30 先生対先生
「ルーヴィス先生・・・いや、この生徒が、自分のロッカーに演劇部の衣装を隠していてな。しかも、それがひどいありさまになっていたんだ・・・が、こいつは認めないつもりのようだ。」
「・・・リリさんでしたよね?ドレスとてもお似合いですよ。貸ドレスなど、いらぬ世話でしたね。」
「ありがとうございます。確かに不要な話ではありましたが、先生のご厚意はありがたく思っていますわ。私、貸しドレスのことなど聞いていませんでしたから。」
「それもおかしな話ですが・・・今は、お聞きしたいことがあります。」
「なんでしょうか?」
「ロッカーに鍵はかかっていたのでしょうか?」
「わかりません。私は、ドレス用のロッカーなど、見たこともありませんから。ですが、鍵を渡されませんでしたし、私のロッカーの中に衣装が入っていたということは、開いていたのではないでしょうか?」
「でしょうね。」
ルーヴィス先生は困った顔で笑って、私の担任に向き直ります。担任は、ルーヴィス先生の登場に自身の不利を悟ったのでしょうか?顔を青くさせています。
「鍵は開いていたのでしょう。でなければ、あなた方がその衣装について知っているのはおかしいことです。そして、鍵が開いていたのならば・・・リリさんを犯人と決めつけるのは早計・・・むしろ、リリさんに罪を擦り付けようとした第三者を疑うべきかと思いますが?」
「確かに・・・鍵は開いていたようだ。」
担任は、後ろの生徒に目で確認を取って、悔しそうに答えました。担任の後ろにいるのは、クラスメイトのようですね。嫌ですね、人のロッカーを勝手に開けるなんて。そちらの方が問題ではありませんか?
「ところで、その問題の衣装は?」
「あ、こ、これです。」
担任の後ろから、目を赤くはらした女子生徒が、無残な姿をしたぼろぼろのドレスだったものを、ルーヴィスに差し出しました。
それを見て、一瞬黙り込んだルーヴィス先生でしたが、目を大きくして声を上げました。
「これは、確か先生が持ち歩いていた・・・これは、貸しドレスではなかったのですね?」
「な、何を言っている!?俺は、衣装を持ち歩いてなんていない!」
「いいえ、確かにこの衣装でした。このような色味の衣装・・・ドレス、なかなかありませんからね、印象に残っています。」
シンデレラの衣装であるドレスは、シンデレラが序盤に着るものであるため、灰色の薄汚れたシンプルなドレスです。確かに、このようなドレスを着たいと思う女性は少ないでしょうし、わざわざ作らせようとも思わないでしょう。
だいたい、男性がドレスを持ち歩いている時点で、嫌でも印象に残りますし。
「冗談もほどほどにしろ、俺がドレスなんて持ち歩いているわけがないだろう!」
「えぇ、普段ならばそうでしょう。しかし、その時は雪見会が間近に迫っていました。なので、最初に言いましたが、生徒に貸すためのドレスだと思ったのです。・・・ですが、その色味はないと思ったので、古くなった貸しドレスを処分するのかと思っていましたよ。」
ルーヴィス先生の言葉は、先生の証言でしかありません。しかし、日頃の行いでしょうか?担任よりは信用されているようで、周りにいる生徒の大半は、担任を白い目で見始めました。
この場ではもうすでに、担任が演劇部から衣装を持ち出して、私のロッカーの中へ入れたというシナリオが支配しています。
ルーヴィス先生には、感謝しなければなりませんね。
貸しドレスの話をわざわざ聞かせてくれただけでなく、こんなにも協力してくださったのですから。
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昨日完結した、「愛に殺された殺人鬼」もよろしくお願いします!
他にも連載中小説があります。
「男だけど、聖女召喚された」「裏生徒会のジョーカー」




