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36話 器巫女と守護守

「あの…話戻していいですか?」

「えー、もう少しお話してたいわ」

「いやもう答えてますので…」

「つまらないじゃない」


私はやくを好きかどうか応えるために来たんじゃない。

今は器巫女と守護守についてだ。


「あの…呪のない世界で…でもやくも消えない方法は、ないんでしょうか…」

「んん、最近似たようなことをきいてきた巫女がいたわね」

「え?」

「双子と夫婦だったかしら」


それは間違いなく姉兄と祖父母ではないだろうか。

祖父母は確実にここに来てただろうけど、まさか姉兄も来てただなんて。


「卑弥呼さまへ伺ったのはたぶん私の姉兄と祖父母です」

「そうなの…あぁ、だから」


急に得たりといった具合に手を叩く卑弥呼さま。

だから双子はあんなこと私に頼んだのねと独り言を盛大に仰る。

それを見てやくが呆れたように溜息を吐きながら、私を見下ろして言った。


「結稀、この際だ教えてやろう」

「ん?」

「これが結界内で俺の認識を歪めた張本人だ」

「え?!」


そうそう頼まれたのーと、私を見る卑弥呼さまはにこにこ笑っている。

笑うところではない…あの時、姉兄の生み出す呪の人型は私を追い詰めていたし、見えない攻撃でやくとさくらさんを襲っていた。

頼まれたというのはどういうことか。

卑弥呼さまにとって結界内で私が死のうが守護守が消滅しようが関係ないということなの…守護守であるやくとさくらさんは力の一部だけだから完全消滅することはないのだろうけど…それにしたって軽く引き受ける内容じゃない。


「今の俺に介入出来るのはこいつぐらいしかいないからな」

「そうなの…」

「大方、お前の姉兄はここへ行く為の道筋を見せたかったのだろう。時間稼ぎの為に俺をどうにかしたかっただけだ」

「そう…」


軽く了承した卑弥呼さまにも一言言いたいところではあるけど、姉兄は自身が呪に飲まれ私の元に来ることを知っていたということが分かってしまった。

呪に飲まれてしまった後に卑弥呼さまに頼みに行くと、祖父母にここに来ることが知られてしまうわけだし、祖父母の意思でここに連れてくることはないだろう。

とすれば、姉兄は自分たちの未来を覚悟した上で卑弥呼さまに頼んだということになる。

祖父母も同じだ…恐山で聴いた話では分かった上で行動している。

強い力を持ち、未来まである程度見えてただろう巫女が、どうして呪に飲まれることを是とするのか。


「あの…姉兄と祖父母は何を卑弥呼さまに求めていたんでしょうか?」


祖父母はここに来たことでやることが明確になったと言っていた。

それが卑弥呼さまからきいた器巫女と守護守の循環に関係してることは明らかだろう。


「双子は器制度をなくしたい、夫婦は争いのない世を作りたい、だったかしら」

「卑弥呼さまはなんて…」

「ん?そうね…どちらにも貴方に話したように器巫女と守護守について教えて、その上でこの子が呪を消さない限り難しい事を伝えたかしら。夫婦は器巫女と守護守について詳しかったから、あまり話す必要なかったけど」


だから祖父母は災厄の守護守をどうにかすればと言っていたのか…祖父母が望むことは結果として姉兄が問いに来たところに繋がる。

どちらも器巫女と守護守の関係を終えたい。


「やく」

「なんだ」

「やくのとこに姉さんと兄さんはきたの?」

「いや」

「祖父母は?」

「奴らは来たな」


その時はまだ呪に塗れていなかった。

争いをなくすために、器巫女と守護守の制度をなくす。

そのために呪を根本から消滅したいと。


「やくは?どう応えたの?」

「俺は俺のやりたいようにやる、とな」


今のこの時を考えれば、やくと祖父母の関係が破綻したのはわかりきっている。

けどそもそもやくはなんで呪を根絶しないのか。

神託を受け、新しい認識によって守護守という存在にまでなった、彼が好きな自由はない。

それなら呪をさっさと消し去り、人でも新しい存在にでもなって世界を堪能すればいいはずなのに。


「その問いに応える気はない」

「…まだ何も言ってないんだけど」

「はっ、大方呪を何故消さないとでも言うのだろう」

「…ぐ…」

「そのぐらい、ない頭で考えろ」


ひどいものだ。

やくが何も語る気がないなら、祖父母や姉兄に聴いておけばよかった。

姉兄も敢えて言わなかったと言っていたし、祖父母は卑弥呼さまが詳しく知っているとまで言っていたのに。


「あれ?」

「どうした」


姉兄は祖父母から器の話を聞いたならわかる。

けど祖父母は?

何をきっかけに知ることができる?

巫女の本部から箝口令が敷かれる器巫女と守護守のことを簡単に知ることが出来るのだろうか。


「やくもさくらさんも巫女だった頃の祖父母を知ってますよね?」

「それがどうした」

「身近な人で器になった巫女がいたんですか?」


私の問いに対し、やくは眉を寄せ無言、代わりにさくらさんがはっきり応えてくれた。


「いいえ」

「……祖父母はどこで器巫女と守護守のことを知ったんですか?」


箝口令が敷かれるほど重要な内容なら、機密情報として本部が管理を徹底してるだろう。

管理者はある程度知らされてても、日常での発言が制限されるのは明らか。

では祖父母はどこでそれを知ったのか。

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