課金は正義の味方の武器です。
死んでいる。
女性だ―――綺麗に首から上だけがない。
人間のできることではない、これは【コトダマ】による殺人だ。
周りを見回しても、コトダマの気配はない。
視界に広がっているのは、いつもの喫茶店に繋がる道とコトダマに変化しなかったけれど寒さに耐えきれなく緑から茶色に染まり切った植物だけだった。いつもの喫茶店で人を待たせているので、今はこの死体の事はアプリを通して政府の報告だけして急ぎ足で向かわなければ。
12年前、人間の感情と言語を研究していた一つの研究所が謎の爆発をした。その爆発によるパンデミックは人間とわずかな生物を除いてを形を変化させた。人間が言葉にする物語の登場人物から神話や伝説の怪物にまで変化させた。当時の自衛隊だけでは、被害を抑える事ができなかった。
政府は爆発し廃墟と成り果てたいた、研究所に何か対策法がないのか捜査させた結果、人の考えを現実に変え、ありとあらゆる物質を具現、転移、肉体の強化、人体の免疫向上までできちゃう万能技術。【魔法】を見つけた。
政府は自衛隊にコトダマの殲滅、国民の安全確保を命じたが、自衛軍だけじゃ間に合わなく、いつどこで出現されるかも予測不可能な為に、一般人も戦えるように武器として魔法をスマートフォンアプリに改良、配布した。
今では魔法は、戦い以外にもネットショッピング等にまで使われるように改良され、生活の必需品の一つになっている。本来は、身を守るために配布されたアプリ、だけれど世界に対価なしに何を得る甘さなんて存在しない、自分の身を守りたければアプリに課金をして武器を具現化させる。コトダマの討伐に成功すれば命が助かるだけではなく、社会貢献したとみなされとして報酬金が指定の銀行口座に振り込まれる。コトダマは強さ、危険性によってランク付けされランクが高いほどにつれ報酬金も大きく膨れ上がっていく。成功すればプラスとなって帰ってくる……成功すればの話だけどね。
「瞳遅かったな」
喫茶店の入口に設置された古びた木製のドアを開けた途端、小学校からの付き合いで、同じ大学に通っている友の声がする。碓氷真名斗だ。常に冷静沈着で誰にでも優しい笑みを見せるがそのルビー色に輝くカラーコンタクトの瞳の裏に何を隠しているかを長い付き合いの俺にですら教えてくれない。
「ごめん、ちょっとね…報告とかしていたら遅れたわ」
「報告ってことは、討伐はしなかったのだね」
この喫茶店【ステラカフェ】は、客数は少なく新規のお客さんはあまり見なく、いつもの常連達しか見ない事が多い。それもそうだ、裏路地でさらに迷子にならない限り前に通る事はまず無さそうな立地にある隠れ家的喫茶店だ。
「瞳君、ご注文は?」
このどこかと安心感を与えてくれる優しいそうだけど、渋い声は白髪を隠すために染めた茶色が目立つオールバックにしているオーナーの声だ。
「ガムシロコーラ!!」
「いつものでいいんだな、体に悪いからオススメはしないけど…たまにはメニューにあるものを注文してくれ」
この喫茶店で頼むのはいつものコーラにガムシロップを4つ足したオリジナルドリンク、メニューにはないけれど極度の甘党である俺には丁度いい甘さになる。