僕とスーパーと先見の明
学校帰りに昼食に弁当でも買おうかと僕はスーパーを訪れた。
本当はラーメンでも食べに行きたかったのだが友達の都合が合わなかったのだ。近場のラーメン屋が潰れてしまっていることも災いだった。彼さえ息災ならと別れを惜しんで見た。
……僕の話はどうも脱線しがちでいけない。スーパーの話に戻るとしよう。僕が用があるのは左手の惣菜や弁当の売り場のはずなのについ右側から回ってしまうのはスーパーの魔力だろうか? いや、レジを挟んだ向かい側にあるから遠いだけと言えばそこまでだが。
生鮮食品には何の用事もない。などと言いながら一本50円の缶コーヒーを掴む。生鮮食品の近場に置いてあったが加工品なので許して欲しい。好きな銘柄ではないが別段悪くもないので飲み物はこれに決めた。
途中でジャムパンを見掛けて手を伸ばしかけたが初志貫徹し弁当のほうへ向かう。
一目見た感想は、なんじゃこりゃ? だった。
値段は変わらないのにコンビニ弁当の方が美味そうだ。これだから大型量販店は。勝手に売れると怠けて努力することをしないから小売店に敗北するんだ、と日本経済を勝手にうれいてみた。
しかし弁当類はほんとにパッとしない。一瞬だけ一本50円の焼き鳥に目を奪われかけたが温める手間を考えて泣く泣く別れを告げて見た。そういえば彼らは売れ残って廃棄されるのが幸福なのか赤外線の照射により水分子を沸騰させられ胃に納まるのが幸福なのか、既に原材料は生命を絶たれているしどっちにしろ最終的には灰になり土にでも還るのだからどっちでもいいかと日和見しておいた。
お、これにしよう。お好み焼きと焼きそばのセット。レジは目の前だがふとチョコレートが食べたくなってレジのお姉さんが身構える前に左折する。目の前に広がった世界は酒の売り場だった。店員さんが品物を揃えていた。少し、気まずい。
スナック菓子を1つ掴んでレジに通す。はたして30秒前にチョコレートを所望していた僕はどこへ行ったのだろうか。
「お箸は入り用ですか?」
と、女性にしては身長の高い店員さんが訊ねて来た。あれ? 僕ってたしか180ちょっと足りないぐらいはあるよな? ヒールでも履いてるのか? 仕事中に……?
いかん、寄り道し過ぎた。本題に戻ろう。制服姿の僕の何処を見ればお箸は入り用でないんだろうか? 底意地の悪いことを考えながらも口から出たのは至って平凡な「はい」と愛想笑いだった。残念。貰った袋と学生鞄を抱え直して僕はスーパーを出た。軽く周囲を見渡して学校のやつらが居ないか確かめる。どうやら杞憂らしくベンチを1人で2人分ほど占有しているおばさんから更に2人分、おばさん換算では1人分のあいだを開けてベンチに腰掛ける。喉が渇いていたが僕はコーヒーよりも先に弁当に手をかけた。コーヒーに手をつけるとそのまま飲み干してしまい弁当を食べたあとで苦しむ公算が高いからだ。先を見通すのは重要な力である。
先がわからないから人間って宗教だとかにハマったりする訳だからね。
人間は死ぬ。それは回避不能だ。なのに嘆くし怒るし悲しむ。そんなことはわかってる、なんて言ってるやつは悟りきった賢人のフリをした愚者だ。
死は重い。だからこそとりあえず価値がある。なんて、自身の真実を誰かに押し付けてみる。世界は誰かと同じではないのだ。
僕が美味い以外の何かであると感じる焼きそばとお好み焼きを美味いと胃に納まる人間も居るように。
……よく弁当の話からここまで飛躍させたなぁ
意味なしおちなしくだらなし
月島 麻痺るでしたm(_ _)m