29 私対先生
私のロッカーの中に入っていたのは、先生に渡された学校の貸しドレスです。正確にいえば、先生が学校の貸しドレスと偽った、演劇部の衣装です。
衣装は、シンデレラの主人公が最初に着ているぼろぼろのドレスです。母を亡くし、父が再婚したシンデレラは、新しい母とその連れ子に奴隷のように扱われる日々を過ごしています。奴隷扱いは、服にまで及んで、いつもぼろぼろの灰がついたドレスを着ています。
そんな衣装を貸しドレスと偽って、私がそれを着て雪見会で恥をかく・・・というシナリオが担任の中にはあると思っていましたが、違ったようですね。
なら、あなたには、今日ここで退場願いましょうか・・・
「何のことでしょうか?演劇部の衣装?」
「しらを切るつもりか?この衣装がお前のロッカーの中に入っていた。雪見会のために、ドレスを入れる用のロッカーを与えられただろう?そこに入っていた。」
担任は、私の前にぼろぼろにされた衣装を差し出しました。
おそらく、担任は私がこの衣装について正直に話すと思っているでしょう。これは、先生に渡された貸しドレスだと。すると、担任に罪を着せるつもりかと怒鳴りつけるのでしょうか?それとも、呆れたような顔を作ってつくならもっとマシな嘘をつけ・・・とでもいうつもりでしょうか?
どのような反応か気になりますが、今回はその反応を見るのは諦めましょう。
私の方を心配そうに見つめる兄に、目だけで大丈夫だと返して、私は先生に向き直ります。とても困ったような顔を・・・何を言われているかわからない顔を・・・
「ロッカーですか?・・・あぁ、そういえばありましたね、そんなもの。」
「は?」
「私、ロッカーを使っていないので、ロッカー自体見てもいないので、先生が何を言っているのかわかりません。」
「お前、何を・・・だって、このドレスはっ!」
「このドレスは、演劇部の衣装でしたっけ?なぜ、そんなものが私のロッカーにあったのでしょうね?」
私の言葉が担任の予想と違ったのでしょう。担任が焦りを見せ始めます。先ほどまで、怖い顔をして余裕の態度でしたが、あっけなく動揺しましたね。
担任は、お前がこのドレスを知らないはずがないと言いたいようですが、それを言ってしまえば、このドレスを私に渡したのが担任だと分かってしまいます。それに気づいたのでしょう、口を開けて閉じるという金魚のような行動をとります。
何かを言いたいのに、何も言えない。そんな感じですね。
「・・・でたらめを言うんじゃない。」
「でたらめ?私はありのままを話しているだけです。確かに、ロッカーが用意されているのは知っていましたが、一度も使っていません。ロッカーがあるという更衣室にすら、入ったことないですよ。」
「な、なら、なぜこの衣装がお前のロッカーに入っていたんだっ!」
「だから、知りませんって。」
声を荒げる担任に、私は一歩だけひいて困った顔をします。すると、兄が前に出てきました。別に兄の力を借りる必要はありませんが、守ってくれようとしている兄の心がうれしくて口元が緩みます。
「先生、先ほどから聞
「何事ですか?」
兄の言葉にかぶせて声を出したのは、私の協力者・・・私に学校の貸しドレスがあることを伝えてくれた、ルーヴィス先生です。
私の言葉で担任をどうこうなんてできると思っていません。先生には、先生をぶつけます。
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このまま完結まで毎日投稿をするか悩み中です。
連載中「男だけど、聖女召喚された」を再開したり、別の作品を投稿し始めるかもしれません。
新しく書いているのは、戦記「生きるためなら、祖国だって・・・」超能力者の恋愛「裏生徒会のジョーカー」などがあります。
お楽しみに!
完結済みの作品もあるので、よろしければこちらもご覧ください!
この物語が好きな人へのおすすめは「死神勇者は狂い救う」「悪役令嬢ですが、国が滅びそうなので、そんなことにかまってはいられません」です。




