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第1話 1時間目、魔法陣の授業

 予定通り、私たちが魔法学校の生徒たちの特別講師になる日がやってきた。


 授業は課外授業ということで、自宅は今、『景色のいい国』の広場にやってきている。

 どうやら山の上の魔法学校の課外授業は『景色のいい国』でするのが伝統らしい。


 私たちは課外授業の準備中。


「魔法陣と杖はこれで良しですね。難易度的にはこれくらいでしょうか?」


「不死鳥の剣、今日はお前の力をみんなに見せる日だ。頑張れよ」


「わざわざプレゼン資料なんて作ったけど、ウケるかな……」


「紹介したいスキルがいっぱいあって、迷っちゃうわね」


 みんな、それぞれ勝手に準備を進めていた。


 ちなみに、シュゼとチルは当然として、なぜかミィアも生徒として授業に参加する。

 ミィアはシュゼたちより2歳年上のはずだけど、妙に馴染んでるから気にしない。


 時計を見れば、授業がはじまる時間だ。


 最初に授業を行うシェフィーは、魔法の道具を持って生徒たちの前に立った。

 12歳にして首席卒業した先輩を前に、約100人の生徒たちがざわつく。


「わあ~、シェフィー先輩だ~」


「かわいくて優秀な魔法使いなんて、憧れちゃう!」


「やはり宿敵女神、人々の心はすでに把握済みのようだな」


「すごい! 憧れの先輩に会えた!」


 想像以上の人気だね。

 あんまり生徒たちがざわつくから、人見知りシェフィーは挨拶する機会を見失ったみたい。


 数分のざわつきを経て、ようやく一生懸命な挨拶がはじまる。


「お、おはようございます! 課外授業1時間目を担当するシェフィーです! よ、よよ、よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします!」


「わわわ……みなさんとっても元気です……」


 対して自分は……と続きそうな言葉。

 たぶん、約100人を前にすごく緊張してるんだね。


 緊張はしていても、真面目に一生懸命頑張るのがシェフィーだ。

 シェフィーは自分の頰を軽く叩いて、授業をはじめた。


「ええと、わ、わたしがみなさんに教えようと思っているのは、これです。魔法陣です。魔法陣魔法が得意な方は、どれくらいいますか?」


 すると、生徒の3分の1くらいが手を上げた。


「な、なるほど、分かりました。ありがとうございます。だいたい予想通りですね。なら、この魔法陣がいいでしょう」


 そしてシェフィーは、自分のバッグから1枚の魔法陣を取り出す。


「この魔法陣がなんの魔法陣か、分かりますか?」


「はーい!」


「で、では、カチューシャがかわいいそこの方」


「真ん中に蝶々の絵があって、その周りをポール式文様とロバート式文様が囲んでいるので、1匹の蝶々がくるくるダンスする魔法です!」


「さすがです! でも、ちょっと惜しいです!」


 シェフィー先生の言葉に、生徒が一斉に首をかしげた。

 詳しいことは分からないけど、きっとカチューシャの子の答えは正しいはず。

 一体何が惜しいのかは、先生の授業を聞くしかない。


「ここはポール式、ここはロバート式の文様ですね。ですが、この部分に少しだけ手を加えてあります。後ろの方の人は見えないかもですから、黒板に書きましょう」


 そう言って、移動式の黒板にささっと紋様が描かれる。


「実はふたつの紋様の間に、トーマス式紋様とサンディ式紋様の一部を自然な形で混ぜてみました。言い忘れていましたが、魔法ペンと魔法インクはどこにでも売っているものです。では、魔法陣を作動させてみましょう」


 お待ちかねの時間だ。

 小さな杖を手にしたシェフィーは、教壇の上に置かれた魔法陣に魔力を送る。


 直後、魔法陣がほんのり青白く光り、2匹の蝶々が飛び出す。

 2匹の蝶々は光の線を引き、互いに息を合わせたみたいに生徒たちの頭上を飛びはじめた。

 光のアーチを描く魔法の蝶々2匹のダンスを見て、生徒たちは目を輝かせる。


 しばらくして蝶々が消えれば、シェフィー先生の解説が続いた。


「対象に空を舞わせるポール式紋様と、対象にダンスのような動きを行わせるロバート式紋様。これに、対象に光の効果を与えるトーマス式紋様、対象を息の合ったふたつの存在に変えるサンディ式紋様の一部を加えることで、さっきのような魔法ができます」


 これは大好きな魔法陣の話。

 だから人見知りも忘れて、シェフィーのテンションは上がる一方だった。


「魔法陣を作る基本は、たくさんの紋様を覚えることです。でも、紋様を暗記するだけではつまらないと思います。だから、覚えたたくさんの紋様を応用して、新しい魔法を作る。これが魔法陣を作る楽しさです」


「なるほど!」


「さすがシェフィー先輩!」


「魔法を作るときは、役に立つ魔法を作ろうとか、そういうことは大事ではありません。そういうことは、後からついてくるものです。大事なのは、楽しい魔法を作ること。魔法陣作りが楽しいと思えるようになれば、お勉強も楽しくなりますよ」


「おお~!」


「シェフィーさんはすごいのです」


「魔法陣って、こんなに楽しいものだったんだ!」


 生徒のみんなが瞳を輝かせている。


 たった1枚の魔法陣が、生徒たちの好奇心を刺激したんだね。

 いや、もしかしたらシェフィーの楽しい気持ちが、生徒たちにも伝わったのかも。


 どちらにせよ、シェフィーの授業は生徒たちに大人気みたいだ。

 自宅から授業を眺めていた私たちも、つい感心しちゃう。


「フフ、シェフィーちゃんの授業は分かりやすいし、何より楽しいわ」


「そうだな。もしかしたらシェフィーは、いい先生になれるかもしれない」


「だね」


 本当にシェフィーはすごい魔法使いだよ。

 だって、みんなに魔法の楽しさを広めることができるんだから。


「では今度は、この魔法陣です。この魔法陣は風の絵が描かれていますが――」


 人気教師シェフィーの授業は、その後も続く。


 生徒たちはとても熱心に、そしてとても楽しそうに授業を聞いていた。

 もちろん、シェフィーも楽しそうに授業をしている。


 課外授業1時間目、魔法陣の授業は大成功だよ。

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