第4話 宝はダンジョンの最奥に
ユーレイを遠ざける作戦は決まった。
私とスミカさん、シュゼとチルがサングラスをかければ、作戦開始だ。
「スミカさん!」
「いくわ! スキル『風通し抜群』よ!」
瞬間、自宅のカーテンが開き、全ての窓が全開になった。
きっとトイレやお風呂場の窓も全開になってるはず。
窓が開くと、相変わらずシールドに隙間もなくびっしりと張り付いたユーレイたちの顔がこちらを見てくる。
あまりの恐怖に私とシュゼはチルの手を握っちゃうけど、作戦は次の段階へ。
「今度はスキル『痛いほどまぶしい』ね!」
掛け声と同時、自宅の電球や蛍光灯が激しく輝きはじめる。
その輝きの強さは、サングラスをかけていても目を細めたくなるくらい。
おかげで、作戦の結果も早く出た。
シールドにびっしりと張り付いていたユーレイたちは、蜘蛛の子を散らすように離れていく。
ユーレイたちは本当に光が嫌いらしく、光が届かない遠い場所まで去っていった。
さっきまで見えなかったダンジョンの壁は、今ではよく見える。
「やったわ! 作戦成功よ!」
「予想以上にうまくいったのです」
「スキル『痛いほどまぶしい』が使い物になって良かったよ。本来の使い方はいまだに分からないけど」
「意外な方法で活躍するものは数多く存在する。そして、それを引き出せる力を持った者が、真の支配者たりえるのだ」
「ねえシュゼ、それって私が真の支配者たりえる存在ってこと?」
「この私ほどではないがな」
私は遠回しにシュゼに褒められたらしい。
謎スキルに助けられて、なんとかユーレイは遠ざけられた。
次はいよいよ、びっくり魔法石を見つける番だ。
「びっくり魔法石は、当てた光の色と反対の色に輝くトゲトゲの石の塊、なのよね?」
「そうなのです。これだけ強くて白い光を当てていれば、きっと真っ黒になっているはずなのです」
「じゃあ、見つけるのは簡単ね!」
誰もがスミカさんと同じことを思っていた。
どうやら自宅は広いドーム状の場所にいるらしく、石を探しにくい環境ではない。
しかも強い光で洞窟内とは思えなくらいに明るいんだから、びっくり魔法石はすぐにでも見つかるはず。
けれども、どこを見渡しても、それらしい石の塊はなかった。
天井にも壁にも地面にも、どこにもびっくり魔法石はない。
明るすぎるのが悪いのかと『痛いほどまぶしい』を弱めてもみたけど、びっくり魔法石は見つからないし、ユーレイは戻ってくるしで散々な結果に。
1時間近くを浪費して、私たちは床に座り込んだ。
「ない……どこにもない……」
「ひゅうどろダンジョンの最奥にびっくり魔法石があるのは、いくつかの史料で確認済みなのです。おかしいのです」
わりとお手上げ状態だよ。
これからどうしようと、私とチルはボーッとしながら考えた。
一方でシュゼは、ティッシュと生ゴミ、外から持ってきた土をテラスに広げていた。
当然、スミカさんは質問する。
「あら? 何をしているのかしら?」
「行き詰まったときは、大自然に耳を傾けてみるべきであろうと思ってな」
ニタリと笑うシュゼは、そのまま召喚魔法を発動した。
ティッシュと生ゴミと土は光に包まれ、それらを代償に召喚されたのは、どっさりの灰。
「クク、これだ……これこそが、真実へと導く真理の鍵となろう」
厨二病全開のシュゼは灰を握り、そしてぶちまけた。
ぶちまけられた灰は、すぐには地面に落ちず、ふらふらと吸い込まれるように宙を舞う。
そうして灰が行き着いた先を見つめ、シュゼはつぶやいた。
「ククク、そこか。ここより先は、選ばれし者しか進めぬようだな」
もう完全に1人の世界に浸っているらしい。
ここからシュゼの怒涛の厨二病タイムがはじまった。
「闇に仕えし魔の伝道師が告ぐ! 扉を開けよ! ダメか。ならば……影をも呑み込む深淵よ、導け! ううむ……開け! 真理へ続く長き漆黒の道! これもダメか。では……命令だ! 世界を支配する者の意思に従い、門を開け! これでもダメとなると――」
こんな感じで、シュゼは壁に向かって大袈裟な言葉を叫び続ける。
もしや暇すぎて遊びはじめたのかな?
まあ、楽しそうだからいいけどさ。
「ええい! ではこれならどうだ! 閉ざされし門よ! 現世と冥界の境を踏み越えんがため、その役目を全うせよ!」
そんな言葉の直後だった。
洞窟に重低音が轟き、壁の一部がゆっくりと開きはじめる。
まさかの事態に私たちは開いた口が塞がらない。
ちなみにシュゼも開いた口が塞がらない。
「え!? ウソでしょ!? なんで!?」
「きっとシュゼちゃんの言葉が扉を開く鍵だったのよ!」
「スミカさんの言う通りなのです。あの扉は、呪文で開くようになっていたのです」
「すごいわシュゼちゃん!」
「いやいやいや、すごすぎない!? 偶然なの!? ホントに偶然なの!? もしかしてシュゼ、ホントは影の支配者なんじゃないの!?」
扉を開く呪文を偶然当てる可能性と、シュゼが本当に影の支配である可能性、どっちが高いんだろう。
いや、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
偶然とはいえ、隠されていた扉が開いたんだ。
ダンジョンの最奥は、まだ続いていたんだ。
状況を理解したシュゼは、胸を張り、コートをひるがえし、テラスを飛び降りる。
「ククク、ククハハハ! 道はひらけた! さあ、目的のものを手に入れるぞ!」
そうして、シュゼはついてきたチルと一緒に扉をくぐっていく。
扉は自宅が入れない大きさだけど、テラスから扉の向こうを見ることはできるから、私たちはテラスから2人を見守った。




