5 食事
食事をしながら話そうと言われましたが、私はおいしすぎる食事に夢中になってしまい、恐らくそれを察した彼がまずは食べてからということで、話は後回しになりました。
それにしても、どれもおいしいです。
魔物園では、食べたことのない味、食材、出来立てほやほや!作り立てはおいしいですね!お肉も、こんなに柔らかいものは初めてです!
スープですよね、これ?私がいつも飲んでいるスープは、臭くて冷たくて具がほとんど入っていませんが、このスープは具沢山の真っ白くてドロッとしたスープです。
パンですよね、これ。とっても柔らかいです!それに、あったかい。
「・・・どうした?」
「え?」
「これを使え。」
白い布を渡されました。何でしょうか?
すると、私は自分の視界が悪くなっていることに気づきました。あれ、これは泣いているのでしょうか?痛いとか、辛いということはありませんので、うれし涙というやつですね。
「これで、拭いていいのですか?」
「あぁ。そうやって使うものだ。」
布を受け取って、涙を拭き取ります。
「何をやっている。貸してみろ。」
「え?」
ごしごしと涙を拭いていると、布を彼に奪われました。そして、彼が優しく布を当てて涙を布で吸い取ります。
「こすると、肌が傷つく。目だって、そうだ。」
「も、申し訳ございません。」
「・・・謝らなくていい。こういう時は、礼を言え。」
「・・・ありがとうございます。」
私は彼に笑顔を向けてお礼を言いました。お礼を言う時は、笑顔でと教えられたので。
ですが、彼は笑顔を見て顔を背けました。また、間違えてしまったのですか?
「あの・・・」
「気恥しかっただけだ。さて、泣き止んだのなら食事を再開しよう。」
「はい!」
私はおいしい食事を思い出して、再びおいしいパンをほおばりました。
「おいしかったか?」
「はい!」
「それなら良かった。何が好きなのかわからなかったからいろいろ用意させたが、どれもおいしそうに食べていたな。好き嫌いはないのか?」
「はい!どれも今まで食べたことがないものでしたが、今までの食事と比べようがないほどおいしかったです!」
「・・・そうか。」
お腹がいっぱいになったら、眠くなってきました。ですが、話をしなければならないので、頑張って目を開けます。
「眠そうだな。」
「バレてしまいましたか。」
「今日は、もう寝るといい。部屋は用意した。」
彼がテーブルの上に置いてあるベルを鳴らすと、メイドが入ってきました。
「おやすみ、リリ。」
「・・・おやすみなさい。」
そういえば、彼の名前はなんでしたっけ?
自己紹介をしてもらったのに、もう一度聞くというのは・・・やめておきましょう。