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第6話 中ボス・ギョニン

 2人の勇者とメトフィアの部下であるマジューが睨み合っている。

 魚系のマモノに囲まれたギョニンは、左の胸ヒレで掴んだモリを高く掲げて言った。


「勇者2人と戦えるとは、なんたる誉れ! 今こそ我が武名を轟かせるとき!」


 謎に武士っぽい口調のギョニンに対し、イショーさんを着たルリは静かに語りかける。


「……まおーちゃんは、私たちが保護、してる……今降伏すれば、まだ間に合う……私たちと戦えば、あなたは魔王に、叛逆することに、なる……」


 ルリは可能な限り、平和的に物事を解決したいらしい。


 ところがギョニンは聞く耳を持たない。

 モリの先端をルリとイショーさんに向け、ギョニンは宣言した。


「何を今さら! メトフィアとともに魔王様を追放した時点で、我らはとうに叛逆者ぞ! それに、勇者と手を組む魔王など、我らは認めん! マモノたちよ、奴らを打ち倒せ!」


「……残念……」


 命令に従い突撃するマモノに向かって、ルリとイショーさんは容赦なくビームを撃った。

 そうして2人はマモノたちを蹴散らし、直接ギョニンを攻撃しようと動く。


 ところがギョニンはビームをひらりとかわし続け、マモノたちもわらわらとルリたちの行く手を阻み続けた。


 ちなみに私は、外の様子を伺いながらゲームの中ボス最終形態と激闘を繰り広げている最中。

 ギョニンとの戦闘を眺めるルフナは顎に手を当て分析した。  


「あのギョニン、なかなかの強者だぞ。きっと遠距離攻撃はほとんど避けられるかもな」


「そうなの? じゃあ、私はどうすればいいのかしら?」


「マモノです! ギョニンが率いるマモノを倒して、ルリさんとイショーさんの敵を減らしましょう!」


「ああ、それが良さそうだ」


「分かったわ! ルリちゃん、イショーちゃん、待っててね!」


 すぐさまスミカさんはマモノたちに攻撃を開始した。

 自宅から撃ち出された大量の弾丸とミサイルは、ルリたちを邪魔するマモノに殺到する。


 これに対抗してギョニンはマモノの群れをふたつに別け、一方の群れを壁にした。

 おかげでスミカさんの攻撃はマモノの壁に阻まれ、ルリたちはもう一方のマモノの群れに邪魔されたまま。


 ただ、マモノの群れをふたつに別けたことでマモノの減りが一気に早くなり、ギョニンも焦り気味らしい。


 というところで、私は外の戦いに意識を集中できなくなる。

 なぜなら私は、中ボス相手にちょっと苦戦していたから。

 結果、ギョニンの言葉と、中ボスに苦戦する私の独り言が交互に響き渡る。


「やるではないか! 2人の勇者!」


「最終形態だからって余裕そうな戦い方を……!」


「さあ、我が手柄を得るか、貴様らが手柄を得るか、決めようではないか!」


「最後に勝つのは私だよ!」


「ユラさんとギョニン、奇跡的に会話になっています!」


 なんだかんだでシェフィーのツッコミが炸裂するという、いつものリビング。

 私はツッコミも外での戦いもガン無視し、ゲームに完全集中した。


 間合いを見極め、MPを限界まで使い、同時に立ち回りにも注意する。

 中ボスのモーションをよく見て、回避とガードを繰り返し、決定的な瞬間を見逃さない。

 今までに培ってきたゲーム経験値をフル稼働させ、私は全力を出した。


 どうやら私が全力を出せば、中ボスも敵じゃなかったらしい。

 外の様子をガン無視してから、私は中ボスを圧倒し、すんなり中ボスを倒しちゃう。


「やった! 中ボス倒した!」


 コントローラー片手にガッツポーズ。

 直後、外からギョニンの言葉が漏れ聞こえてくる。


「くっ……我をここまで追い詰めるとは……」


 見ていないうちにマモノたちは壊滅寸前、ギョニンも追い詰められていた。

 勇者の2人が全力を出せば、ギョニンも敵じゃないってことかな。


