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22話 結稀、粛清対象になる。

私は姉兄によって意図的に私の血筋について知らないまま育った。

器だったのもある。

隠していたことを謝罪され、行くべき地を教えてもらう。

祖父母を知ることができれば、またの強襲に迎え撃つことができるだろうか。


「大丈夫、結稀はこれからどんどん強くなるから」

「…うん」


独りで戻る時がきた。

光を受け入れ身体が光っていた。


「行くね」


二人が笑顔で頷く。

さらに眩しく光り、一度目を閉じて開けば水面が見えた。


「っ!」


眩しさとは打って変わり、薄暗い洞窟の中に戻る。

水面に顔を出して、すぐに視界に入ったのは二人の守護守さまだった。


「終わったか」

「…うん」


中からあがると不思議と濡れていなかった。

この泉が特殊なものだからか、けれど手で再度触れてみればきちんと濡れる…不思議。


「行こう」

「あぁ」

「はい」


満足そうに二人が微笑む。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


「結稀」


どうするのかと聞かれ、私はこの地の管轄地である神社を目指した。

そこまで遠くはないし、守護守さまもいるから巫女術で移動する。

高地に位置するこの地の管轄神社は高い木々に囲まれ守られている。


叔母さまも配慮してくれているし、念のためご挨拶してから1度富士に帰ろうか…そこからまた祖父母のことを知る為に行動の許可を得た方がいい…さすがに姉兄のことを知る為に出たことを叔母様がどうにかしてくれてたとしても、祖父母の件は範囲外に違いないから。


神社結界の外に降り立ち、そこから徒歩で進むことにした。

きちんと結界内に入ったことがわかった方が管理者にもいいだろう、話もしやすい。

と、少し歩いたところに道を阻む二つの人影がみえた。

さらに近づけば巫女だとわかる…対処が早い。

恐らく使者だろう巫女の二人に話をして管理者への面会を試みてみよう。


「あの、」

「月映結稀と災厄の守護守さま?」

「あ、そうですが…」


二人の男女。

見たところ姉兄と同じくらいの年齢…どことなく剣呑な雰囲気を纏っている…やはり洞窟よりも先にここに挨拶にいくべきだった。

挨拶もなしに勝手に練度錬成の場に入ったし、順番としてはこの地の管理者に許可を得てからだ。

てか、隣のさくらさん無視なの。

隣を見やるけど困っている様子でもなく気分を害した様子もない…さすがさくらさん。


「間違いないようだ」

「えぇ、謹慎の命を破って逃亡を計ったのは」

「え?!」


確かに富士の結界内に留まるよう命じられ、それを破ってまでしてここに来ているけど、それはもう話が通じてるものじゃないの。


「あの…富士の管理巫女、鏑木美智子から話がありませんでした?」

「何を言っている?」

「……え、あ、話がないようでしたら再度説明しますが」

「必要はないわ」

「え?」

「粛清対象だ」

「動けなくして富士へ連れればいいわね」

「げ」


なにをどうしてそうなるのか。

せめて説明を初めからさせてもらった上で、叔母と話をしてくれれば今の状態からは脱せる。

確かに富士の結界内に留まらなければいけなかったのを出たのは事実だし、傍から見れば逃亡しているように見えるだろうけど、せめてこの地の管理者様に面会させてくれてもいいと思う…なんだろう、少し強引な気もする。

叔母の計らいであることを知っててほしいところだけど、知ってて知らない振りしてるようでもない。

行き違いにしてはお粗末な展開。


「叔母さま…責任とるって言ったのに…」

「よいではないか」

「え?」

「お前にあの二人は賄えないだろう?俺も行こう」


戦いたいだけじゃないか、この人。

なるたけ争いは避けたいのだけど…人が死ぬ可能性もそうだけど、私達が逃亡者みたいな立ち位置にいるなら諍いは避けたい。

いつ叔母から話が入り、それがここに到達するか分からないのに。


「穏便に済む方法は…」

「なにを言っている。奴らはやる気だぞ?」

「え、出来れば話し合いに持ち込みたい…」

「あちらの結界内に取り込まれてる時点でそれは難しいかと」

「え!?」


さくらさんが困った顔をしている。

やくは楽しそうだ。

いつの間にか相手が結界を展開していたのは驚きだった…気付かなかった。

相手の雰囲気から見て取れていたから穏便には難しいかとは感じていたけど。


「では俺はそこの守護守を頂こう」

「はい?」


守護守さまいた?と思ったら、すっと二人の巫女の前に前に現れた。

見た目私より年下の若い女の子で不服そうにこちらを見ている。

あの子とやくが争うとなると見た目がよくない気もする…まぁ守護守さまは何百年何千年の時を過ごしてるわけなんだけど。


「やく、話し合いに持っていきたいんだけど」

「息の根を止めなければいいという事だな」

「…だ、大丈夫よね?」


誰に聞いていると機嫌よく笑う。

うーん、守護守さま一人いなくなります、的なことにはならないと思うけど…沈静の守護守さまとは状況がちがう。


「結稀さん」


さくらさんに呼ばれて視線を相手側に向ければ、あちらはもう臨戦態勢だ。


「やらなきゃか…」


休む暇もないとはこのこと…私今年厄年じゃないんだけどな…。

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