25 手紙
着々と準備を進め、遂に雪見会を前日に控えた休日が来ました。
おやつ時に、私は彼と共にお茶をしていました。そこへ、兄が一通の手紙を持って現れます。
「これを見てくれ。」
「・・・お前の姉からの手紙だな。」
「あぁ。」
彼は手紙に目を通します。
確か、兄の姉は・・・私にとっても姉になるようですが、その姉は隣国に留学していると聞きました。婚約者が隣国の王子で、女王と仲が良く城から学園に通うことを認められていると。
そんな姉と兄は、月に一度手紙のやり取りをしているようです。いつも普通の手紙に見せかけて、なぞ解きを入れているから面白いと兄が話していました。
「問題は何もないようだが?」
手紙を読み終えた彼は、不思議そうに兄を見上げます。彼は椅子に座っていて、兄は立っているので自然とそうなるのですが、見上げる彼がなんだか可愛いです。
「それが問題だ。」
「は?」
「もしかして、なぞ解きがないのですか?」
「さすが、マイシスター!俺たち兄弟のことをよくわかっている。こいつとは大違いだ。お前の方が付き合いは長いというのに、薄情な奴め。」
「悪かったな。そういえば、そんな話をしていた。あいつは昔からおてんばだったが、木を登る代わりに頭を使って人をからかうのが趣味になったんだったな。」
「手紙になぞ解きがあるだけだ。別にからかってはいない。」
「だが、前回の謎解きは、お前のエロ本の隠し場所が・・・」
「こらっ!マイシスターの前でそんな話をするなっ!」
「ふっ。失敬。」
「お前、お前の宝の隠し場所、いずれ暴いてやるからな!」
「どうぞお好きに。宝があるかもわからないがな?」
「くそっ!」
だいぶ話が横道にそれているようですが、いいのでしょうか?私の視線から感じ取ったのでしょう、兄は咳払いをして話を進めます。
「姉が心配だ。何かあったんじゃないかって・・・」
「シスコン。」
「俺は、ふざけているわけじゃねー!」
「わかっている。・・・この手紙、少しだけ違和感がある。何か、定型文を選んだだけのような違和感・・・もしかしたら、手紙を検閲されているのかもしれないな。」
「検閲・・・今までそんなことなかったのに?」
「変わったのだろう。変わったということは、何かがあったということだ。」
「・・・」
兄の顔から血の気が引きました。最悪の想像をしているのでしょう、手紙を彼から奪い取ると、その字をじっくりと見つめて、少しだけ緊張を解きます。
「姉の字だ。」
「誰も死んだとは言っていない。」
「不吉なことを言うな。」
「そうだな。とりあえず、お前もいつものように手紙を書け。ただし、悟ったことを相手に悟られないようにな。」
「でも、それじゃ・・・」
「今度は、お前が謎を入れて手紙を送ればいい。何かあったのなら、吉報を・・・何もないのなら、無事を伝えて欲しいと。暗号文を送るんだ。」
「・・・わかった。」
「俺の執務室を貸してやる。違和感のないように書けたら俺に見せろ。」
「悪いな。」
兄は、手紙を書くために去っていきました。
それから兄が書いた手紙を彼が読んで、2、3訂正した後、速達でさっそく姉の元へ手紙を送ることになりました。いつも速達で送っているようなので、怪しまれないでしょう。
何もないといいのですが。




