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移動要塞自宅~勇者に選ばれたおウチと旅をすることになりました~  作者: ぷっつぷ
21けんめ 魔王城で戦うようで、戦わない話
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第8話 何に興味があるのかな?

 お菓子作りがはじまってから数十分後。

 大皿を持ったスミカさんと、満面の笑みを浮かべたアツイ、そっぽを向くメトフィアが私たちの隣にやってきた。


「はい、クッキー完成よ!」


「出来上がりなのだ!」


「…………」


 テーブルに置かれた大皿の上には、いろんな動物さんの形をしたクッキーがたくさん。

 クッキーの横に古代生物の化石みたいなのが並んでるのが謎だけど、とても美味しそう。


 私たちはゲームを中断し、我先にとクッキーを口に運んだ。


「オオ! ユウシャノ、オカシ、スゴク、オイシイデス! アツイモ、スゴイデス!」


「おいし〜! スミカお姉ちゃんたちのお菓子は、世界一だよ〜!」


「だね。それにしても、お菓子の飾りが化石って斬新すぎる気が」


 何気なく漏らした私の感想に、スミカさんとアツイの表情が強張り、メトフィアがピクッと反応した。

 間を置かず、スミカさんとアツイは言う。


「それは化石じゃなくて、メトフィアさんが作ったクッキーよ」


「え?」


「メトフィアは精一杯がんばっていたのだ!」


 どうしよう。

 もしかして私、地雷を踏んだかもしれない。


「あの……」


「化石で悪かったですわね! そうですわよ! 妾に料理など無理ですの! フンッ!」


「なんか、ごめんなさい」


 謝るしかなかった。

 とはいえ、化石にしか見えないクッキーを食べる気にもならなかった。


 もちろんメトフィアは機嫌を悪くし、エプロンを椅子の上に放り投げちゃう。

 うう、言ってはいけないことを言っちゃったよ。


 メトフィアもメトフィアでショックだったらしく、リビングの隅っこへ。

 ただし、リビングの隅っこでは、カメラを手にした下着姿のルフナと、妙に薄着なイショーさんがうごめいていた。


「ハアハア……ザラザラにゲームを教えるミィア先生……いいぞ! 新しいぞ! 私もミィアにいろいろと教わって……ムフフ」


「ちっちゃなまおーちゃんとサムイに挟まれて、一緒にアニメを見るルリ——フッフーン、ルリったらお母さんみたいね。ルリお母さんとの甘い時間、過ごしてみたくなっちゃったわ」


 下着姿で興奮する人と、薄着で妄想する人。

 明らかにヤバそうなリビングの隅っこなのに、メトフィアは2人に尋ねた。


「あなたたちは何をしているんですの?」


 すると、2人はメトフィアに駆け寄りまくし立てる。


「お! もしやメトフィア、お前もミィアという宇宙を漂いたいのか!? だったら私と一緒に、ミィアを崇め奉ろう!」


「は、はぁ?」


「フッフーン、ダ〜メ。ルリは私のだから、あなたには渡さないわ。あ、でも、たまには3人でやるのも——」


「なんなんですの!?」


「さあ! まだ見ぬ世界へ飛び込もう!」


「ほらほら、あなたも一緒に、甘い時間を過ごしましょ」


「け、結構ですわ! 失礼しますの!」


 怯えた顔をして一目散に逃げ出すメトフィア。

 まおーちゃんとヤミノ世界してんのー、3人の勇者と対峙しても表情ひとつ変えなかったのに、よっぽど怖かったんだね。


 さて、メトフィアが逃げた先では、シェフィーとスズシイの2人がペンを走らせていた。

 メトフィアは2人の後ろで足を止め、覗き込むようにして質問を投げかける。


「2人でお絵かきですの?」


 その質問は、心なしか明るい口調だった。

 ルフナとイショーさんのおかげで、化石の件は忘れてくれたのかな。


 質問を投げかけられたシェフィーは、ニコッと笑って答えた。


「いいえ、魔法陣の製作です。と言っても、お絵かきみたいに楽しいですけどね」


「自らが描いた線が魔法となり、幻想的な現象となる。魔法陣製作とは、本当に楽しいものであるな」


「さすがスズシイさんです! スズシイさんのおっしゃる通り、魔法陣製作は奥の深い、とても楽しいものなんですよ!」


 ペンを強く握り、瞳をキラキラさせたシェフィー。

 対するメトフィアは、シェフィーが書いた魔法陣をじっと見つめ、首を横に振る。


「興味ありませんわ」


「そ、そうですか……でも、気が変わったら、一緒に魔法陣を作りましょうね!」


「……考えときますわ」


 ちょっと名残惜しそうな顔をして、メトフィアはシェフィーたちのもとを去った。


 続いてメトフィアが足を止めたのは、テレビの前。

 テレビに映っているのは、ルリとまおーちゃん、サムイが見ているアニメだ。


「動く絵ですわね。興味深いですわ」


 そんなつぶやきを聞いて、サムイとまおーちゃんが口を開く。


「興味深いの、絵が動くことだけじゃない。物語、演出、セリフ、声を当てる者の演技、音楽、そういったものの総和が、心に訴えかける。何もかも、興味深い」


「メトフィア、これはアニメっていうんだよ。たのしいよ」


「フンッ、趣味じゃありませんわ」


 どうやらアニメはメトフィアの趣味じゃないらしい。


 と思ったのだけど、趣味じゃないのはアニメじゃなくて、アニメのジャンルなんじゃ?

 オタクの心が私にそう告げている。


 同じオタクの心を持つルリもそう思ったらしく、ルリはおもむろに立ち上がった。


「……きっと、メトフィアの趣味なら……」


 そうしてルリはリビングを出ていく。

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