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移動要塞自宅~勇者に選ばれたおウチと旅をすることになりました~  作者: ぷっつぷ
8けんめ テイトで女帝さんと出会う話
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第5話 新しい目的地へ

 ミィアとルフナがリビングに帰ってきた。

 うさ耳パーカーを着たミィアは、とててとキッチンへ向かう。


「わ~い! お菓子~!」


 冷蔵庫を開け、たくさんのチョコを抱えたミィアは幸せそう。

 それを見た下着姿のルフナも幸せそう。


「お城で上品にケーキを食べていたミィアも良かったが、この家でお菓子を食べるミィアは女神以上の存在だ! 宇宙だ!」


 理想の王女とナイトさんは何処へやら。

 まあ、これが見慣れた2人なんだけどね。


 自宅は女帝の試練を乗り越えるため、お城の正門へと歩き出す。

 歩き出したところで、スミカさんは家の外にいるアイリスに話しかけた。


「アイリスちゃん! どうすればお城の外に出られるのかしら?」


「ふん! なにを言ってるのよ! ふつーに出ればいいじゃない!」


「普通って? また超ジャンプをすればいいのかしら?」


「ちょ、ちょージャンプ!?」


 何を言っているのと言わんばりのアイリス。

 しばらくして、彼女はハッとしたような表情をした。


「あ! マモノが出たから、はしをしまってたんだったわ!」


 そう言うと、アイリスはアルパカに乗ったままお城の正門へと向かう。

 自宅も彼女の後を追った。


 お城の正門にやってくると、そこにはお城と街を隔てる湖が。

 やっぱりお城と湖をつなげるものは何もない。

 ここで、アイリスがアルパカのもふもふの中から小さな杖を取り出し、それを天に掲げた。


「ええい!」


 かわいらしい掛け声と同時、小さな杖がまばゆく輝き、湖が振動する。


 少しすると湖は割れ、立派な石橋が水の中から姿を現した。

 石橋はお城と街をつなげると、大昔からそこにあったかのように人通りを待っている。


「ほえ~、そういう仕組みだったんだ」


「これで超ジャンプをしなくても済みますね」


 普通に湖を渡れることがこんなにも嬉しいことだなんて思いもしなかった。

 加えて、アイリスがすごい魔法を使えることにも驚いた。

 女帝は伊達じゃないようだ。


 アイリスのおかげで橋も渡れるようになったし、いよいよお城を出発しよう。

 そう思ったのだけど、スミカさんは首をかしげる。


「何かがこっちに近づいてくるわ」


 窓の外を見てみると、橋の先に大きな影が。

 勢いよくこちらに近づくそれは、大きな体に長い首、立派な翼が特徴的な、ファンタジー世界の象徴。


「あれは……」


「ドラゴンだ~!」


「まだマモノが残っていたんですか!?」


「いや待て。あのドラゴン、すごい勢いで引きずられてないか?」


 たしかにルフナの言う通りだ。

 ドラゴンは縄に縛られ、その縄を掴んで走るポニテ少女に引きずられている。


 ポニテ少女はドラゴンの咆哮かと思うような大声を張り上げた。


「見ろ! ドラゴンを倒してきたぞ! ついでに街中にいたマモノも倒したぞ!」


「スピードを緩めてほしいんじゃい。酔いそうじゃい」


 間違いなくシキネとクロワの2人だ。

 シキネはクロワッサンをくわえながら、列車ぐらいの速さでドラゴンを引きずり、揺れに揺れるドラゴンの上に乗ったクロワは真っ青な顔をしている。


 ドラゴンを引きずったシキネがお城に到着するまで、それほど時間はかからない。

 ショクの勇者の到着を、アイリスはアルパカの上から歓迎した。


「かえってきたわね!」


「ああ! 帰ってきたぞ! ほら、ドラゴンを倒してやった!」


「すごいわ! さすが『ショクのゆーしゃ』ね!」


「当たり前だ! アタシは勇者だからな!」


「勇者は私じゃい。あと、酔って気持ち悪いんじゃい。このままだと吐き――オエエエ」


「クロワ!? クロワーー!! クソッ! クロワをここまで苦しめたのは誰だ!?」


――あなたです。


 苦しむクロワは、私たちに視線を向けた。


「おや、スミカさんたちがいるんじゃいオエエエエ」


「本当だ! お前らいつの間に!?」


――ずっといました。


 なんだこの2人、と思っていると、シキネは私たちを睨みつける。


「ここで会ったがジャガイモの芽! アタシと勝負しろ!」


――え? いやだ。


 ここまでやりたくない勝負もなかなかないと思う。


 クロワはシキネの足を掴み、口を抑えながら言った。


「待つんじゃい。ウチは勝負どころじゃないんじゃいオエエエエ」


――そうだそうだ。勝負はお預けだ。


 このまま勝負の流れがなかったことになればいい。

 幸い、強力な援軍も出現する。


「シキネ! こっちにきなさい! ドラゴンをたおした『ほーび』をあげるわ!」


「褒美!? どんな褒美だ? うどん百年分か!?」


――うどんが百年分もあったら迷惑だよ。


 いや、今はそこじゃない。

 シキネはアイリスのご褒美に夢中だ。

 これはチャンス。


「今のうちに出発しよう」


「シキネちゃんに挨拶しなくていいの?」


「いい! ほら早く!」


「もう、しようがないわね」


 小さくため息をついたスミカさんは、しかしすぐに微笑んだ。


 自宅はアイリスやシキネ、クロワを置き去りに歩き出す。

 歩き出した自宅で、シェフィーは疑問を口にした。


「盗まれた国宝はどこにあるんでしょうか?」


「さあね。それを探すのも試練だろうから、地道に探すしかないと思うよ」


「そうですね。ここからは試練の旅です」


「試練の旅。なんか、そう言われると途端にやる気がなくなってきた」


「じゃあ宝探しの旅はどうですか?」


「おお! それいい!」


 ストイックな旅より、楽しい旅の方が私好みだ。


「とはいえ、せめて国宝の在処の目星ぐらいは欲しいよね」


 私は正直なことを口にしてしまう。

 すると、チョコを食べるミィアが私の隣に座った。


「ねえユラユラ~、アイリーからユラユラとスミカお姉ちゃんにお手紙だよ~」


「私たちに?」


「ミィアちゃん、そのお手紙、読んでちょうだい」


「分かった~! ええと『ぬすまれたこくほーは、ひがしにある〝テントだらけのくに〟から5キロみなみの〝のはら〟にあるわ!』だって!」


「国宝の場所、完全に把握してます!」


「なんで私たちに取りに行かせるんだろう……」


 いきなり宝探しの旅のほとんどが終わっちゃった。

 手紙の内容を聞いたルフナは、頼れるナイトさん風に口を開く。下着姿だけど。


「『テントだらけの国』なら私が案内しよう。あそこは羊の騎士団の駐屯地があるからな」


「ますますなんで私たちに取りに行かせるんだろう……」


 謎は深まるばかり。


 けれども、おかげで楽しい旅は楽な旅になった。

 楽な旅は私が大好きな旅だ。

 女帝の試練が簡単そうで何よりだよ。

今回で第8章は終わり、次回からは第9章『すごろくな国での話』がはじまります! どうぞ続きもご覧になってください!

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