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19話 対 鏑木美智子 前編

刀を持つ叔母に対し、私は薙刀。

近接戦にも対応できるけど、理由もわからないまま鋭い刃で切られるのも切るのも嫌だった。


おそらく叔母の持つあの刀は富士山の加護の元、結界管理者にしか扱えないその昔この地をおさめていた武将が所持していたとされる破魔の刀だ。

破魔の力を持つこの刀を使い、武将は巫女でないものの多くの呪を浄化しつづけてきた…意識的にではないとはいえ、巫女でない者が浄化を行った例として学んだ記憶がある。

彼の死後、富士を管轄としている桜の守護守が回収し、都度必要な場合に富士の管理者のみ、桜の守護守から許しを得て使用してきた。


対して私は薙刀の舞に使う誰しもが持ち得る薙刀だ。

これが叔母の持つような破魔の力を宿す薙刀なら話は別だろうが、それを持っていようと扱いこなせないのが関の山だろう。


そもそも私が今持つ神器はすべて学びの期間、段階を得て授かるもので、それを持って全国の守護守さまの元へ伺う。

その地その地での契約の折、御贔屓を頂けたり、管理者になったりしない限り破魔の力を持つ強力な神器は手にすることがない。

巫女としての練度の違いも明らか、手に持つ神器も格が違う…この状況、圧倒的に不利だし、なにより私は叔母に切りかかりたくない。

この条件を全部超えて叔母に止まってもらうにはどうしたらいいのか…戦いながら考えていくしかない。


「鏑木美智子」

「……いかがしました、災厄」

「暇だ、俺の相手を出せ」


この状況でよく言う。

叔母は当然のことだが、不快だとばかりに眉根を寄せる。


「致しかねます」

「……俺が誰か理解してる上での答えか」

「はい、重々承知しております」

「はっ」


さすがお前の叔母だなと笑う。

笑いながらもとても怒っているのが見て取れた。

私に流れてくる力の本流にもその気持ちが窺える。

怒りの力は瞬発的な作用はいいけど持久力ないし気分もよくないからあまり頂けないけど仕方ない。

そして怒りは仕方ないとしても、ここは諦めてもらうしかない。


「やく、私にやらせて」

「お前で敵うとでも?」

「敵うための力を貸して」

「言うようになったな」


この場所は大きな結界の中にあるけど、個人が作る結界でないとやくは自由に戦えないだろう。

相手がだせないというのはそこにも理由があるかもしれないが、単純に考えれば人同士の殺し合いに守護守は関わらないということ。

そもそも今の状況は練度錬成の為の模擬戦闘ではない。

直に巫女が殺し合うこの状況を本部管理者が知ったらまた査問に呼びだされる案件だ。


「…こんな所で終わるわけにはいかない」

「そうか」

「契約は続いてるんだよね」

「あぁ」

「手伝って…生きて叔母を止めたい」

「……」


やくには私の生死は重要なところではないだろう。

守護守は巫女と契約をしたとしても、その巫女の生存の有無に左右されない。

今契約している巫女が倒れれば動けないといった一時的なダメージはあるだろうけど、結果存在の消滅には繋がらない。

その特性から行動範囲が限定されている守護守さまの場合は、契約すれば巫女の行くところまで行動範囲が広がるが、災厄という概念としてどこにでも存在し得、どこにでも移動できるやくには関係ない話だ。


だからまあこうして戦いたいだの相手を出せだの自由を謳歌してる節があるのだけど、そこは今は言及しなくていいだろう。

今は目の前の叔母とのことのが大事だ。


「よろしくお願いします」

「…ふん、精々足掻いて俺を楽しませろ」


駆ける。

陰陽道・禹歩(うほ)を使って重力関係なく移動しつつ相手の死角から狙って峰打ちをしたいとこだけど、当然のことながら叔母も同じ速度…それ以上で移動してくる。

一気に距離を詰められ、切られるとこを薙刀の柄で受ける。

受けると同時に言霊。


「うそ…」


目の前で爆ぜる。

待って、自分を巻き込むような戦い方する?

ギリギリでかわしたけど、爆発の煙の中から出たのは傷一つない叔母の姿だった。


「う、わ」


彼女の一歩ですぐ距離を詰められる。

やくの力を使う。

術式に守護守の力を交ぜ、土の壁を作りかつその土は叔母を追う。

襲い掛かる土塊を相手にしてる隙に距離をとった。

最初の場所から動かずにいたやくが私を見下ろして鼻で笑う。


「無様だな」

「もう少し応援してくれても…」


姉兄や祖父母のときはさくらさんの力もあった。

今はやくだけ。

しかも私はやくから授かった力を使いこなせてない…さくらさんの力の供給がなくて初めてわかる。

強すぎる力は扱いにくい…本来なら威力も速さももう1段階上乗せできるはずなのに、それが出来ないのは私の巫女としての練度がそこまでということだ。

単純に力としてはより弱くなっているところに管理者レベルの熟練巫女の相手なんてハードルあがりすぎだと思う。


「速さや力では敵わんぞ」

「わかってる…」


正攻法では勝てない。

浄化対象でないなら神楽鈴も榊の枝も意味をなさないし、かといって破魔矢をひいても刀を出しても変わらないだろう。

やくの力をいかす。

そのうえで叔母に止まってもらう。

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