「トンガリ帽子の村」
トンガリ帽子のお兄さんが、村のはずれで知らない人に声をかけた。
「こんにちは、ここはどんな村ですか?」
知らない人はトンガリ帽子を見つめながら、不思議そうな顔で答えた。
「あなたが知らないはずないでしょう?」
知らない人は、トンガリ帽子のお兄さんの事を知ってる風だけど、サッパリ覚えのないトンガリ帽子のお兄さん。
「はて、私はこの村に来たのは初めてです。全く知らないのです」
「そうかい、そのトンガリ帽子はこの村の名産品だから、てっきりな」
そるほど、そういう事かとトンガリ帽子のお兄さんは思ったけれど、もう一度聞いてみた。
「ところで、この村はどんな村なんですか?」
ハハハと笑いながら知らない人は今度は優しい顔で答える。
「ああスマン、この村はなんて事はない、トンガリ帽子を作ってる村だよ」
そうか、この村はこのトンガリ帽子を作ってる村だったのか。
トンガリ帽子は人からの貰い物なお兄さん。
その事を知って嬉しくなったけれど、一つ気になり聞いてみた。
「なんでこの村の人達はこのトンガリ帽子をかぶっていないんだい?」
「え?だってねえ、なんか変じゃないか?いや、君には似合う帽子だけどさ」
知らない人は少しニヤケながらそう言ったので、トンガリ帽子のお兄さんは自分の帽子を見上げながら首を傾げた。
「この村の人達は自分達が変だと思ってる帽子を作ってるのかい?」
純粋な瞳で聞いたので、知らない人も正直に答えた。
「村の誰かがふざけて作った帽子を試しに町に持っていったら、これがよく売れてね。それ以来このトンガリ帽子ばかり作ってるんだよ」
「へー、それは運が良かったね。私としてもこの帽子をかぶる事が出来たし、ウィンウィンってやつだね、ありがとー」
「いえいえ、こちらこそ」
そう言うと、知らない人は村の中へ戻って行き、トンガリ帽子のお兄さんは村の外へと歩いて行った。
トンガリ帽子のお兄さんの心は、村の事が分かって満足気分で一杯だった。
おしまい。