・・・かな?
怪我してるって解っているのに、この子だけをその場に残して行くのは忍びなく、俺はこの羽根つき鳴き声ワンちゃんチックな子猫ちゃんを抱え、辺りを散策する事にした。
本当ならば、さっきの街に戻った方が良い。
そんなんは解っている。
けど、あっこでは言葉が一切通じないってのも解っている。
そんなんで街に戻ったとしても、きっと何とも成らん。
それに、もしかしたら、この子は本来害獣と見なされている獣の類いなのかもしれない。
俺にとっては、この世界初の癒し系動物では有るのだけど、もし、そういった獣であるのなら、街に連れて行く事自体が仇と成るだろう。
反対に、街に飼い主が居る子という可能性はある。
たとえそうだとして、説明が出来ない俺では飼い主を探すことさえも出来ないんだ。
そんな一か八かなんて賭けはしたくないし、そもそも入街証やお金、はたまた換金できる様な物も持ってない今の俺では街にさえ入れてもらえない。
"ごめんね"と心に思いながら、傷口に出来る限り負担をかけないよう、優しく抱き抱え、うろうろと街を背にして森へと進む。
探すこと数分。
幸いにして、直ぐに小川が見つかった。
流れる水は澄んでいるし、おかしな臭いも無い。
ふと見ると、川辺の一部に水が差し込み出来た浅瀬の水溜まりが有るのに気付く。
猫ちゃんチックな子だから水を嫌う傾向に有るかもしれないし、こういった場が良いだろう。
そこそこな広さも有るし。
そう思いながら、ゆっくり水に近付けると、羽根つき鳴き声ワンちゃんチックな子猫ちゃんは、案の定な態度を見せようとした。
けど、酷く暴れる様な事はなく、俺の手をがっしり前足で抱え込む程度で、俺のやることに身を任せてくれる。
何故にここまで信じてくれたかは解んないけど、そのお陰で傷口は洗い流してやる事は出来た。
本当なら洗い流した後の傷口を舐めない様、襟巻きみたいなんを首に巻いてやりたい。
しかし、そういった気の効いたアイテムを持ち合わせていない。
俺は自分の服を引きちぎり傷口を覆った。
「暫く、そこ、舐めちゃダメだかんね」
通じるはずの無い言葉をかける。
はーあ、自分の事さえ不安な状況なのに、自前の服までおしゃかにして、これから先、いったいどうしたもんかね・・・
今、この子にした事を本当の意味では悔いている訳では無いんだけど、こうして一段落ついてしまうと、実のとこ、此れからの事に不安だらけ。
・・・
「とりあえず次は寝床の確保・・・かな?」