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最終話? これまでと、これから

 メトフィアとの戦いから数週間。

 まおーちゃんが玉座に戻り、メトフィアが『ツギハギノ世界』の侵略を諦めたことで、マモノの出現は激減した。


 ただ、マモノは自然災害と同じ。

 世界の仕組みからして、マモノが消えることはない。

 だから勇者の仕事は続く。


 今日もシキネとクロワはアイリスを守るためテイト付近で野生生活をしているし、ルリとイショーさんは『ヤミノ世界』でまおーちゃんと一緒にマモノの動きを監視しているんだ。

 私たちも今までと同じく『ツギハギノ世界』をのんびり旅している。


 とはいえ、そろそろ旅の拠点が欲しいところ。


 拠点の候補として最初に挙がったのは、王女様ミィアの故郷『西の方の国』だ。

 でもこれはミィアが却下する。

 理由は以下の通り。


「あのねあのね、『西の方の国』は交通の便が悪くてね、関所の統計では旅人の訪問者数も少ないから、旅の拠点には向いてないんだよ! それに、ミィアはもっと楽しそうな街に住んでみた〜い!」


 妙に現実的な理由と無邪気な理由がまぜまぜ。

 加えて、ミィアのお母さん——女王様からこんな手紙が届いた。


『ミィアは次期女王。女王になれば、国の外を自由に旅するなんてできない。だからミィア、今のうちに外の世界を楽しんで!』


 優しさ溢れる手紙だね。


 こうして私たちは、『西の方の国』とは別の場所を旅の拠点にすることにした。

 他に旅の拠点にふさわしい場所があるとすれば、あそこしかない。

 自宅はすぐに旅の拠点を目指して歩きはじめた。


    *


 うっすらと雪が残る山道を、自宅はのしのし歩いてる。

 私はいつも通り、ゲームで世界大戦を阻止しているところだ。

 そんな中、自宅の外から仰々しくも甲高い笑い声が聞こえてきた。


「ククク、ククハハハ、ハーハッハッハ! やはり来たか、ジュウの勇者よ! 世界を影から支配するこの私に、ようやく仕える気になったようだな!」


「歓迎するのです」


 この口調と声は間違いない。

 私とスミカさんはテラスに飛び出した。


「シュゼとチル!」


「久しぶりね、2人とも! 会いたかったわ!」


 自宅前にどっしり構えるシュゼとチルに、私たちは笑みをこぼした。


 シュゼとチルがいるということは、私たちは『山の上の国』の近くにいるということ。

 そう、私たちは新しい旅の拠点である『山の上の国』へ向かう最中だったんだ。


 にしても、思ったより早い再会だね。

 スミカさんも同じことを思ったらしく、シュゼとチルに尋ねた。


「2人はどうしてここに?」


「クク、この私を誰だと思っている。世界を影から支配するシャドウマスターが、お前たちの到来を予言できぬはずがないではないか」


「これこそシャドウマスター様の予知能力なのです」


「まあ! すごいわシュゼちゃん!」


 目を丸くし、手を合わせ、素直に驚くスミカさん。

 直後、すごい勢いでテラスに飛び出したシェフィーがシュゼに向かって声を張り上げた。


「シュゼ! それは予知能力じゃなくて、わたしの手紙を読んだだけですよね!?」


「宿敵女神からの手紙。それは神託と同義。神託は予言と同義」


「それっぽい感じでまとめないでください!」


 ホント、この2人は仲良しな姉妹だね。


 シェフィーがツッコミを入れるかたわら、布団にくるまったミィアとルフナもテラスにやってきた。

 2人は明るい表情で言う。


「また『山の上の国』のみんなに会えるね!」


「ああ、そうだな。みんな元気にしているだろうか」


 楽しそうな2人の言葉を聞いて、チルはメガネを持ち上げ、シュゼは胸を張った。


「街には皆さんの到着を心待ちにしている人がたくさんいるのです。ワクワクなのです」


「さあ、この私がお前らを深淵の街へと案内してやろう。なに、恐れるな。街では歓迎の宴が待ち構えているのだからな」


「おお〜! 楽しみ楽しみ〜! 美味しいお菓子、いっぱいあるかな?」


「ああ……ミィアが幸せそうな顔をしている……さすがだぞ『山の上の国』の住人たち!」


 ミィアとルフナの楽しみが爆発したみたい。


 かく言う私も、久々の『山の上の国』は楽しみだったりする。

 いかにもファンタジー世界な『山の上の国』を拠点に旅をするなんて、もう完全にゲーム世界の過ごし方だもんね。

 楽しみじゃないはずがないよね。


 ここで、シェフィーがおもむろにつぶやいた。


「『山の上の国』に到着したら、旅に一区切りつきますね」


「だね」


「今まで、楽しいこと、びっくりすること、いろいろありました。でも不思議と、悲しいことは一度もありませんでした」


「当然だよ。だって私たち、大好きなみんなと、大好きなおウチでずっと一緒にいるんだから」


 ふと心に浮かんだ言葉を、そのまま口にした私。

 すると、スミカさんたちが一斉に私に抱きついてくる。


「まあ! ユラちゃんに大好きって言われちゃったわ! 嬉しい!」


「わ、わたしも、ユラさんのこと大好きです!」


「えへへ〜、ミィアもユラユラ、好き〜!」


「私もユラのことは好きだぞ。ミィアの次にだがな」


 みんなに好きと言われて、私の心はあったかくなる。

 うん、私、みんなに会えて本当に良かったよ。


 いきなり自宅が勇者に選ばれて、動くおウチに住みながらマモノ退治の旅をするなんて、最初は意味が分からなかった。


 でもおかげで、私はシェフィーと出会い、ミィアとルフナと出会い、たくさんの人と出会えた。

 人見知りの私が、ずっと自宅に引きこもりながら、それでもたくさんの世界を旅して、みんなと仲良くなれた。


 移動要塞自宅のおかげで、私はたくさんの世界を知ることができたんだ。

 スミカさんが、私を広い世界に連れて行ってくれたんだ。


「やっぱり、おウチは最高だね」


 さて、勇者に選ばれた自宅との旅は、まだ終わったわけじゃない。

 これから私たちは、自宅に引きこもったまま、どんな人たちや世界に出会えるのかな?

 最後まで『移動要塞自宅』を読んでいただき、ありがとうございます! ユラたちの旅はまだまだ続きますが、区切りがいいので、本作はここで終わりとさせてもらいます。あらためて、最後まで本作を読んでいただいた皆様に感謝いたします!

 それと、評価・ブクマ等よろしくお願いいたします!

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