表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1000文字短編

目撃者のいないドラゴン

作者: をち武者

 私は調査に来ていた、かなりの田舎町に。

 しかも討伐の終わったクエストだ。


 討伐したパーティは既に証拠の牙をギルドに届け出ていたし、報酬を受け取ってもいた。

 それでも私は納得がいかなかったのだ。

 討伐されたのはドラゴン、しかも目撃者のいないドラゴンだった。



 いくつか不可解な事があった。一つは依頼者。

 直ぐに姿を消したらしい、依頼の直後だ。報酬は預かっていたから問題はないと言えなくはないが、それでもかなりの依頼料だ。そんな金をポンと出せるのはその土地の地主か国主か、それでなければドラゴンの遺体に群がる好事家ぐらいだろう。

 だが私が調べた範囲ではこの土地にそんな者は居なかった。


 そして討伐したパーティ。

 彼らは確かに強い、最近メキメキと頭角を現した比較的新しいパーティなのだが、目を見張る活躍によってかなりの序列を上げていた。


 ちなみにこの序列という仕組が作られたのは最近の事だ。討伐数や依頼の難度によってポイントを配り順位を決める。その順位によっては報酬も与えられ、より討伐に力を入れて貰おうというギルドの新しい試みだった。


 初年度のMVPを狙える彼らならドラゴンを倒すのも不可能ではないだろう。

 だが引っ掛かったのは彼らのパーティには弓使いが居ない、更に遠距離を得意とする魔法使いも居なかった。

 そんなパーティが空を自由に飛びまわるドラゴンを簡単に仕留めらただろうか?



 それらの疑問は調査によって更に強まった。

 被害に合ったらしい小屋を見つける、確かに焼け焦げてはいるが規模が余りに小さい。家畜の被害もあったらしいが小屋の大きさからそれ程の数だとは思えない。

 ドラゴンがわざわざ襲うにしては余りに不自然だ。



 私は街へ帰りその事実を告げると彼らはアッサリと偽装を認めた。

 つまり、偽の依頼者をでっち上げて闇で入手したドラゴンの牙を提出したのだ。この不正行為によって彼らのポイントは全て没収。しばらくの間、序列に参加する事も禁止された。


 しかし、と私は思う。彼らの実力ならドラゴンを倒すのも恐らく不可能ではなかったはず。仲間を増やしたり特別な道具を使えば今でも可能だと思っている。

 それでも彼らを不正に走らせたのは、功名心と言っては安直だ。それ以上にシステムの問題ではなかったのか。


 ギルドの考えたこの仕組はある点では悪くなかった、だがそれ故にこのような不正を招く事態になってしまった。

 ギルド長に見直しの提言をすると共にこの報告を終わる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