晴れのち曇り
生きるってのはわりかし面倒である。
そして面倒な分だけ楽しい。
俺はタカシ。ああ、ただのタカシでいい。
無職だ。無職つっても、風景動画とか風景画をとって
ブログや、各動画サイドにあげて生活費を稼いでる。
雨の日も風の日も、台風の日も、雷がなりまくっても
雹が落ちてきても、竜巻すら俺の食い扶持だ。
稼いでるつっても、そこらのフリーターと同じ程度の額だ。
月によって収入の波もあるし、ぶっちゃけバイトしてた方が遥かに楽だろう。
数少ない友達にはよく笑われる。
いい年なんだから、まともに働きながら、
ついでにそれやれよ。ともよく言われる。
だけど、俺はこういう暮らしが性にあってるんだ。
自分の視点だけで、稼いで行くって言うのかな。
写真のコンテストで一度も大きな賞を取った事無い
俺の視点を、視野を沢山の誰かが心地よく見て、評価してくれている。
それが俺に生きる力をくれる。
いつまで出来るか分からないが
とにかく今はこれを続けたい、そう思いながら毎日生きている。
まあ、そんな感じで、今日はいい風景を探しに
俺のボロボロの軽自動車に乗って、隣県の小さな町までやってきた。
車を河原の近くに止めて、風景を撮影するのにちょうど良い場所を探す。
ちょうどガキどもの登校時間の直後を選ぶ。
ガキどもと鉢合わせると、色々とめんどくさい。
写真のこと聞かれたり、不審者だと思われたり
酷い時は警察を呼ばれることもある。
別にそんなに怪しい格好では無いはずだけどな。
カメラや三脚を入れたリュックがダメなのか。
いっそ、星柄とかハート柄のに変えてみるか。
いや怪しさが倍増しそうだな。やめとくか。
ぼやっとそんなことを考えながら、河原の道を歩いていると
下っ腹辺りに、何かが突進してきた。
「いたっ」
思わずうずくまると、俺にセーラー服の若い子が
駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか!?」
「い、いや。大丈夫。ちょっと下っ腹に当たっただけだから」
「どうしよう。病院にいかなきゃ」
「おいおいおい……大げさすぎるだろ……。
すぐ治るから、学校行けよ」
少し赤みかかった黒髪ショートの女の子は、
「……」
しばらく悩んでから、携帯を取り出した。
通報するのか。それとも救急車でも呼ぶのか。
とビビッていると
「一年の古木です。はい、今日は体調が悪いので
欠席します。はい。すいません」
「休むのか」
「はい。本当に病院いかなくていいんですか?」
「いや、いいよ。仕事あるし」
「……お仕事、何されてるんですか?」
「興味ある?」
「私服だし、こんな時間に不思議だなって」
「ははは……疑われないほうがおかしいわな」
苦笑いしながら、カメラの撮影している中身を見せる。
「風景ばかりですね」
「これをネットにアップして生活してる。嘘みたいだろうけどほんとだよ」
「いや、信じますよ。
ネットで生活してる人いるって知ってます」
「そっか……じゃ、仕事始めるので。
ここらで」
カメラをバッグに戻して、立ち去ろうとすると
「……」
女の子は意を決した顔をして
「私を誘拐してくれませんか?」
と言ってきた。