて逃げたり。
そろそろお昼と、ログアウトするため陸地の方に移動しはじめた時。
ソレは現れた。
海中なのに異様に素早い。
「!」
「なんだっ!?」
つるっとした長い多足。吸盤。ぶしゅうと撒かれた墨……。
「っ?」
避ける間もなかった。
背中を撫でられた。
(あ)
長い多足の一本が、ひらっとした何かを掴んですり抜け、海中に消えていく。
見下ろすと、水着の上がなくなって──。
「……!?」
バリアがあるのに。
同時に発生したらしく、世界チャットが悲鳴で埋まった。
『おおっと〜! こんな時に泥棒が出たみたいですねっ! 早く追いかけて〜!』
ワザとなのだろう。ナレーションが煽るように笑み声で告げる。
『なお、最初に泥棒を捕まえたプレイヤーに、水着を奪われたプレイヤーのポイント半分、譲渡されちゃうよ〜っ? 頑張って捕まえてねっ?』
読めない速さでチャット欄が流れる、流れる。
下克上ボーナスは、たまにこうして爆弾投下される。なかなかに鬼畜仕様だ。
呆然と固まっているリユキを、慌ててアニー達が自分達の体で隠したのを横目に、レイは飛び出した。




