腹が減っては
生きることはなんぞやと聞かれ、答える前に腹が鳴る。
つまりはそういうことだよ。
「あ、起きた」
「……ここは?」
「なんか助けを求めたら感謝されて空家貰った」
「よし。詳細に話せ」
他に頼るあてもなく、私はなけなしのコミュ力を振り絞り村人さん達に助けを求めた。
コミュ障の言うことの半分も理解できてなさそうな村人さん達だったけど、全身全霊のボディランゲージに恐れをなしたのか、渋々私についていくとそこには気絶した山賊2人と全裸男がいた。
なんでもあの山賊は度々村に嫌がらせをしてきては食料をくすねていく厄介者だったらしく、村人さん達は感謝した。
今日住むところがないと言うとこの空家を提供してくれた。
家と言いつつもどちらかと言うと小屋と言った方が正しい。
入口を開けたら玄関などなく、土間の上に木材で床をこしらえ、窓は1つ、あとは布団(でいいのか分からないらしきもの)が2組と生活雑貨一式だ。
衛生面とかはあのバイオハザードと天秤にかければ宇宙の彼方だ。
「結果オーライ」
「我はオーライではないのだが?」
どうせ全裸なんだからオーライじゃないだろ知ったことか。
ちなみにこの裸王は布団(だと思われる何か)に寝かしてある。寝かしたのは村人さんなので私はノールックだ。
「と、いうわけで。私達はどうにか雨風を凌げる場所を手に入れました」
「城には帰るのではなかったのか?」
「私に呼吸器系の病気をフルコンプしろと?」
すごーく嫌そうな顔してるけど、あそこは人を招ける状態じゃないから。菌のなえどこになるだけだから。
「命の危険も確かにあるんだけど、あんたの体調的にも今日は限界でしょ」
医者じゃないから診断なんぞできないけど、2日酔いで潰れたお父さんの10倍は死んだ顔色をしてるから絶望的だと判断する。
「もう遅いからこれ食べて落ち着いたらさっさと寝なさいな」
と、枕元に作っておいたあるものを置く。
「これは、お前が作ったのか……?」
「うむ」
こいつの口調を真似てどや顔をしてやった。
何か言いたそうだけど、起き上がるのが精一杯でそれどころじゃないようだ。
「まさかの異世界初料理がお粥になるとはねー」
欠けた木椀にお世辞にも美味しそうとは言えない、というか少し焦がしたお粥に木製匙が刺さっている。
「材料はー、村人さんに分けてもらったお米らしき粒とー、近くに流れてた川の水でー、調理器具はー、土間に転がってた鉄っぽい鍋らしき形状をした何かを使ってー、火は村人さんに着けてもらいましたー」
「不確定情報ばかりなんだが」
「気まぐれランチと呼べ」
お椀は2つ。当然私も腹ペコだ。
「寧ろこの状況でお粥(に非常に近い物体)を作れた私は凄いと思う。今、人生で数少ない自画自賛の機会に立ち会っている」
人が感動を語っているにも関わらず、黙って匙を取る馬鹿野郎に不思議な気持ちで、
「いただきます、は?」
「……いただきます」
異世界でも言うんだなと、ほくそ笑んだ。
「まぁ、うん、そうだな、無味」
「小学生以下の感想」
次は土でも入れてやろう。