目撃者のいないドラゴン
私は調査に来ていた、かなりの田舎町に。
しかも討伐の終わったクエストだ。
討伐したパーティは既に証拠の牙をギルドに届け出ていたし、報酬を受け取ってもいた。
それでも私は納得がいかなかったのだ。
討伐されたのはドラゴン、しかも目撃者のいないドラゴンだった。
いくつか不可解な事があった。一つは依頼者。
直ぐに姿を消したらしい、依頼の直後だ。報酬は預かっていたから問題はないと言えなくはないが、それでもかなりの依頼料だ。そんな金をポンと出せるのはその土地の地主か国主か、それでなければドラゴンの遺体に群がる好事家ぐらいだろう。
だが私が調べた範囲ではこの土地にそんな者は居なかった。
そして討伐したパーティ。
彼らは確かに強い、最近メキメキと頭角を現した比較的新しいパーティなのだが、目を見張る活躍によってかなりの序列を上げていた。
ちなみにこの序列という仕組が作られたのは最近の事だ。討伐数や依頼の難度によってポイントを配り順位を決める。その順位によっては報酬も与えられ、より討伐に力を入れて貰おうというギルドの新しい試みだった。
初年度のMVPを狙える彼らならドラゴンを倒すのも不可能ではないだろう。
だが引っ掛かったのは彼らのパーティには弓使いが居ない、更に遠距離を得意とする魔法使いも居なかった。
そんなパーティが空を自由に飛びまわるドラゴンを簡単に仕留めらただろうか?
それらの疑問は調査によって更に強まった。
被害に合ったらしい小屋を見つける、確かに焼け焦げてはいるが規模が余りに小さい。家畜の被害もあったらしいが小屋の大きさからそれ程の数だとは思えない。
ドラゴンがわざわざ襲うにしては余りに不自然だ。
私は街へ帰りその事実を告げると彼らはアッサリと偽装を認めた。
つまり、偽の依頼者をでっち上げて闇で入手したドラゴンの牙を提出したのだ。この不正行為によって彼らのポイントは全て没収。しばらくの間、序列に参加する事も禁止された。
しかし、と私は思う。彼らの実力ならドラゴンを倒すのも恐らく不可能ではなかったはず。仲間を増やしたり特別な道具を使えば今でも可能だと思っている。
それでも彼らを不正に走らせたのは、功名心と言っては安直だ。それ以上にシステムの問題ではなかったのか。
ギルドの考えたこの仕組はある点では悪くなかった、だがそれ故にこのような不正を招く事態になってしまった。
ギルド長に見直しの提言をすると共にこの報告を終わる。