 ビームをひらりとかわすギョニンとルリたちの間に、マモノは一体もいない。


 ここでルリたちはジェットを全開にし、一気にギョニンとの距離を詰めた。

 ルリとイショーさんは、一撃でトドメを刺すつもりだね。


 問題は、あれだけビームを避けていたギョニンが微動だにしないこと。

 何を考えているのだろうと思えば、ギョニンは表情を歪ませ、右の胸ヒレを掲げた。


「愚かな! イの勇者よ、隙あり!」


 その瞬間、スミカさんの攻撃の壁となっていたマモノが一斉にルリたちに襲い掛かった。

 ルリたちはマモノに囲まれ身動きが取れない。

 続けてギョニンは、まがまがしい闇のオーラに包まれたモリを構える。


「我が必殺の奥義『ダクネス・ウォーター・カッター』を馳走してやろう!」


 勇ましい掛け声と一緒に、闇のオーラが水をまとい、高速で回転しはじめた。

 そしてギョニンがモリを投げると、高速回転する水もモリを追い、ルリたちを狙う。


 高速回転する水は、マモノごと切り刻む勢い。

 私は最悪の未来を予想しちゃう。


「スミカさん! ルリとイショーさんが!」


「ダメだわ! マモノたちが私の攻撃の盾になっちゃって、攻撃が届かない!」


「ルリ……イショーおねえちゃん……!」


「ここは私に任せろ!」


「ルフナ!?」


 突如として、不死鳥の剣を振り上げたルフナがテラスから勢いよく飛び出した。

 水の中でも不死鳥の剣の炎の魔法は衰えない。


 炎の尾を引きながらルフナは水中を突き進み、同じく水中を突き進むモリを捉え、叫んだ。


「家族を、バラバラにはさせない!」


「なんだ貴様は!?」


「うおおおお!」


 ルフナは蒸発した水を切り裂きながら不死鳥の剣を振り下ろす。

 振り下ろされた剣の先には、ギョニンが放ったモリと、高速回転する水が。


 炎属性と水属性なら、ゲームとかでは水属性の方が強いイメージ。

 けれども不死鳥の剣の炎はギョニンの水よりも強かったらしい。


 高速回転する水の勢いにルフナが吹き飛ばされる代わり、モリと高速回転する水は、炎に焼かれて消え去った。

 これにはギョニンもびっくり。


「我が奥義を人間如きが受け止めるだと!?」


「……これで、終わり……!」


 びっくりするギョニンに対し、マモノをなぎ払ったルリが両の手の平を向けた。

 両の手の平からは光の巨木みたいなビームが飛び出し、大量の水を押し退けていく。

 ギョニンは驚きで一歩も動けないまま、ビームの真ん中に。


 数秒後、ビームが消えるとマモノは全滅、ギョニンは気絶したままぷかぷかと浮かんでいた。

 一連の光景をリビングから眺めていたシェフィーは、嬉しそうにぴょんとジャンプする。


「やりました! ギョニンを倒しました!」


「ルフナは!? ルフナはどこ!?」


 珍しく焦った表情のミィア。

 少しして、リビングにルフナを抱えたルリとイショーさんがやってきた。

 2人がルフナをソファに横たわらせれば、ミィアはルフナに駆け寄る。


「ルフナ! ねえねえルフナ! 起きて!」


「うう……ちょっと無理をしすぎたみたいだなぁ……」


「もう! ルフナのバカ!」


「イタタ! ミィア、あんまり叩かないで――いや、もっと叩いてくれ!」


「バカバカバカ~!」


 ぽこぽことルフナの肩を叩くミィアは、ちょっと涙目。

 これを見たイショーさんは、人差し指でルフナのおでこをつつき、言った。


「愛する人に一瞬でも寂しい思いをさせちゃ、ダメだぞっ」


「……イの勇者も、人のこと言えないだろ」


「フッフーン、それもそうね」


 おかしそうに笑ったイショーさんは、すぐにルリの腕に抱きつく。

 すると、まおーちゃんもルリとイショーさんに抱きついた。


 一方のミィアはルフナをぽこぽこしたままで、叩かれるルフナは嬉しそう。


 やっぱり、大好きな人と一緒にいる時間が一番なんだね。

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