あの世にこんにちは。
第一話「あの世にこんにちは」
「・・・・・・・・・ん?、ここは・・?」
目を覚すといつの間にか、僕はここにいた。
ここは何処なのだろう、一面が霧で覆われていてはっきりと周りが見えない。
しかし、不安には思わなかった。
なぜなら、死んでいるから。そう、僕は死んでいた。
「じゃあ、ここって天国じゃね!?」
「その通りですよ。」
声に出てしまった。だから誰かに聞かれたのだろう、返事が返ってきた。
(いや、別に誰かに聞きたかった訳じゃないんだけどね。)
「ここは天国・・というより『あの世』と言った方が良いですね。」
誰かが答えた。
「あぁ、申し遅れましたね。私はサリエ、通りすがりの死人です。」
「あぁ、よろしく。僕は、・・・あれ?僕の名前は確か・・・」
(思い出せない・・?そんな!?自分の名前だぞ!幼稚園児でも余裕で言えるのに・・)
「アハハッ。あなたの名前は、役所に行けばわかりますよ。」
微笑みながらサリエは言う。
「そうなのか、なら俺を連れて行ってくれ。よろしくな、サリエ」
「ハイ、わかりました。では行きましょう、冥界役所に。」
第二話「冥界役所」
どれくらい歩いたのだろう。最初は濃かった霧も、今はだいぶ晴れている。
しかし、今のところはサリエ以外の死人は見かけていない。
(本当にこの道で合ってるのかな・・)
「もうすぐ着きますよ、あと5000歩ぐらいかな?」
「あのさ、その距離はもうすぐって言うのかな?だいぶ遠いよね、サリエ?」
「アハハッ。割と細かいことを気にする人なんですね。そんなんじゃこの先生きてけませんよ?」
「いや、俺もサリエも死んでるし・・。」
(というか5000歩って細かいことなのか・・?)
「でも、死んでるからなのか、疲れないんだな。」
「ハイ。ここでは空腹も、痛みも、そして疲れすら感じませんからね。どれも死人には必要のない物ですから。」
(確かに。サリエが言ったことは全て、「生きている体」が死なないために起こす防衛機能みたいなもんだし・・。当たり前か。)
「それでも、やっぱり元は「生きてた人間」ですからね。欲までは消えませんよ。」
サリエがそう言うと、賑やかそうな声が聞こえてきた。
「この声は?」
「あぁ、これは冥界商店街から聞こえてくるんですよ。死人たちの欲を満たすために作られた場所。それが冥界商店街です。」
「商店街ってことは、みんな商売してるのか?」
「えぇ、もちろん。まぁ、詳しいことは役所に行ってからですね。まずは役所で死人登録をすることが先決です。」
「しにんとうろく・・?」
「あぁ、あなたには聞きなれない単語でしたね。わかりやすく言うと、現世での住民登録みたいなもんです。」
「なるほど。そうしないとここで暮らせないのか。」
「まぁ、そういうことになりますね。じゃあ急ぎましょうか、あと1000歩をね。」
「まだそんなにあるのか・・・・。」
~役所前~
「ここが冥界役所・・。でっけぇ・・、100mはあるんじゃないか?」
「フッフッフ。そりゃあ、冥界三大公共施設の一つですからね。立派で当り前ですよ。」
(そうなのか。にしても、赤レンガ造りの建物とステンドグラスが綺麗だ・・。)
「じゃあ、中に入りましょうか。」
~役所内~
「この紙に必要事項を記入したら、あそこの受付に提出してきてください。」
「わかった。え~っと・・、『あなたのお名前をお書き下さい』か・・。そういえばさ、サリエが言ってた俺の名前ってどこで分かるんだ?」
「あっ・・・。忘れてましたね・・^^;。まぁ、それくらいのことならあそこの受付で聞いて来ますよ。少し待っててくださいね。」
「そうなんだ。よろしく!」
(このやりとり、前にもやったかなぁ・・。なんか覚えがある。)
少し考えているとサリエがやって来た。
「どうしたんです?深刻そうな顔して。」
「ん?いや、別に問題ないよ。で、俺のことについてわかった?」
「えぇ、モチのロンですよ!あなたの名前は『太田高彦』。他に必要な情報は・・、えっと。死因は『餓死』、生前の善悪にかかわる行いは・・『特になし』だそうです。変わった人だったんですね。」
「そ、そうだな・・」
(我ながら己の死因に動揺を隠せない・・。)
僕はそのまま言われたことを紙に書き込んだ。不思議に思うことはあっても、胸に突っかかったようなモヤモヤは無かった。あの時の僕は何故か納得していた。自分の名前を忘れていたことにも、自分の死因についても。
「おぉ!どうやら必要事項はしっかり書いたみたいですね。後は受付に提出すれば勝手に決まるので問題ないですね。」
「冥界もハイテクなんだな・・。じゃあ、決まった後はどうなるのさ?」
「冥界住民カードが渡されます。例えるなら・・、免許証とかマイナンバーみたいなもんですね。」
「へぇ~、なんだか生きてたころと変わらないなぁ・・。」
「そうですね・・。『生きてた頃』と変わりませんね・・。一応、感覚的には生きてた頃のこと覚えてるんですね、高彦さんは。」
「あぁ・・。なんかフッと思い出してね。なんでだろ?」
「さぁ?もう難しいことは後にして、受付に出してきてください。」
「うん、分かった。」
・・・・・・・。
そのとき、僕はまだ知らなかった。生前のことを覚えていない理由を、そしてサリエと出会った意味を。
このあと、僕は冥界でその理由を探しながらも暮らしていくんだけども、詳しいことは後々お話しします。
それでは、また今度・・・。
~つづく~
初めての小説投稿です。やっぱり難しいですね・・笑。
読みにくいところがあったり、何かと拙い文だとは思いますが、どうかよろしくお願いします。
なんか最後が打ち切りENDみたいになってますが、ちゃんと続きます。大丈夫です。
まぁ、気ままに書いて投稿すると思うので、改めてよろしくお願いいたします。