洗い流すしか出来ないだろう。
彼?
なのか?
多分。
確認が出来ないのは・・・
単純に、それほど心を許されてる訳じゃ無いから、解んないだよね。
でもね、よしよしサワサワ触らせてくれるぐらいはOK貰えたらしく、俺のお手ては幸せいっぱい。
と、そこまでは良い流れ。
なのかな?
ま、いいや。
でも・・・
もふもふさわわと触り倒しとった我が右手に、途中から、にゅっとりとした違和感が。
恐る恐る確認・・・
な、なんじゃこりゃー!!!
べっとりとした血でべっちょべちょ。
この子猫ちゃん似、かんなり無理しとったらしく、正面からでは解らなかったんだけど、良く見れば右後ろ足の付け根辺りが、ガクッとえぐれた様に陥没してた。
しかも、全体がもふもふっ毛で覆われていた事もあって、パッと見で気付く事が出来なかったんだ。
だが間違い無く、その部分に大きな怪我が有る。
怪我の部分が毛で覆われ隠れてたのを考えると、多分、ここ最近に出来たものではなく、幾分か前に負ったものなんだろう。
その様子は、俺のかって知ったる一般的な知識で考えるならば、決してあり得ない現象なんだけど、状況を分析するに、怪我をしたところがずーと化膿し続けていて、今尚じゅくじゅくしてるって事なんだと思う。
もしかしたら、この子の当初の警戒は、それが原因だったのかも。
あくまで俺都合な見解やけどね。
「あ・・・ごめん・・・」
言葉が通じるとは思えないのだけど、知らず知らずだったとはいえ、傷口付近を触ってしまっていた俺は、この子に、そう言わざる得ない衝動にかられ、声を掛けた。
「・・・く、く~ん」
俺の言葉を理解しての返事だとは思えないのだけど、投げ掛けた声に反応は示してくれた。
なんだかワンちゃんちっくな鳴き声だったのは気にしない。
キョロキョロキョロ・・・
近くに何ぞ傷口を消毒出来る様な物が無いか見渡す。
しかし残念ながら、これといって役に立ちそうな物が見付からなかった。
俺に異世譚定番な、ステータス看破や無限収納ビックら玉手箱、治癒魔法なんてなもんでもあれば一発KO・・・あ、間違えたOKなんだけど、そんな能力なんて備わって無い。
かといって、この世界に飛ばされ、心が擦りきれてた俺に、初めての安らぎをくれた、この子を見過ごして立ち去るなんて選択も無理。
勿論、薬草になる様な物も解るはずが無いんだから、そこらの草とかを無茶苦茶に傷口へ押し当てるてのももっての他だ。
今はただ、せめて綺麗な水で傷口を洗い流すしか出来ないだろう。