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夏の日、駄菓子屋の あの子と

作者: 散桜

テレビでやっていた駄菓子特集を見て、脳裏に浮かびました。

懐かしの あの日、あの光景、あの空気。


パッと浮かんだ、『よくある お話』だとは思います。


「急がないと・・」

この方向に抜ければ、銀行が近い。


この細道は初めて通る。

この道は通ったこと無かったけど、近くの道なら何度も通った。ただ、こんな所にこんな道があるなんて知らなかった。

何年も居た街だってのに。


裏通りってのはスゴいもんだ。

表通りとはまるで違う。この通りはまるで『昭和』だ。

映画で見たオールウェイズの町並みに近いんじゃないか・・?



とりあえず、銀行に行ったら何万か下ろそう。

今、財布の中には500円ちょいしか残っていない。

腹一杯食べるには心許ない。いや、足りな過ぎるだろうよ。


何で、ここ数日 銀行に行けなかったんだか分からないけど、忙しかったり疲れてたりで、気付けば小銭だけ。

小学生かよ。


「・・ん?」

あれは・・。駄菓子屋?

こんな街に、こんな年代物の駄菓子屋があったのか?


思わず立ち止まってしまった。


何て言うか・・ノスタルジー?

立ち止まらずにはいられなかった。


木造の古びた平屋。

磨りガラスにすら見えるくらいにザラザラに傷付いたガラスが はまった引き戸。

ガラス戸越しに見える店内には駄菓子や玩具が見える。

玩具は、まさしく年代物だ。

あそこに見えるのはスーパーボールか?

懐かしい・・。



・・っ!!


となりに、子供が居た。


いつの間に居たのか分からないけど、手を伸ばせば頭に触れるくらいの近さだ。

真横だぞ?しかも、この近さだ。この距離に子供が来たのに気付かないくらい熱心に店内を覗き込んでいたらしい。


しかし、ずいぶんと古びた格好の子供だ。


肩に触れるくらいまで無造作に伸びた感じの髪。前髪で隠れてるけど、キレイな子なんじゃないかと思う。

まぁ、それくらいなら普通だろう。

古びた感じなのは服だ。


多分、元は真っ白だったんだろう。もはや白とは言い難い色合いにくすんだ、Tシャツみたいな生地のノースリーブのワンピースだ。

・・・このくらいの年ならキャミソールとか着るもんなんじゃないだろうか?

薄手のワンピースの胸もと、乳首の突起が見える。

視線を下に向ければ、下も・・・・・白だな。

白い、お子ちゃまパンツが透けている。


この子の親は大丈夫か?

昔なら、こんな危うい格好の女子なんて いっぱい居たもんだけど・・。

性犯罪者が見たら、間違いなく犯罪に走るだろう。

俺だって、ジクジクと股関が反応している。

いや、俺にロリコン趣味は無い。

無いけど、透ける乳首とパンツには『来る』モノがある。


気まずくて視線を下にやった。

すぐ後悔した。

ワンピースから出た、脚。

まだ女の肉付きとしては足りな過ぎるけど、なんだろうなぁ・・この気まずさ。

細くて、締まった太もものふくらはぎ。

そして、最近とんと見なくなったタイプのビーチサンダル。


ノースリーブから出た腕も、細くて折れそうだ。


って!俺は何やってんだ。

他所さまの、ましてや生理も来てなそーな子供に、なんて目を向けてんだ。



そうか。

俺が店先に立ってるから入れないのか。

「悪い・・。邪魔だったね・・」


ん?入ろうとしない・・。

変わらず、店内をジッと見たままだ。

「入らないの?」


「・・・お金、ないから・・」

静かな声だ。

居たなー・・クラスに一人は居たよ、こういう静かな声で話す女子。


少し視線を下げたら顔が見えた。

・・・・可愛いなー・・。

クラスの男子がうらやましいわ・・。

この年代の女子って、まだ羞恥心が足りないからさ。

けっこうモロにパンツ見えてたりすんだよなー・・。


ここで出会ったのも、何かの縁だろう。

「おじさんが買ってあげるよ」

「いいの・・?」

「あぁ・・。少しね」

買ってあげるって言ってから、手持ちがヤバいのを思い出した。

しかし今さら引けないな。

「入るか」

「うん・・」



店内はカラッとした感じだった。

懐かしい感じだ・・。

なんつぅか、乾燥剤を敷き詰めた様な?そんな乾燥具合だな。

「好きなの選びなよ」

「うん・・」


改めて店内で見ても、やっぱ危うい・・。

すっげぇ透けてるわ・・。

向こうを向いて中腰になろうもんなら・・すっげぇパンツが透けて見える。


ふぅ・・・。


銀行行ったら、風俗でも行くか。

子供相手にムラムラするなんで、どんだけ溜まってんだって話だ。



「選んだ・・」

「よしっ。買うか」

「うん・・」

店の奥の、いかにも駄菓子屋のおばあちゃんって感じのおばあちゃんに見せて、会計を済ませた。


320円。


足りて良かった。

さすがに、駄菓子代も払えない大人なんて恥ずかし過ぎるからな・・。


「はいっ」

「・・・ありがとう」

「どういたしまして」


ん。店を出ようとした俺の手に、ひんやりとした感触が触れた。

無表情めな顔が見上げていて、その手が俺の手を握っていた。

「行くか」

「・・・うん」


ひんやりとした手だ・・。

子供の手って、すっげぇ熱いイメージだったんだけど、大人の女の手みたいだな・・。


駄菓子屋から出ると、カラッとした暑さが戻って来た。

やっぱ、夏は暑いもんだな・・。


「ありがとう・・」

ん・・。良い事した気がする。


「じゃあ、オレは行くよ」

「うん・・」

「一気に食べるなよ?虫歯になるぞ?」

「うん・・。だいじょうぶ」


ひんやりとした小さい手が離れた。


さて・・銀行間に合うかな・・あ、時間過ぎてる。

手数料かかっちまうな・・。


「おじさん・・」

「ん?」

「お礼・・したい・・」

「気にしなくていいよ」

プルプルと首を振る仕草は、まだまだ子供だな・・可愛いくて、頭撫でたい・・。

「じゃあ、笑顔が見たいな」

子供っぽくはにかんでくれた。

「・・・はずかしい」

「ごめんごめん・・」

ははっ。こんな可愛らしい子供相手に、さっきの俺は何考えてたのやら・・アホか。

「充分だよ♪」

少女の頭を軽く撫でた。

ほっそい髪がサラサラして気持ちいい。


「じゃあな」

「うん・・」




裏通りを抜け、銀行で手数料込みで4万下ろした。

さっき このくらいあったらなー・・もう少し買ってあげれたのに。




その後、何度探しても、その『裏通り』は見つからなかった。

あの裏通りやあの駄菓子屋、そして・・あの少女は、幻だったんだろうか・・。

いや・・、あの時つないだ手の感触は、今でも思い出せる。それに、あの ひんやりした感触は、いつまでも消えない。


またいつか、いつかきっと、彼女に会うだろう。

そんな確信がある。


なんでだろう。



その白い少女は。

そのひんやりとした感触は。

その確信は。


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