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3話 思い出す。貴方を呼ぶ。

「え?!」

「ほう」

「なかなかです…」


胸を裂かれた?あの人型がやった?

黒い人型は距離をとっている。

遠距離中距離の攻撃はなかったはずなのに。

人型も見えない攻撃をしたというの?


「…成程、謀られていたか」

「そのようで」

「この俺を謀らろうなどと、なんと不敬なことか……おい」

「え?」


手首を取られる。

触れられたところがじんわり温かい。


「聞け、俺の力をわけてやろう。この世界から出ろ。俺の名を呼べ、結稀」


ゆき…それ、私の名前…?

彼が手を離すと、私の手首には細い金属のブレスレットがあった。

金と黒…彼の色だ。

……今私は何を考えた?

金と黒が彼の色だと思うなんておかしい。

私は彼と初対面のはずだ。


「そういうことですか…ならば私も」


そう言って、彼女も私に近づく。

彼女の手には桜の枝…あれ、そんなもの今まで持っていただろうか。


「貴方を護ります。持って行ってください」

「どこへ…?」

「お前が見つけろ」

「え?!」

「出口があるはずです。彼を呼びだし、この世界から出るしか助かる方法がありません」


すると、二人の背中が裂かれてまた血が飛んだ。

見えない攻撃。

でもそれは黒い人型にやられたものじゃないのがわかる。

他の何かだ。


「行け!」


彼の言葉に頷く。

よくわからないけど、やるべきことはわかる。

ここにい続けても私達は見えない何かと黒い人型に殺される。

だから、ここから出る。

出口を探して彼の力を借りる。

多分これであってる。


「ありがとう!」


私は躊躇わず飛び降りた。

普通に考えたら飛び降りない。

この高さは死んでしまうもの。

けれど不思議なことに私は確信していた。

無事に降りられると。


「…!」


私の思っていた通り、風が強く舞って私は地面と激突しない勢いで降り立てた。

すぐに走る。

後ろから黒い人型が追いかけて来る。

私は二人のように戦える特殊な力はない。

逃げながら出口を探さないと。

このエリアの通行口は一つ、トンネルを抜ければ城下につながる。

ひとまずここを目指す。

湿地帯の水辺が走るたびに音を立てた。


「え?」


私の思惑はかなわなかった。

先に進めなかったから。

透明な何かなのか、木々が風景になっている絵画でも置いてあるのかという形でトンネルは見えるけど先に進めない。


「どうしよう…」


人型に追いつかれる…出口はここじゃないの…?

再度走り出す。

走りながら黒い人型に追いつかれた。

人型は長すぎる腕を振り上げて殴りかかろうとしてきた。

けど、それは届かない。


「桜…」


桜の花が散って私を守っている…見えない力が壁になって攻撃は届かなかった。

これが彼女の力。


「……」


走りつづける。

見たところ、桜の力にも限界がありそうだった。

人型の攻撃を受ける度に桜の花が散る。

全部散ったら終わりだと嫌でもわかる。


「…社」


視界の先に小さく見える社。

そうだここには小さいけど社があった。

そうだ、お寺でもなく神社でもない。

社とは、私にしか分からない場所だ。

ここだと、直感だけどそう思った。

きっとここが正解だと。

少し登った先、木々の間から光が漏れる。

夕暮れが近づいていることをその時知った。

見下ろせば光の梯子が湿地帯の水溜まりに注いで反射している。

彼は彼の名前を呼べといった。


「…っ!」


黒い人型にまた追いつかれ、囲まれる。

桜は後わずか。

思い出さないと。


『俺の名を呼べ、結稀』


…ゆき。

彼の言葉が離れない。

とても懐かしくて、しっくりくる。

結稀。

…そうだ、間違いなく私の名前なんだ。

なんで忘れていたのだろう。

夕暮れ、社も沈む太陽に照らされて光が跳ねて眩しい。


『お願い申し上げます』


「!」


見えた景色に懐かしさを覚える。

泣いていた。

そうだ、あの時私は泣いていた。

泣いて乞うた。

なにも出来ない私には彼の力を頼るしかなかった。


『…どうか私にその御力を授け頂けないでしょうか』


「…あ、ぁ」


結稀……月映結稀…だ。

私の名前…お願いをして、力を頂きたいとあの日…同じように太陽が注がれてる中言った。

あの日は夜明け…朝日が同じように社を照らしていた。


「……そうだ」


『俺の名を呼べ、結稀』


ついに桜の花が散り、枝が砕けて、やっと思い出せた。


「……」


彼の名前、見えない存在。


「応えて…災厄の守護守…!」


守護守さま、どうか私に力をください。

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