15 マネージャー
入りたい部活を聞かれて、彼も所属している剣術部と答えたのですが、なぜか彼が反対をしてきました。
私は、彼のことを第一に考え、彼の言葉には従うつもりでいます。この世界で最初に出会い、助けてくれた恩人ですから。
でも、それでも理由だけは聞きたいと思いました。
「わかりました。あなた・・・グレットがそういうのなら、私は剣術部には入部しません。ですが、理由だけでも聞いていいですか?」
「・・・名前・・・」
「?」
「いや。理由だったな。そんなの決まっているだろう、危険だからだ。」
「危険?剣術部は危険なのですか!?なら、グレットも退部してください!」
危険がある部活とは聞いていませんでした。ただ剣を使って戦うだけだと。他の運動部も同じような感じで、ボールや棒を使って戦うので、特別剣術部が危険だとは思いませんでしたが・・・
「いや、俺はいいんだよ。男だから。・・・お前は女の子だろう。重たい剣を持って、振って戦うなんて、お前にはさせられない。怪我でもしたらと思うと・・・」
「そういうことですか・・・一緒にいたくないわけではなかったんですね。」
怪我をする可能性が高い部活のようですね。でも、彼の様子からは特別危険だとは思えないので大丈夫でしょう。
それよりも安心しました。
どうやら私のことを心配しての反対だったようで、良かったです。もしかしたら、私と一緒にいる時間を減らしたいのかと思いました。
「何の話だ?・・・とにかく、俺は反対だよ。女の子に重たいものを持たせるなんてできない。」
私たちが話をしている横を生徒が2人、談笑しながら通り過ぎます。彼は思い出したように、口調を外用に変えました。
「でも、頭ごなしに反対してごめんね。どうして剣術部に入りたいのか、教えてくれるかな?もしかしたら、君の希望を叶える部活が他にあるかもしれない。」
「理由は・・・グレットがいるからです。」
「俺?」
「はい。グレットと同じ部活に入りたいと思っていて・・・グレットと一緒にいたいんです。家でも教室でも・・・できれば部活でも。ずっと、寂しかったですから。」
学校に通う前は、夜の少しの時間と休日だけが彼と一緒にいられる時間でした。あとは、一人きりで勉強をしたり、本を読んだり、人間を観察したり。
やることはあったので退屈はしませんでしたが、寂しかったんです。
「・・・そう。」
彼は誰もいないのに後ろを振り返って、そのままこちらを見ずに話を続けます。
「なら、剣術部のマネージャーになる?」
「マネージャーですか・・・?剣術部にもあるんですね!私、剣術部のマネージャーになります!」
「わかった。なら顧問の先生に今から会いに行こうか。」
「はい!」
すたすたと先に行ってしまう彼を、私は慌てて小走りで追いかけました。
いつも歩幅を合わせてくれる彼には珍しく少し不思議に思いましたが、特に何も聞くことなく彼と共に顧問の先生と会い、私はマネージャーとして入部することが決まりました。
これで、部活も一緒です!
初日は、すこしだけもやもやすることがありましたが、いいスタートを切れたと思います。




