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ブラック職業

作者: 南波英人

目覚めは最悪だ。悪夢をみていたのか鼓動が早く感じられた。


悪夢の続きなのか、立たされた状態で体が固定されていた。


(なんだよこれ、体が動かねぇ)


少しずつクリアになっていく頭が今の状態を考え始める。


確か昨日、ムカついていたから公園にいたカップルを襲って男をぼこぼこにして女に乱暴したことまでは覚えてる。


でも、その後の記憶がなかった。


そもそも、なんで俺の体が縛られているんだ。


口にはマスクがされており、呼吸しづらくイライラする。


マスクごしなので声がこもるが叫び続けた。


イライラが絶頂に達しそうになった頃、白衣を着た二人の男がきた。


「おい、お前ら俺に何してんだよ、早く外せ。殺すぞ」


不利なのは分かっているが叫ばずにはいられない。


でも、その男達は私の存在などないように話し合っていた。


(ふざけんなよ。絶対殺してやる)


叫び過ぎたせいか息苦しくなり呼吸を整えるため目をつぶって深呼吸に集中していた。


目を開くと自分の両隣に男達が来ていた。


「そうだ、早くはずせ。ボケが」


男達は至近距離にいるのにもかかわらず私の言葉に反応せず何かを用意していた。


頭も固定されているのでよく見えないがまるで手術でもするようなメスのようなものが見えた。


「おい、ふざけるなよ。少しでも切ってみろ、ただじゃおかねえぞ」


少しずつ、心の中から恐怖が滲み出てくる。


もしかして、俺を痛めつける気か。


よく映画であるように残虐に・・・・・


その瞬間この場所にいてはいけない。


逃げなくてはと頭の中で警報が鳴り響く。


でも、体はどんなに動かそうとしても動くことはなかった。


「おい、やめろよ。なにが必要だ。金だったら用意するからやめてくれ」


どんなに懇願しても男たちは止まらないし自分の顔すら見ようとしない。


イメージしてしまったメスで切られるところを。


そしてそのイメージ通りにそれは行われた。


激痛という表現で物足りない程の衝撃が両肩から頭に伝わる。


メスで肩の肉を少しずつ切られていく。


あまりに激痛だと麻痺するなんて聞いたことがあったがそんな逃げ道は私には見えなかった。


叫びすぎて口の中で鉄の味が広がる。


骨の近くまで行ったのか今度はノコギリで切り始めた。


許してくれ、悪夢ならさめてくれ。


何度も願い、そして何度も拒絶された。


どれほどの時間が過ぎたのだろう。


私は自分から離れた両腕を見て意識がなくなった。








「本当に再生するんですか?あいつの腕」


『俺も最初は驚いたが1日たつと元通りだ』


「気持ち悪いっすね」


『まぁ仕方ないんじゃないか。悪いことして捕まった刑罰なんだから』


「自分だったらこんな刑罰あるって知ってたら絶対悪いことはしないっすね」


『俺も同じだよ。あいつの場合、余罪もあるし二人殺しているからあのまま70年間切り刻まれることになるな』


「70年っすか地獄っすね」


『薬のせいで狂う事も出来ないけど、記憶は維持できないから毎日、今日の繰り返しらしい』


「それでこの腕はどうするんです?」


『これは他の囚人のご飯』


「うわっ人肉食うとかシャレになんないっすよ」


『しょうがないさ。囚人が多過ぎて財政負担大きくなりすぎたし。刑罰と食費代一緒くたにできて一石二鳥だ』


「そんなもんすか?」


『昔みたいに人権なんて騒ぐ人もいないし仕方ないんでない?さぁ、これおいてきたら残りの足と他の囚人のとこ行くぞ』


「あと何人です?」


『あと20人だな』


「こんな大仕事二人でやるなんてブラックっすね」


『仕方ないさ、もう人権が尊重される時代なんて終わってるんだから』


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