37 学者
私は、まっすぐグレットを見つめました。グレットは、凛々しい表情で発言します。
「認めましょう、リリは人間ではないことを。しかし、彼女はサキュバスなどという、魔物ではありません。思い出してください。なぜ、リリが人間ではないことが明らかになったのか。それは、突如学校の屋上に現れたワイバーンをたった一人で倒したからです。」
「そのようなこと、サキュバスにできるでしょうか?私は魔物についての知識を一般常識程度にしか持っていませんが、サキュバスはいうなれば精神汚染型の魔物。ワイバーンを倒すような、魔物とは違います。」
精神汚染型など、失礼な呼び方ですね。魔物に対しての人間の認識がよくわかります。私もそのようにして人間を見てみましょうか。
嫉妬型、憎悪型、堕落型、停滞型、意外と呼び方が浮かびますね。
ちなみに、マーレイフィ様は嫉妬型です。今でこそ憎悪を向けていますが、彼女は私に嫉妬の感情を向けていましたから。
私は、それを知っていたのでマーレイフィ様に対して、優越感を感じていました。確かに、婚約者という立場を利用して、グレットを独占する彼女に腹は立ちましたが・・・グレットは、彼女に何の感情も持っていないのです。
それがどれだけ、私に優越感を生むか。
話がそれましたね。
それでは、私がサキュバスでないのなら、何の魔物なのかという話になりました。
「それについては、私からお答えすることができません。そもそも、私はリリを魔物とは思っていないのです。」
「いまさら何を・・・」
「不思議な話ではないでしょう?第一、魔物だと思っているのなら、最初に出会ったときに剣の錆にしています。リリは、魔物というには人間のような姿をしていて、人間というには素直過ぎる性格をしています。ですから、人間ではないと、私は認めましょう。」
私がリスフィという魔物であること、使用できるマギについても含めてグレットに話しています。マギは簡単にしか説明していませんが・・・
私がリスフィであるということは知っているので、公にするつもりはないということでしょうか?それとも、魔物を手元に置いていたという認識はない、というアピールのためでしょうか・・・どちらにしろ、私はリスフィであることを話さないようにしなければなりませんね。
マーレイフィ様が台から降りると、次にひげを生やした男が台に上がりました。紹介によると、魔物を研究している学者のようです。この国では、一番魔物に詳しいそうですが、この世界ではないところが微妙なところですね。
私の、リスフィという魔物の知名度がこの世界でどうなのか知りませんが、この学者ではわからないかもしれませんね。
もっと、魔物と戦争をしている場所から近い位置にある国なら、知っている可能性は高いですが、こんな魔物を見ることがない国にいる学者では、知識がたかが知れているでしょう。
私の正体が不明なままでいいとは思いますが、だからと言って逆に見当違いな魔物にされても困りますけどね。わからないで、片付けばいいですが。




