第4話 おじゃまします
マモノをちぎっては投げしながら、スミカさんとシキネは魔王城の入り口に立つ。
もちろん、魔王城の門は閉じたまま。
だからシキネは、マモノを門に投げつけた。
ところが投げつけたマモノは青白い障壁に跳ね返されちゃう。
「なっ!? 弾かれた!? どういうことだクロワ!?」
「ウチにも分からないんじゃい。ただ、スミカのシールドと似たシールドで守られてるみたいなんじゃい」
そう言ったクロワに続いて、サムイとまおーちゃんが教えてくれた。
「魔王城の障壁は、どんな攻撃も通さない」
「あれね、めがみさまからね、もらったしーるどなの」
間違いない。
自宅のシールドと魔王城のシールドは、同じタイプのものなんだ。
これ、ちょっと予想外の事態だよ。
スミカさんも頬に手を当て、苦々しそうな表情。
「それは困ったわね。今までお世話になってきたシールドに行手を阻まれちゃうなんて」
まったくだよ。
あのシールドがどれだけ強いかは、私たちが一番知っている。
噴火だろうと隕石だろうと波動砲だろうと、あのシールドは突破できない。
シールドに守られてる限り、戦場のど真ん中でも、すやすやと眠ることができる。
そんなチートシールドが、敵に回っちゃったんだ。
このままじゃ魔王城に突入できない。
当然、私たちは悩んじゃう。
ルフナはサムイに尋ねた。
「シールドを抜ける方法はないのか?」
「ないことはない。ただ、今の状況では困難」
「どんな方法だ?」
「てっぺん付近のどこかにある隙間から、魔王城内部の障壁発生装置を壊す」
そう答えて、サムイは遥か上空を指さした。
彼女の指の先には、灰色の空に霞む魔王城のてっぺんが。
目をこらしてみれば、魔王城から何かアンテナみたいなのが出っ張っている。
あれがシールド発生装置なのかな?
「スミカさんとシキネなら、あれを壊せないことはないだろうけど……」
たしかに困難かも。
せめてシールドの隙間の場所がどこか分かれば良かったんだけど。
またも悩みはじめちゃう私たち。
ただ、発生装置を壊せるかもしれない勇者はもう1人いる。
魔王城を見上げていると、空を飛ぶ人影が目に映った。
と同時、まおーちゃんとサムイの表情が明るくなる。
「ルリおねえちゃんとイショーおねえちゃん!」
「ヤミノ世界してんのーの1人、スズシイもいる」
イの勇者と、もう1人のしてんのーの登場だ。
空を自由に飛び回るパワードスーツ・イショーさんとルリは、まっすぐシールド発生装置へ。
2人に群がる空のマモノたちは、スズシイが風魔法で遠ざけた。
この隙に、ルリたちは急上昇し、魔王城のてっぺんよりも高く飛ぶ。
雲に手が届く高さまで行けば、ルリたちは今度は魔王城のてっぺんめがけて急降下を開始。
どうやらシールドの隙間は魔王城のてっぺんだったらしい。
ルリたちはシールドを突き抜け、あっという間にシールド発生装置に近づいた。
すかさずルリたちがビームを撃てば、アンテナみたいな出っ張りが爆炎に包まれる。
「おお〜! 何かが爆発したよ〜!」
「まさか、障壁発生装置、壊した……!?」
「おねえちゃんたち、すごい!」
無邪気なミィア、唖然とするサムイ、瞳をキラキラさせるまおーちゃん。
魔王城を包んでいた青白いシールドは、ガラスが割れるみたいに崩壊していく。
もう魔王城を守る障壁はどこにもない。
発生装置もシールドも、私たちの悩みも、ルリたちが全部吹き飛ばしてくれたんだ。
スミカさんは驚きながら、やる気満々に。
「フフフ、シールドが消えれば私たちの出番ね。シキネちゃん! 行くわよ!」
「ああ! 行くぞ! うおりゃああ!」
自宅とシキネは突撃を再開した。
シールドがなくなれば、魔王城の門はシキネの殴り1発で開く。
粉々に吹き飛んだ扉の向こうは、いよいよ魔王城の敷地だ。
ただし、まだ油断はできなさそう。
魔王城を囲む壁と魔王城の間に広がる庭には、大小様々個性豊か魑魅魍魎なマモノたちがぎゅうぎゅう詰めになっていた。
「マモノの数、すごい!」
「ウゴークタイージュにモードクキノコ、ワームライダーまでいるぞ! レジェンド級マモノが勢揃いだ!」
ほとんどマモノの展覧会みたいだよ。
たくさんのマモノたちを前にして、自宅はガトリング砲を撃ち放った。
弾丸と一緒にシキネも飛び出し、魔王城の庭から次々とマモノたちが弾け飛ぶ。
シキネにとっては、相手がレジェンド級かどうかなんて関係ないらしい。
好き放題に暴れるシキネは、公園で走り回る子供みたい。
「強いマモノばっかりだぞ! 楽しいな!」
「シキネが楽しそうで何よりじゃい。ほら、もっとクロワッサンを食うんじゃい」
「うおおおお! 力が湧いてくる! アツイ、準備はいいな!」
「いいのだ! 一緒に戦う——のえええええええ!!!」
相変わらずシキネに武器として振り回され、満足げなアツイ。
暴れ回るシキネとアツイによって、魔王城の庭には轟音と炎が躍り狂う。
そうしてマモノたちの数は減っていく——ことはなかった。
シキネがいくらマモノを倒しても、魔王城の中から次々とマモノが現れるんだ。
もしかして魔王城ってマモノ工場なの? とすら思えるほどの勢い。
ここで空飛ぶイショーさんとルリ、スズシイが戦闘に加わった。
「激しいの、いくわよ」
「……近接航空支援、開始……スズシイも、協力をお願い……」
「任せたまえ、お嬢様方」
大空から低空まで降下し、ルリとイショーさん、スズシイはマモノたちの頭上をかすめる。
高速で飛び抜けていくパワードスーツと緑のマントからは、ビームと風魔法が放たれた。
マモノたちはビームに焼かれ、あるいは風魔法に引きちぎられ、紫の煙に姿を変える。
空爆は大成功だ。
勇者としてんのーの空爆によってボコボコに耕された魔王城の庭。
それでもまだ増えるマモノを見て、スミカさんは立ち上がった。
「次は私の番ね」
ガトリング砲、ミサイル、戦車砲——なんでもいいから撃ちまくる自宅。
さらにサムイも戦場に飛び込み、魔王城の庭はお祭り状態に。
アツイに燃やされて、シキネに殴り飛ばされて、スズシイに切り刻まれて、ルリとイショーさんに焼かれて、サムイに凍らされて、スミカさんに撃たれる。
3人の勇者と3人のしてんのーが集合して、マモノは散々だね。
これはもう、勝負ついたかな。
「よし、私もゲームの続きやろう!」
ということで、私は戦場を背景にゲームに没頭するのだった。