課金は正義の味方の武器です。2
「瞳、知ってるかい?マジシャンの事」
「マジシャン?何それ?新しい有名人?」
暫くし先程、注文した飲み物は提供された。
俺は真名斗といつものように大学の事を話していたら真名斗は、いきなり笑みの帯びた表情を強張らせて綺麗なルビー色をした瞳で見つめてきた。
これは真名斗が真面目な話をする時の顔だ。
「最近、討伐されずにD-ランクからA-にまで危険度が上がったコトダマがいる。しかも一週間の間で」
珍しいな。D-ランクと言えば戦いなれてない女性でも苦戦もせずに討伐できるほどの弱さだ。
逆に、A-ランクは戦いになれている熟練の兵士も苦戦するレベルまでに成長している。
それ程の違いがある。その違いを一週間で埋めたとなると考えられる方法が二つ。
一つ、最初のランク付けが間違えていてそれを修正しただけ。
二つ、人間を捕食しそれだけ力を蓄えた。
最初のは限りなくありえないが、二つ目に関してはできれば考えたくはない。
「マジシャンって名前ってことはマジックか何かをするコトダマなの?」
「そうそう、体の一部を消したりする事ができるコトダマらしいぞ」
体の一部―――首がない死体。
さっきの死体はそのマジシャンによる仕業なのかもしれない……
「マジシャンの弱点とか手がかりはないの?」
「そこを店長から聞こうとした時に丁度、瞳が来たんだぜ、ねぇ店長」
「うむ、マジシャンはきっと手品という概念を具現させたコトダマでしょうね、知ってるようにコトダマの強さは逸話、伝説、での強さしかもてないし弱点も逸話、伝説と同じである。マジシャンが手品のコトダマなら必ずしも種も仕掛けはある。」
「要は、その種か仕掛けを封じさえすればA-ランクのコトダマだろうが無力化できるって事だね」
「瞳君、正解!ご褒美にもう一つ情報を与えましょう、マジシャンの被害者は女性限定みたいだね、でも忘れないように、コトダマの身体能力は人間を遥かに超えると」
どこから仕入れてるかわからない、けれどこの店長のくれるコトダマに関する情報は常に正確である。それが原因なのか、この喫茶店に集まる常連は俺みたいに賞金で生計を立てたり、真名斗のように小遣い稼ぎをしている人しかいない。
「そこで瞳、どうするの?A-ランクのコトダマなら討伐すれば報酬金は100万円。5人パーティで討伐できれば一人20万。いい話だと思うけど。」
「確かに死ぬ確率は少なるけど、女性しか狙わないのはそれなりの理由があるってことでしょ?弱い人しか狙わないようなコトダマなら大人数で挑んでも逃げられたり、出現すらしてくれないかもしれないよ?」
そう、コトダマは常に物理的に存在するわけではなく、狩り、食事をする時にだけ物理的に表れる。その現象を俺達は【固着】と呼んでいる。固着するまでまたは、固着解除されれば、不可視になられ、双方物理的接触一切できなくなる。だが、一回、固着をすれば食事を終わるまでは解除不可能な縛りをコトダマは必ずももっている。その為に、固着してもらえわないと討伐もできないけれどもあちらからの接触される心配もない。
「ダメか……なら魔法で女装を――」
「瞳君、作戦会議中で申し訳ないけど、そろそろ18時になるよ、今日でしょ妹ちゃんがこっちに来るのはお迎えに行かないと遅刻しますよ」
俺と真名斗の作戦会議に割り込んでくる店長。作戦会議に熱くなって時間を忘れていた。今日から地方に住んでいた妹がこっちに来て一緒に住むことになってるんだった。俺は店長に会計を頼み会計と真名斗に別れの挨拶をし航空へと向かった。
「お兄いいいいいいいいいいいいちゃあああああああああああああああん」
空港で4年前から会っていない妹の姿を探していたら、懐かしい叫び声と共に背後からいきなり謎の衝撃によって体を前へと押し出された事によって転びそうになったのだけれども、なんとか転ばないように持ち堪える事ができてからゆっくり衝撃が来た方向へと体を振り向かせた。
そこには、先程の叫び声の正体がいた。汚れを知らない雪原のように輝く白銀色の髪の毛を腰まで長く伸ばしていて満面の笑顔を向けてくれている妹の姿。