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32話 邪馬台国。

「そもそも卑弥呼さまって生きてないですよね?」

「西暦245年頃亡くなったとされています」

「…となると、邪馬台国に行ってそこに残された文献を見てくればいいんですかね」


学びの中で邪馬台国には公にしない巫女についての文献や文化財があるとは聞いていた。

邪馬台国には強力な力が残っていて、そこに存在してるだけで人に多大な影響をもたらすからともされている。

だから邪馬台国はどこにあるかわからないように表立たないようにしているとも。


「地下に潜りますか」

「………」


先人の巫女たちの手によって地下深くに邪馬台国ごと隠されている。

人は住んでいないし、特別な巫女が管理してるわけでもない。

巫女のほとんどが邪馬台国への行き方を知らないし入ることを許されない。

おそらく巫女の中でも最たる長しか今は入れないだろう。


さておき。

邪馬台国へ行くことを了承したにも関わらず、やくは終始無言で不機嫌を呈している。

さっきの沈静の守護守さまとの掛け合いは沈静の守護守さまが一緒に来ないことで和らいだはずだから、これはまさしく邪馬台国へ行くことが嫌だと言うことだと思う。

邪馬台国の何が嫌なのか…戦うことがなさそうだから?巫女も守護守さまもいなさそうだしな。


「行くけど…いい?」

「……あぁ」

「さくらさんも?」

「はい」


黄泉國への道と同じように、邪馬台国にも入り口がある。

そして地下深く入っていく。

躊躇いなく入ったけど、ここ最近は本当巫女としての禁止事項を存分に破っているな…邪馬台国だって入り口ですら知ることもなく、知ってても入ってはいけない場所だし。

でももう決めたことだ。

進むしかない。


「ん?」


歩く感覚が違って足元を見ると、踏み出した片足だけ綺麗にへこんでいる。

足を中心に円状に文字が浮かぶ。


「あ…」


ほとんどの巫女が踏み込めないというのであれば、当然侵入者防止の何某かを施してておかしくない。

今の今までひりついた戦闘しかしてなかったからか、気が緩んでいたと言えばもうそれは言い訳だろう。


「ご、ごめん…」


2人を順繰りに見て謝る。

いかにも残念な顔をしてるやくと困り果てたさくらさんを最後に光に包まれる。

眩しくて瞳を閉じた。


「あれ?」


そして次に目を開けるとそこは自然あふれる山奥。

見覚えのある場所だ。

大きな城のような建築物はないけど、清流と湿地帯、傍には小さな社がある。

奥を見れば、渓谷の入り口のようなものも見える。

左手側には木々の合間から泉も。

湿地帯にはそこかしこに透明で綺麗な水の溜り場が転々としていて、そこに太陽の光が降り注ぎ反射し、同時に空の青色を映して輝いている。

間違いない。


「結界…」

「何を言っている」

「え…」

「結界ではないようです。幻術なのは確かですが」


幻術で姉兄の結界を見せることに何か意味があるのだろうか。

それよりも、守護守さま2人が知らなそうな態度をとっていることの方が気になる。


「覚えてないですか?」

「何の事だ」

「記憶の限りでは結稀さんとこちらに来たことはないかと」

「…え?」


嘘をついてるわけじゃなさそうだった。


「あの、姉と兄の結界の中に入った時の話ですが、覚えてます?」

「…成程」

「え?」

「…そうでしたか」

「え?」


私の一言で2人が納得した。

けど私にはさっぱりなので、説明を求めると面白い内容で返ってきた。


「認識を歪められていた為、私達にお姉様とお兄様の結界内での記憶はほぼありません」

「そうなんですか」

「精々黒い人型と力半分で戦った事ぐらいでしょうか」

「やくも?」

「お前を結界内から出したやった事は覚えているが…他は知らんな」

「…そう」


余程特殊な結界だったのか。

守護守の認識を歪め記憶すら奪い、力の使用すら半減させていた。


「あの時、私達は結界内に取り込まれていなかったようなものです」

「え?どういうことですか?」


守護守を完全に結界内に取り込めば、認識は歪められない。

それこそ管理者クラスのほんの一握りしか出来ないだろうと言われているそうだ。


あの時、姉兄は私だけを結界内に閉じ込めた。

けれど2人の守護守と契約をしていた為、その結びつきが原因で守護守のほんの一部の力が一緒に結界内に取り込まれた。

ほんの一部であれば、認識を歪め力を落とすことも可能。

本体は結界の外側にいる。

やくから見れば契約した途端、姿を消され繋がりも見えなくなった…程なくして繋がりが見えたから、そこから結界を壊すことが出来たと…結界の外にいたやくが私を結界から出してくれた流れはそこにあるのか。


「お前の姉兄の結界はこの情景そのままなのか」

「うん、ほとんど。城がなかったぐらいで……ん?」


城のあるべき場所は大きな大木。

違うのは唯一そこだけど…真っ先に思い出したのは三条の洞窟で会った姉と兄の記憶だった。

私達が見せたこと覚えていてと、後で役に立つと言っていた。

今目の前にしているのがそのことだとしたら。


「…城のあった場所に邪馬台国がある?」

「結稀さん?」


けど大木の元に行ってもそれで出てくるわけではないだろう。

そこに存在しているのなら、見えてる幻術を解いて正しい道のりを出現させるのが先だ。


「そしたら…」


私は姉兄の結界の中で、やくに助けを求めた。

彼を思い出したのは小さな社の前だ。

社を目の前にしてよくよく見ても特殊な術式が組み込まれてる形跡はない。

けど、ここだ。この社が鍵だ。


「……」


可能性があるのは祝詞と舞か…物理的に壊したら悪化しそうなのは目に見えている。

あの結界の中で姉兄は何を見せてくれた…?

私は呪から逃げていた…出口はトンネルじゃなかった。

この社の前に来て、自分の名前と彼が災厄の守護守だと思い出した。

あの時、この湿地帯は夕陽で照らされ、社も夕陽を浴びて橙に染まっていた。

夕陽…太陽の光。


「光だ」

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