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移動要塞自宅~勇者に選ばれたおウチと旅をすることになりました~  作者: ぷっつぷ
14けんめ シェフィーの実家に行く話
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第6話 3人姉妹?

 演劇が終わり、食事も終わり、パーティーの楽しい時間は過ぎ去った。

 みんなはそれぞれ勝手に、自分のやりたいことをやりはじめる。


 シェフィーとシュゼは魔法のお勉強、ミィアとルフナは寝室でカードゲーム、チルはアニメ鑑賞、スミカさんとシェフィーのお母さんはコーヒー片手に雑談中だ。


 私はといえば、お湯いっぱいの浴槽で天国を満喫中。

 浴室を漂う湯気を眺めながら、私はつぶやく。


「チルの脚本、良かったな~。また一緒に物語、作りたいな~」


 ちょっとの私の修正も、そもそもチルの脚本がなかったらできなかったこと。

 演劇が盛り上がったのは、チルの脚本のおかげだ。

 こうなると夢は広がるばかり。


「みんな演技うまかったし、いつか映画とか作ってみるのもいいかも」


 だとすると、カメラとかマイクとか照明とか編集ツールとかが必要かな。

 でも、そういうのは通販でなんとなかなるはず。

 わりと本気で映画撮影、考えてみよう。


 なんて思っていれば、何やら洗面所から声が聞こえてきた。


「うん?」


 浴槽から身を乗り出し、耳を澄ますと、聞き慣れた笑い声と話し声が。


「……ククハハハ!」


「ちょっとシュゼ……お風呂の……さんは1人で……」


「知らぬ……さあ宿敵女神……するぞ!」


「な、なんで……」


「……つべこべ……でない!」


 間違いなくシェフィーとシュゼの会話だね。

 会話ついでに、ゴソゴソと服が擦れるような音も聞こえてくる。


「嫌な予感がするよ」


 その嫌な予感はすぐに的中した。


 浴室の扉は勢いよく開かれ、湯気の向こうに2人の人影が現れる。

 1枚の服も着ていないシュゼとシェフィーだ。


「氷の女王! 共に風呂に入るぞ!」


「ごめんなさいユラさん! シュゼを止められませんでした!」


 小さな体で堂々とするシュゼと、何度も頭を下げるシェフィー。


 私は特に驚くこともなく、けれども顎までお湯に浸かりながら、体を縮こませた。

 正直まだ、私の貧相な裸を見られるのは、女の子相手でも恥ずかしい。


 一方のシュゼは何のお構いもなしに浴槽に入り込んできた。


「ふわ~、異世界の風呂とは素晴らしいものだな」


「当たり前のように入ってくるね、シャドウマスターさん」


「当然であろう。この私は影の支配者なのだ。異世界の風呂も早く支配しなければならないからな」


「だからって一緒に入らなくても……」


 とはいえ、私の隣で気持ち良さそうな表情をするシュゼを見ていると、なんだか幸せ気分。

 シュゼを真ん中にしてシェフィーがお風呂に入れば、これはこれで天国だ。


「まあいいや。泣いて馬謖を斬ろう」


「クク、馬謖とやらを斬るとは、氷の女王もなかなか容赦がない」


 こうして、私とシェフィー、シュゼの3人のお風呂タイムがはじまった。


「やっぱりお風呂は気持ちいいですね~」


「だよね~。しかも寒い場所で入るお風呂だから、格別だよ~」


「この風呂を世界にばら撒けば、人身把握も簡単であるな~」


 ゆったりとした時間が流れていく。


 シェフィーとシュゼの姉妹を見れば、2人は本当にそっくりだ。

 目元はほぼ同じ、輪郭もほぼ同じ、髪色もほぼ同じ、髪を下ろしてるから髪型もほぼ同じ。おまけに胸の大きさまでほぼ同じ。2歳差なのに。


 姉妹の姿に心まで癒されていると、シュゼがシェフィーに話しかけた。


「宿敵女神よ~」


「なんですか~?」


「この私の頭を洗うことを許可してやろ~う」


「もっと素直にお願いしてくれてもいいんですよ~」


 気の抜けた口調でそう言いながら、シェフィーは立ち上がる。

 そして浴槽を出ると、床に膝をつき、シャワーヘッド片手に手招きした。


「ほら、シュゼもこっちに来てください」


「なんだと!? ま、まさか宿敵女神、本当にこの私の頭を洗おうというのか!?」


「シュゼがそうお願いしましたからね」


「も、もうお前は大人なんだ、お姉ちゃん離れしろ、とは言わぬのか!?」


「久しぶりの一緒のお風呂ですから」


「……宿敵女神!」


 嬉しそうにしながらシュゼは浴槽を飛び出し、お風呂椅子にちょこんと座った。

 シェフィーは妹の背後に膝立ちして、優しく言う。


「お湯、かけますよ」


「ククク、言われずとも覚悟はできている。この私はもう――ふわ!」


 目をつぶっていたシュゼがぴくりと驚く。

 まるで刺客に襲われたみたいな反応だ。

 ついでに刺客に襲われたみたいな口調で質問する。


「なんだこれは!? お湯がすごい勢いで飛び出してきたぞ!」


「これはシャワーですよ」


「シャワーだと? 一体、この魔王城にはいくつの秘密兵器が……!」


 相変わらずの大袈裟な反応だね。


 妹の大袈裟な反応も気にせず、シェフィーはシュゼの頭を洗いはじめた。

 お湯でシュゼの髪を濡らし、シャンプーを泡立たせ、シュゼの髪をあわあわにしていく。


 その光景を見て、私は思わず口を開いた。


「なんだかシェフィー、この家のお風呂にも慣れたみたいだね」


「もちろんです! だってこの家は、わたしの第二の自宅ですから!」


 そうだね、シェフィーがこの家に住むようになって、ずいぶん経つもんね。

 たくさんのお湯とシャンプーのあわあわに驚いてた頃のシェフィーが懐かしいよ。


 過去を懐かしむ私の前で、姉妹の仲良しな光景は続く。


「かゆいところ、ありますか?」


「強いて言うのであれば、賢者の悩みがかゆいか」


「こめかみですね」


 すっごくのほほんとした時間。

 これ、いつまでも見てられるかも。


「一人っ子には経験できない時間だね。姉妹、いいな~」 


 今まで一人っ子を嫌だと思ったことはないけど、さすがに姉妹への憧れが出てきた。

 もしシェフィーとシュゼが私の妹だったら、どんな感じだったんだろう?


 そんな私の思いを知ってか知らずか、シュゼが私の手を引っ張る。


「氷の女王よ!」


「うん?」


「宿敵女神の頭も洗ってやれ!」


「ほひ?」


「ここでは氷の女王が年長者だ。姉はひとつ下の妹の頭を洗うものだろう」


「そう、なのかな? 一人っ子だから姉妹のルールが分からない」


 分からないけど、私がシェフィーのお姉ちゃんになれるのは願ってもないこと。

 どうやらシェフィーも満更でもないようで、彼女は満面の笑みを浮かべて頭を下げた。


「お、お願いします!」


「じゃ、いくよ~」


 ということで私は浴槽を出て、シェフィーの頭を洗ってあげる。


 その後、私たちは3人で洗いっこをし、お風呂に戻り、至福の時を過ごすのだった。

 なんだか3人姉妹になったみたいだね。

今回で第14章は終わり、次回からは番外編2『シャドウマスターを手伝う話』がはじまります! どうぞ続きもご覧になってください!

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