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28 大切な物



 私の大切な人は、同族のリスフィの、特に姉と慕う人たちです。それが、異世界転移したことで、彼一人だけになりました。環境が変われば、大切な人は自然と増えます。

 気づけば、兄、ヴィヴィと増えていました。これは、学園に通い始めたからです。


 私は、大切な人からもらったものを宝物とします。

 なので、雪見会のために兄が贈ってくれたドレスは、私の宝物です。宝物とは、絶対に守り通したいもの。

 たとえそれが、元から害されるものとして贈られたものだとしてもです。


 兄は、私のために何着もドレスを買ってくれました。それが兄の最初で最後のドレスで表現する愛情だと言われても、それが百パーセントの意味合いでないことは知っています。

 ドレスが何着もあるのは、いたずらをされた時のため。


 用意されたロッカーにドレスを置いておけば、必ず無残な姿にされるでしょう。なら、ロッカーに置かなければいいのかといえば、それは違います。

 ドレスを台無しにすることは、私を惨めにすることです。なので、絶対彼女はそれを指示するでしょう。


 「彼女」は、自ら手を犯す愚は致しませんから、しっぽを捕まえることなど考えても仕方がありません。ただ、被害にあわないようにするだけです。


 私は、学校側からドレスを借りてロッカーにしまいました。


 いけにえのようなものです。


 これで、ロッカーのドレスを台無しにするでしょう。そうすれば、私が当日着ていく兄からもらったドレスは害される危険が減ります。

 ロッカーのドレスを台無しにしたことで、彼女らは目的を達成したと思うでしょうから。




「きれいだよ、マイシスター。俺が贈ったドレスが、一番輝いてる瞬間が今だ・・・かわいい。あぁ、なんてかわいいんだ。」

「ありがとうございます。私も、問題なくこのドレスを着ることができて、本当にうれしいです。それにしても、このドレスサイズがぴったりですね。」

「マイシスターのことで、俺が知らないことがあるとでも?」

「それは、私の裸を見たということですか?」

「それは永遠に見ることがない光景、月の裏側のようなものだな。」

「確か、月の裏側はネットで見ることができますね。」

「マイシスターの神秘は、ネットで見ることはできない。月よりも神々しく、踏み入れてはいけない神域だよ。」


 いつにもましておかしな兄と会話をしていると、ものすごい形相をした担任が、幾人かの生徒を引き連れてこちらにやってきました。


 生徒たちの目は、興味と野次馬精神の色が浮かんでいて、私にとってこれから良くないことが起こるのだと分かります。兄もそれを感じ取ったのでしょう、私を背にかばうようにして担任と対峙します。


「先生、これは何事ですか?」

「ドーナルド、君の妹にいくつか聞きたいことがある。」

「わかりました。では、俺も一緒に付いて行きます。」


 担任が妹を連れていき話を聞くと踏んだ兄は、自分も付いて行くことを提案しました。普通は、何か良くない話であれば別室の、他の者の目がない場所に移動するでしょうが、担任は違うのです。兄も、恐らくそれには気づいていますが、だめもとでそう主張しました。


「いや、簡単な確認だ。リリ・ドーナルド、演劇部の衣装を盗んだのはお前か?」


 厳しい表情をしていますが、目を見ればわかります。隠しきれない愉悦を味わう担任に、私はいくつか考えていたパターンの一つだったことを確認し、困惑の表情を作りました。


「何のことでしょうか?演劇部の衣装?」


 担任はこの後に続く言葉を待っています。ですが、あなたの思い通りの言葉は吐きませんよ?


 さぁ、私が愉悦を感じる番です。




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