基盤無いやん。
んで、途方にくれトボトボ歩いとったら、目の前の草むらがガサゴソ。
はっ!
ま、まさか・・・
い、嫌な予感がする。
そう思った。
そ、だって俺は、つい最近、弱っちそうな獣らしきもんに、これでもか!ってぐらい追われ、命からがらに逃げ回った挙げ句、遂には追い付かれボコられた弱虫くん。
腕力無ければ逃げ足も無い。
直感が告げる。
ヤバいぞ!
さあ!
どうする!
そうは思いつつも"逃げる"の一択しか持ち合わせて無いんやから、当然にして逃る。
そ、逃げようとした。
後ろへ足を数歩進めた矢先、その草むらから"ピーピー"と、弱々しい鳴き声が聞こえてきたんよ。
恐る恐る近づいた。
うん。
我ながら、よく頑張ったと思う。
そして・・・
もっふん発見!!!
そりは、も~超可愛いの一言しか出てこんぐらい愛らしい子猫ちゃん。
なんか・・・背中に見慣れぬ羽が有るんだけど・・・
子猫ちゃんだよね?
ま、異世界の子だし、そういったのが有っても不思議やないだろう。
たぶん。
俺は、そう自分に言い聞かせ近付く事を決める。
だって、この子、尻尾ぺしゃんに耳ぺったん。
おまけにプルプル震え涙目。
そのくせ背中の羽根は・・・
ま、普通~に見て虚勢張ったはったりやろって思える頑張りだった。
だから近付いた。
一歩足を進めると、子猫ちゃんは"ぴくん"と体を強張らせ、大きな羽で自分の身を覆う様に広げる。
「だ、大丈夫だよ。恐がらなくても、ね?」
そう言いながら子猫ちゃんに触れた。
その瞬間、子猫ちゃんは"ふんふんふしゃー"ってしながら、かぷっと噛み付く。
ただ、それはかなり弱々しい。
「怖くない。ね?怖く無い」
噛みつかれた傷みに耐えながら優しく声を掛ける。
何かの名シーンの様な事をする俺。
うん。
実に絵になら無い。
だって、中身実年齢グフフなおっさんだからさ。
ま、この世界に来た俺の容姿は15、6のそれなり体型だから、端からみられても吐き気は与え無いだろう。
たぶんね。
だって・・・
顔はイケた感じじゃ無いもん。
今の俺は、前世の年より若く、それなり体型とはいえ、素材は言うまでも無くなんやから。
マジへこむわー
と、悲観的に成ってたら、空気を読まない子猫ちゃんは、いつの間にか、かの名シーンの様に、自分が噛み付き傷つけた俺の手を舐め癒してくれてた。
な、なんて良い子なんや!!!
家の子におなり!
ただ、この子の心情の移り変わりを見逃したのは残念。
スッゲー悔やまれる。
・・・・・
あ、今のオイラ、生活基盤無いやん。