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8話 三下相手に時間をかけるものではない。

途端、勢いよく飛び込んで来る呪たち。

大丈夫、後ろに二人の守護守さまが控えている。大丈夫。

距離が半分も詰められないところで、呪たちは粒子になって霧散していく。

さらさら砂のような黒い光の粒子になって。

呪いが浄化されてる。

術式を浄化だけに特化して攻撃の形をとらない、まずは壁を作ってそこに飛び込んだ呪が浄化されるか様子を見たけど問題なさそうだ。


「よし…!」

「調子にのるな、俺の力だぞ」

「はい、ありがとうございます」

「災厄……結稀さんをもう少し労って差し上げたらどうなんです」

「その必要があるか?」

「…貴方…」


引っ切りなしにきていた呪がいったんとまる。

控えていた呪たちが後ろに下がっていく。


「上だ」


固有結界の天井に呪たちが集まろうとしていた。

真上や真下を狙うのは常套手段。

結界を破るには大体そのあたりが狙われる。

結界にも弱い部分がある…足元か天井か。


「―」


形ある浄化を実行…光の雨を降らせる。

雨にうたれた呪は同じように粒子になって消えていく。

数が多すぎるけど、力を貸してもらってるおかげでなんとかこなしていけてる。

これなら神器と術式を同時に使う方法をとってもいいかもしれない。


「…まどろっこしい」

「え?」

「結稀、少し控えていろ」

「はい?」


すいと私の前に出てきた神様は仁王立ちして呪達の目の前に立つ。

湧き出る呪。

さらに数を増やして彼めがけ飛び込んでくる。


「三下相手に時間をかけるものではない」


背後からの突風。

彼と彼女の力のおかげで、その場に立つこともその様子を見ることができた。

そうでなければこんな嵐のような風の中立っていられない。

風は呪たち全てを巻き込み、消し飛ばしていく。

視界に入っていた呪は軒並み消えていった。


彼の力のほんの一部とはいえ、これほどとは…。

災厄の守護守である彼は守護守の中でも少し特殊だ。

災厄という大きなくくりを守護してるが故、天候などの厄災、人為によっておこる災害、人が生み出した妖や怪物…それらに伴う恐怖という概念…どちらかというと呪に近いものですら彼の守護の管轄だ。

彼は守護守の中でも割と浮いている…まぁその性質もあるけど、存在自体が特殊だし、その分持っている力も尋常じゃない。

私はその守護守さまと言葉による契約をし、彼の力がより発揮できるような固有結界を作った。

力を発揮できる要件がある程度揃っているとはいえ、彼の力は私達の想像を超えている。

この守護守さまに呪をかけようなどと、どうして姉兄は考えたのだろう。


「つまらんな」


一瞬で終わってしまったからか、鼻を鳴らして風をおさめる。


「すごい…」

「結稀さん」


後ろにいたさくらさんに呼ばれて後ろを向くと、難しい顔をして私を見た。

まだです、と短く言う。


「え」

「ほう、面白い」


やくの言葉に前を向くと、丸い黒い固まりが固有結界の奥に見えた。


「…何、あれ」


ぐずぐず蠢いていたものは途端大きくなった。

固有結界の形に添っている。全体から押し広げて結界を壊す気?

それは困る。

この結界内、有利に進められる状況をみすみす逃すわけにはいかない。


「っ!」

「待て、結稀」


巫女術と神器の組み合わせで対抗しようかと考えてすぐにやくからの制される。

次に予想もつかないことを言ってのけた。


「折角だ、奴らの思う壷に嵌ってみようではないか」

「え?!」


あれに飲み込まれろと?

随分自由な発言で彼らしいと言えば彼らしいのかもしれないけど、今回はそれどころじゃないだろう。

あんなのに飲まれたら正気を保っていられない。

呪は他者に浸食するものだ、影響力が高い。


「お前の姉兄はあの奥にいるのだろう?出てくるものを浄化しつくすまで今のお前では時間がかかる。ならさっさと大元に行くのが都合がいい」


確かにやくの言う通り、黒い人型を浄化し続ける消耗戦は時間がかかる。

守護守さまの力を借りていれば長くやれることは確かだけど不毛といえば不毛だ。

様子を見ながら考えようとしてたのは私の落ち度だけど、だからといってあの呪の中に飛び込むのはなかなか考えないだろう。


「さ、さくらさん…」


助け舟を求めるも、さくらさんは眉を八の字にして首を振った。


「止めても無駄でしょう」

「…ですよね」


私と彼女の話し合いはよそに彼は盛り上がりをみせていた。


「さぁやってみろ」


すがすがしいぐらい私達への気遣いなし。

この守護守はいつだって自由だ。

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