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第4話 にゃ!

 人間が住む家の3分の1くらいの大きさの、木でできたおウチ。

 石と藁で作られた市場。

 頭は鮭、体はうなぎみたいな魚の謎オブジェ。


 それがたくさん並ぶ村に自宅はやってきた。

 村の中をのしのし歩く自宅から外を見ていたミィアとシェフィーは目を輝かせる。


「おお〜! マジューさんがたくさんだ〜!」


「なんだか皆さん、かわいいです!」


 思っていたのと違う反応。

 マジューがかわいいってどういうこと?


 気になった私は、思わずゲームのコントローラーを置き、マジューの姿を確認した。

 結果、私はミィアとシェフィー以上に心躍らせる。


「獣人!? 獣人だ! というかネコだ!」


 村に住んでいたのは、ネコ耳にネコの尻尾、もふもふがかわいいマジューたちだった。

 見た目は、完全に服を着たネコだね。


 一方のネコマジューたちは、歩く自宅を見るなり、あたふたしはじめる。


「にゃ、にゃんだ!? 動く家!?」


「もしかして、ジュウの勇者じゃにゃいのか?」


「ウソ?! 勇者が攻めてきたのにゃ!?」


「や、やや、やめてくれ! ここは何もにゃい、小さにゃ村にゃんだ!」


「してんのー様を呼ぶのにゃ!」


 どうしよう、話が物騒な方向に行っちゃってる。

 慌てるネコマジューはかわいいんだけど、スミカさんは申し訳なさそう。


「あらあら、みんなに怖がられちゃってるわ」


「仕方ないさ、スミカさんは勇者だからな」


「それもそうですが、単純に歩く自宅に驚いてるだけな気もします」


 ルフナの言うことも、シェフィーの言うことも、どっちも正しいんだろう。


 ただ、私たちはマジューの敵じゃない。

 スミカさんは考え込んだ。


「どうにかして、みんなと仲良くなれないかしら?」


 私も同感だよ。

 あわよくば、仲良くなったネコマジューをもふもふしたい。


 そんな私たちの思いを汲み取ってくれたのは、まおーちゃんだった。

 まおーちゃんは立ち上がり、テラスに出ようとする。


 でもその前に、ネコマジューたちがさらに騒がしくなっちゃった。


「マモノだー! マモノが近づいてきたにゃー!」


「勇者に続いてマモノにゃ!?」


「ああ……おしまいにゃ……」


 絶望したのか、その場で丸くなるネコマジューたち。

 対する私は驚いた。


「え!? もしかしてマモノって、マジューも襲うの!?」


「大変です! マジューさんたちを助けないと!」


 マモノたちは本当に災害と同じなんだね。

 私たちがやるべきことは決まった。

 テラスに出たスミカさんは、丸くなるネコマジューたちに呼びかける。


「みんな、建物に隠れてちょうだい!」


「にゃっ!? 誰が勇者の言葉にゃんかを——」


「私はみんなを助けたいのよ! だから、お願い!」


「……ええい! どうにでもにゃれ!」


 ヤケクソ宣言と同時に、ネコマジューたちは小さなおウチに駆け込んだ。

 これで村の安全は確保できたはず。


 村の外に目を向ければ、オークみたいなマモノ数百体がこっちに向かってきていた。

 スミカさんはソファに座り、自宅からはガトリング砲などなど、いつもの武装が飛び出す。


「マモノさんたち! 容赦はしないわよ! ええい!」


 かわいい子たちを助けたいと思っているときのスミカさんは強い。

 村とマモノたちの間に何もないのも相まって、自宅からの攻撃は苛烈を極めた。

 加えてルフナとシェフィーがテラスに出る。


「私も手伝おう」


「あ! わたしも助力します!」


 こうして、自宅からは銃弾と砲弾、ミサイル、炎魔法攻撃、氷魔法攻撃が途切れることなく放たれた。

 ほぼ花火大会みたいな攻撃に、マモノたちはなす術がない。


 ゲームをはじめる間もなく、ダークな色合いの大地に紫の煙が漂う。

 村に迫っていたマモノたちは、村のはるか手前で消え去った。

 爆音まみれの戦場が通り過ぎれば、私とミィア、まおーちゃんは胸を撫で下ろす。


「思った以上にあっという間だったよ。この戦い方も慣れたものだね」


「さすがスミカお姉ちゃんとシェフィー、ルフナの3人だよ〜!」


「おねえちゃんたち、すごい」


 そうやって胸を撫で下ろし、驚くのは私たちだけじゃない。

 おそるおそるおウチから出てきたネコマジューたちは、尻尾を立てて大喜び。


「ホ、ホントに助けてくれたにゃ!」


「勇者がマジューのわたしたちを救ってくれたにゃ!」


「よく分からないけど、やったにゃ!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねるネコマジューたちは、自宅の周りに集まる。

 くりくりとしたたくさんの瞳に見つめられ、私たちはそのかわいさにノックアウト寸前。

 私の人見知りも、ネコマジューのかわいさの前では無力みたいだ。


 このタイミングで、まおーちゃんがテラスに出た。


「みんな、ぶじでよかった」


 はじめて見る、魔王としてのまおーちゃん。

 赤い瞳と2本の小さなツノ、黒いドレスと風になびくマントを見て、ネコマジューたちはまたも大騒ぎ。


「にゃ!? まおー様にゃ!」


「にゃにゃ!?」


 村のあっちこっちこから、驚きの『にゃ!』が聞こえてくる。

 まあ、ある意味当然の反応かな。

 私たちの前に集まったネコマジューたちは顔を見合わせる。


「まおー様と最強の勇者様にゃ! ほぼ神様にゃ!」


「歓迎の証として、みんなでにゃーおの舞を披露するにゃ!」


「いいアイデアにゃ!」


 そしてネコマジューたちは、自宅の前で整列した。


 続けて軽快な小太鼓の音が鳴り響き、村の中央に巨大猫じゃらしが現れる。

 ネコマジューたちは、その猫じゃらしに目の色を変えてネコパンチを当てはじめた。


 なんだかよく分からないけど、あれがにゃーおの舞らしい。

 私たちはその場に崩れ落ちる。


「もしやここは天国!?」


「はわあ……かわいすぎです!」


「どうしましょう! みんな抱きしめちゃいたいわ!」


「くっ! 私にとっての神はミィアだというのに……みんなかわいい! 悔しい!」


「わ〜い! もふもふパラダイスだ〜!」


「みんな、げんきそう。よかった」


 なんやかんやで私たちは、ネコマジューたちと仲良くなることに成功したみたいだね。

 幸先はいい感じ。

 このままの勢いで、メトフィアを倒すところまで行っちゃおう。

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